9月27日、京畿道城南市に住むユン・スンバンさん(41)は子どもが使っていたままごと用品をきれいにふいて、近隣住民にお下がりに出した。ユンさんは「市民団体による分かち合い代行があるのは知っているが、最近数年間、市民団体の活動内容が不透明だという話を聴いていて、信頼が消えた。大事にしていた物だからこそ、本当に必要な人にあげたくて子どもと一緒に出掛けてきた」と話した。済州道に住むHさん(76)は今年4月、新聞で子ども3人を一人で育てるソウルのシングルマザーの記事を読み、地方自治体を通じて100万ウォン(約9万4000円)を指定寄付した。Hさんは「寄付金が当事者にちゃんと渡されたというメッセージを受け取り本当にうれしい」と話した。

 尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員が慰安婦女性への支援金を流用した疑惑など昨年から市民団体の逸脱行為が相次ぎ、市民が隣人と善意を分かち合う方式も変化している。市民団体を信じて品物を預けるのではなく、正確な対象を指定し、ちゃんと渡されたかを確認し、品物を無償譲渡する場合でも本当に必要な人を訪ねて直接渡すようになっている。市民団体に対する不信感が善意を直接伝える社会をつくった格好だ。

 ポータルサイト「ネイバー」では昨年、寄付プラットフォーム「ハッピービーン」に約248億ウォン(約23億3000万円)の寄付金が集まった。自動、多文化、女性、環境、動物など10分野で支援対象、事情別に細分化された7699の募金箱に人々が指定寄付した。昨年地域ベースのコミュニティーアプリ「ニンジンマーケット」には無償譲渡の書き込みが213万件あった。コロナ期間中でも相手に直接会い、品物を渡そうとする人たちだ。

 ソウル市城東区に住むユ・ヘジンさん(41)は9月23日、電気ストーブを近くの住民に無償で譲りに出かけると、小さな花束を受け取った。ユさんは「60代の女性が花束をくれて、『ストーブが必要だった』と何度も感謝の言葉を繰り返してくださり、気分が本当に良かった」と話した。衣類など家にある物を整理し、週に2-3回近隣に譲っているというユさんは「以前は衣類回収箱に入れたりもしたが、恵まれない隣人ではなく、営利目的に使われるという話を聞き、それからは必要な人に直接手渡している」と説明した。

 延世大社会福祉学科の姜哲熙(カン・チョルヒ)教授は「寄付文化が徐々に特定対象に対する直接寄付に変わっていることは、人々の低い信頼のせいだ。こうした文化はともすると人々の関心領域にばかり資金や支援が集中する不均衡を生みかねない」と問題点を指摘した。

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