先日北朝鮮による相次ぐミサイル発射や終戦宣言への言及などがあった後に初めて開催された韓米の安全保障協議において、両国は北朝鮮の言動に対して異なる見方を提示した。韓国は「北朝鮮は終戦宣言に前向きな反応を示した」と主張したが、これに対して米国は「北朝鮮によるミサイル発射は国際社会にとって脅威だ」と反論したのだ。韓国は北朝鮮が発する言葉に注目しているが、米国は北朝鮮の行動を注視している形だ。南北首脳会談にまで言及した金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長の真意を見極める試金石と評価されてきた南北間の通信線復元はこの日も実現しなかった。

 韓国国防部(省に相当、以下同じ)国防政策室の金万基(キム・マンギ)室長はこの日、ソウル市竜山区の国防部庁舎で開催された第20回韓米統合国防協議体(KIDD)会議の冒頭「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は先日の国連総会で終戦宣言を呼び掛け、北朝鮮もこれに前向きな反応を示した」とした上で「韓米同盟にとってより緊密な協力が求められる時期だ」と発言した。金与正氏は今月24日、文大統領による終戦宣言の呼び掛けについて「興味ある提案であり、良い発想だ」と述べ、翌日には自分たちが爆破した南北共同連絡事務所の再設置や4回目の南北首脳会談の可能性にも言及した。金万基室長が「同盟間での緊密な協力」に言及した背景には、対話再開の火種を生かすため米国の協力に期待したい意向があるものと解釈されている。

 これに対して米国側の首席代表として出席した米国防総省のモハンダス東アジア副次官補は「北朝鮮による最近のミサイル発射は同盟にとって障害」「ルールを基盤とする国際社会にとっても脅威だ」と指摘した。韓国は北朝鮮による最近の弾道ミサイルによる挑発に言及しなかったが、米国はこれが国連安保理決議違反であることを指摘したのだ。モハンダス氏はさらに「韓米同盟は前回のCCPT(連合指揮所訓練)を成功させ、同盟としての備えを確認した」とも述べ、金与正氏が問題視した先月の韓米連合訓練の成果にもはっきり言及した。

 友好国の間で特定の事案について意見の隔たりがあったとしても、メディアに公開される冒頭の発言では親しくやりとりしながら意見の一致を強調するのが一般的だ。ところがこの日は韓米双方共に全く異なる内容に言及したのだ。外交関係者の間では「最近の韓半島情勢について双方で大きな見方の違いがあることを示した」との指摘が相次いでいる。

 実際に韓国政府は文大統領による終戦宣言の呼び掛けに金与正氏が前向きな反応を示したことについて「長く続いた膠着(こうちゃく)状態から抜け出すきっかけになった」と判断しているが、バイデン政権は単なる言葉にすぎない金与正氏の談話よりも、北朝鮮の真意を見極めることが可能な核・ミサイル開発に向けた「全力疾走」の動向に神経をとがらせているという。「北朝鮮は変わった」と体感するにはそれ相応の行動が伴わねばならないということだ。

 金与正氏は関係改善の意向を示唆したが、これを行動で示す最初の措置は今なお断絶状態にある南北間の通信線復元だ。南北間で実質的な協議を行うにはまず連絡手段から確保しなければならないからだ。韓国統一部は前日、通信線復元を要求したことを公表したが、これもそのような次元での対応だ。ところが北朝鮮はこの日、韓国側からの午前、午後の通話の呼び掛けにいずれも反応しなかった。北朝鮮は13カ月にわたり断絶していた通信線を今年7月24日に突然復元したが、韓米連合訓練を口実にわずか2週間で再び断絶した。

 金与正氏の談話を前向きなシグナルと受け取ることには警戒の声も根強い。韓国のある外交官幹部OBは「北朝鮮は以前から終戦宣言を巡る話し合いに積極的ではなかったが、それでも条件までは提示しなかった。ところが今回は金与正氏がいわゆる敵対視政策とダブルスタンダードの除去という条件を突き付けてきた」「表現は軟らかいが、実際の内容は後退している」と指摘した。これに対して青瓦台(韓国大統領府)の朴洙賢(パク・スヒョン)国民疎通首席はこの日CBSのラジオ番組に出演し、金与正氏が敵対視政策の撤回を要求したことについて「過去に比べて対話の余地をより能動的に示したと解釈している」と述べた。

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