洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相は30日、ソウル市内で開かれたマクロ経済金融会議に出席し、「我々が十分に予想可能でも見逃しやすい『灰色のサイ(グレーリノ)』のようなリスク要因を確実に先制的に取り除く必要がある」と述べた。「灰色のサイ」とは2013年のダボス会議で最初に提示された概念で、巨体だが敏捷で鋭い角を持つ灰色のサイが危険な動物であることは誰もが知っているが、それを放置していると危機に直面しかねないという意味だ。マーケットでは高い確率で存在し、大きな問題を引き起こすにもかかわらず、軽視されがちな材料を指す。会議には李柱烈(イ・ジュヨル)韓国銀行総裁、高承範(コ・スンボム)金融委員長も出席し、財政・通貨・金融当局のトップが一堂に会した。今年2月以来7カ月ぶりのことだ。鄭恩甫(チョン・ウンボ)金融監督院長も出席した。

■数頭の灰色のサイが同時出現

 灰色のサイは一頭ではないことが問題だ。国会予算政策処は29日に発表した報告書で、「コロナ以降短期間に急上昇した株価と不動産価格が予告された米連邦準備理事会(FRB)のテーパリング(量的緩和縮小)によって調整を受ける可能性が高い」と指摘した。韓国総合株価指数(KOSPI)は2020年2月の1987.01から21年8月には3199.27へと61%上昇。同じ期間に住宅価格指数も90.9から101.8へと12%上昇した。資金をかき集めての不動産投資、借金をしての株式投資などがつくり出した資産バブルと金融のアンバランスが深刻化している。

 原油など原材料価格の上昇による世界的なインフレも懸念される。インフレの加速は主要国がコロナ期に継続している金融緩和と超低金利を中断する引き金になりかねない。利上げされれば、金利負担に耐えられない家計債務などで問題が発生する。株価と不動産価格の下落など連鎖反応が起きかねない。

 実体経済も思わしくない。統計庁が発表した8月の産業活動動向によると、全産業生産は前月比0.2%、消費動向を示す小売売上高は0.8%、設備投資は5.1%それぞれ減少した。3指標がいずれも減少するのは5月以来3カ月ぶりだ。

 企業が感じる体感景気も悪化している。韓銀は製造業の9月の企業景況感指数(BSI)が90となり、前月に比べ5ポイント低下したと発表した。

■最大の問題は負債爆弾

 今回の会議で集中的に話し合われたのは家計債務問題だという。出席者は「家計債務を最大限抑制し、必ず融資が必要な需要者の場合は返済能力の範囲内で融資を受けられるようにする方向性を幅広く模索していく」とする結論を下した。既に始まった家計債務縮小対策の手綱をさらに締めるという意味だ。家計債務管理策は10月中に発表される見通しだ。

 淑明女子大の申世敦(シン・セドン)名誉教授は「政府の経済政策が企業の活力をそぎ、自生能力を失わせる方向に流れていることが問題だ。経済トップが家計債務の増加を懸念するが、全方位的な警告を無視すれば、結局は外国資本が韓国を離れることになりかねない」と指摘した。

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