韓国軍当局が最近「現場の部隊の大隊長(中領〈中佐〉級の指揮官)らをしっかりケアするように」という趣旨の公文書を、師団長クラス以上の将星指揮官らに送っていたことが1日までに分かった。今年に入って▲警戒の失敗▲粗末な給食騒動▲セクハラ被害の女性兵士死亡―など、韓国軍内部での事件・事故が頻発し、現場の大隊長らの指揮負担が非常に重くなっていると判断したからだ。

 韓国軍当局は文書で「大隊長の30%以上が服務を重荷に感じている」として「MZ世代(1980-2000年代初め生まれのミレニアル世代と1990年代半ば-2000年代生まれのZ世代を合わせた造語)の兵士たちを管理するのに大変苦労している」と述べた。特に、昨年7月に携帯電話の使用を認めて以降、兵士たちは軍の情報提供チャンネル「陸軍訓練場に代わってお知らせします」や、青瓦台(韓国大統領府)の国民請願などに自由にアクセスすることができるようになったため、「民願」を利用して脅迫めいた行為をするようになり、これに対して大隊長たちが最も大きなストレスを感じていることが分かった。

 軍の消息筋によると、ある兵士は大隊長に対し「『心の手紙』(軍内部での苦情などを通報する制度)の建議事項を聞き入れなければメディアに暴露する」と迫った。指を痛めた兵士の父親が大隊長に電話し「1分以内に処置の結果を私に報告しなければ、外部に暴露する」と伝えたケースもあるという。陸軍の関係者は「最近の兵士の目には、師団長も『おじさん』に見える」として「青瓦台の国民請願の前で、大隊長はまさに虫けらのような命だ」と話した。内部の情報提供によって、軍に根強く残る不条理が改善されたケースも多いが、逆にやっかいなケースもあるというわけだ。

 軍当局は「兵士たちが意図的に、「ダメ元」のような形で何度も投書し、大隊長を苦境に陥れるケースが続いている」として「苦情処理制度を整備し、指揮権を確立するための対策が急がれる」と説明した。特に現行のシステムでは、青瓦台の国民請願や軍の情報提供チャンネルを通じて通報があると真っ先に指揮官を問責する形になっているため、このシステムを改善すべきという指摘が出ている。提供された情報の真偽にかかわらず、監察や調査などを受ければ部隊の業務が事実上まひする。情報が意図的に他人に害を与えるものだと分かったとしても、その時点で大隊長の指揮権はすでに崩壊しているというわけだ。軍の内外では「そのうち大隊長が脱営するケースが出てくるかもしれない」との懸念も示されている。今年だけで、上級部隊の検閲・点検を40回以上受けた大隊長もいる。

 ある野戦部隊の大隊長は、軍の粗末な給食問題が明るみに出て以降、自ら兵営の食堂を掃除している。軍当局によると、おかずの調理に自ら参加する大隊長もいるという。数百人の兵士が生活する大隊を、細かい部分まで自分の目で確認しなければ不安でたまらないという大隊長が増えているというわけだ。陸軍の関係者は「現在の軍の状況では大隊長が全ての責任を負い、指揮や教育・訓練、部隊管理、食事監督など、1人で多くの役をこなさざるを得ない」として「体が10個あっても足りない」と話した。

 このため、今年7月に中領への進級が内定した進級予定者が教育を受ける「大隊長班」の雰囲気も、以前とは違って沈鬱だという。ある進級予定者は「以前は大隊長に任命されることが『指揮官の華』といわれるほど、職業軍人の名誉とプライドを示す補職だったが、今では嫌われる職になった」と話した。進級予定者たちは「われわれは2年任期の間、事故が起きればいつ補職を解任されるか分からない『執行猶予』の状況」と話す。実際、前任の大隊長が事故で補職を解任され、大隊長班の教育途中で任地に派遣される進級予定者もいる。ある大隊長は「民願と問責が怖くて、まともな訓練もできない」と話した。

 韓国国防安保フォーラムのシン・ジョンウ事務局長は「兵力資源の減少、社会文化の変化により、随分前からこのようなことは予測されていたが、軍の上層部がこれまで安易な対処で済ませていた」として「これ以上、軍に解決を押し付けるのではなく、社会の全分野で対策を考える時期だ」と指摘した。

ウォン・ソンウ記者

ホーム TOP