▲「尿素水の露天商」まで登場(写真=聯合ニュース)

 韓国国内のアルミニウム製造会社は先月末、購買担当役員を中国に急きょ派遣した。アルミニウム合金に必要なマグネシウムを確保するためだ。金属の強度を高めると同時に軽量化する役割を持つマグネシウムは、自動車用鋼板・建築資材・電子製品に欠かせない材料だ。中国が全世界の供給量の約90%を占めるが、韓国はすべて中国から輸入している。中国政府が今年9月から電力不足を理由にマグネシウム生産量を規制して価格が急騰、品薄になっている。この会社の関係者は「中国産マグネシウムは今年初め1キログラムあたり3050ウォン(約290円)だったが、最近1万2000ウォン(約1150円)まで上がった」「中国政府が自国内での不足を理由に、マグネシウムまで輸出規制するのではないかと気をもんでいる」と話した。

 

▲「尿素水の露天商」まで登場(写真=聯合ニュース)

 このところ品薄となっている尿素だけでなく、マグネシウムや希土類、リチウムなど必須原材料の需給も非常事態に陥っている。韓国貿易協会によると、こうした品目を含め、輸入品1万2586品目のうち、特定の国が占める比率が80%以上の品目は3941品目(31.3%)だという。もし輸入先が滞ってしまったら、代わりの輸入先の確保は容易ではないということだ。このため、自動車・電子・物流・建設などほかの産業にも連鎖的な影響が避けられない。車両用だけでなく、肥料用の尿素も中国の輸出規制により品薄現象が起こっている。韓国最大の肥料会社「ファーム韓農」の関係者は「現状のままなら今月末に工場稼働をストップしなければならない」と言った。

 このため、「政府と企業は必須原材料の輸入先多様化に乗り出すべきだ」という声が高まっている。ソウル大学のアン・ドックン教授は「非常事態に備えて代わりの供給元を確保するのがサプライチェーン(供給連鎖)管理の基本だが、韓国は地理的に近い中国への依存度が高すぎた」「米中対立でグローバル・サプライチェーンが脆弱(ぜいじゃく)になっている状況で、尿素のように予想できなかった部分で原材料供給難がいっそう頻繁に発生することになるだろう」と語った。

 韓国が尿素・マグネシウム・希土類など必須原材料の需給難に直面しているのは、中国に対する輸入依存度が高すぎるためだ。希土類を原料とする永久磁石は86.2%、水酸化リチウムは83.5%を中国に頼っている。韓国貿易協会が国内輸入品1万2586品目を分析したところ、中国の比率が80%以上の品目は1850品目に達したという。米国(503品目)、日本(438品目)、ドイツ(121品目)、イタリア(108品目)も100品目を上回った。

■中国からの輸入比率80%以上の品目が1850品目

 中国が生産・輸出を規制した場合、打撃を受けると懸念されている品目は尿素以外にも多い。二次電池の核心素材である正極材に必要な水酸化リチウムも中国産の比率が85%近い。2位のチリ産の比率は12.5%にとどまる。二次電池業界の関係者は「長期契約を結んでいるが、比率が絶対的なため、尿素のように輸出を突然止められたらバッテリー生産への打撃は避けられない」と語った。

 需給に支障が生じることで、価格が急騰するケースも出ている。テルビウムや酸化ネオジムといった希土類を原料とする永久磁石も中国の比率が86%を上回る。永久磁石は電気自動車のモーターをはじめ、テレビなどの情報技術(IT)製品やミサイルなどの最先端機器に広く使われる中核的な素材だ。中国政府は今年9月末、希土類の中でも埋蔵量が少ないことから「黄金資源」と呼ばれている重希土類を生産する企業3社を統合した。世界の供給を独占し、価格を統制しようという意図だと見られる。それ以降、希土類の価格は急騰している。10月22日に1キログラム当たり1403.5ドル(約15万9000円)だったテルビウムは、今月5日に1529ドル(約17万3000円)にまで上がった。

 医療機器に主に使われる酸化タングステンも中国への依存度が94.7%に達する。仁荷大学のカン・チョング招聘(しょうへい)教授は「半導体・バッテリー・バイオ医薬品・希土類は今年上半期、米国がサプライチェーンの状況把握に努めた4大核心品目だ」「希土類は米国では国防部が担当している」と話す。

 このほか、プロパンとブタンの米国産比率も90%を上回る。日本との確執で国産化や輸入国多様化を推進した、いわゆる「輸出規制3大品目」のうち、フォトレジスト(半導体などの回路パターンを描画する感光性液状樹脂)とフッ化ポリイミド(有機EL〈OLED〉ディスプレイ用強化フィルム)も依然として全輸入額の80%以上を日本に依存している。

■必須原材料の需給点検急げ

 青瓦台(大統領府)は5日、尿素水需要問題に対応するためのタスクフォース(TF)チームを構成し、尿素生産国との外交協議に乗り出すことを明らかにした。しかし、「尿素の品薄現象に対する対応が遅い」と指摘する声が上がっている。

 中国政府が尿素、塩化カリウム、窒素肥料など29品目に対する輸出制限措置を発表したのは先月11日のことだった。韓国政府もこの内容を把握していたが、これといった措置は取らなかった。化学関連企業の関係者は「政府も企業も中国の尿素輸出制限措置の影響を予想できなかった」と話す。

 専門家らは、政府と企業が合同で必須原材料の需給状況を点検しなければならない、と指摘している。韓国貿易協会通商支援センター室のチェ・ヒョンジョン室長は「現在のグローバル・サプライチェーンは最も少ないコストで製品を生産する分業形態になっている」「だが、保護貿易が強化されつつある状況で、今のように原材料の需給で収益性ばかりを考えていたら、予想もつかない危機に直面する可能性が高い」と指摘した。

 また、中国などの必須原材料規制に対応する手段を整えておくべきだという指摘もある。LG経済研究院のペ・ミンジュン責任研究員は「日本は世界の貿易規範ができる前から既に製造業が最高水準に達していた国だ」「一部の核心品目に関しては中国が依存するほど(日本の)競争力は強く、他国の輸出規制に対しても対応力が強い」と語った。

李性勲(イ・ソンフン)記者、チョ・ジェヒ記者

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