▲韓国空軍初のステルス戦闘機F35A

 韓国空軍の保有する最新鋭のF35Aステルス戦闘機1機が4日、訓練飛行中に着陸装置(ランディングギア)の異常のため胴体着陸するという事故が発生した。なお、パイロットにけがはなく無事で、機体にも大きな損傷はないことが分かった。F35Aの胴体着陸は韓国国内では初めてで、米軍を含め世界的にも例がない、と韓国軍当局は明かした。

 

 韓国空軍によると、4日午後0時51分ごろ、訓練飛行中だったF35Aが航空電子系統の異常でランディングギアが降りず、忠清南道瑞山の第20戦闘飛行団の滑走路に胴体着陸した。胴体着陸とは、ランディングギアが作動しない場合、飛行機の胴体を直接滑走路に付ける形で着陸する方法だ。「へそ着陸」ともいう。戦闘機の胴体と滑走路の摩擦で速度が落ち、停止に至る。この過程で胴体下部は損傷を避けられず、しばしば胴体がひっくり返ったり傾いたりする。その結果、飛行機が大きく壊れたり火災が起きたりしてパイロットが死傷するケースもある。

 問題が発生したF35Aのランディングギアは三つあるが、三つ全て作動しなかったことが分かった。ランディングギアが作動しないと、地上の滑走路への着陸が難しく、最悪の場合はパイロットだけ脱出して機体は海に墜落させなければなくなるが、韓国空軍は危険を冒して胴体着陸を選択したという。胴体着陸の過程で事故を防ぐには、火災の発生に備えて空中で燃料をできるだけ空にしなければならない。また、機体をできるだけ水平に保ったまま速度を落とし、滑走路に接するようにしなければならないなど、高度な操縦技術が必要だ。

 韓国軍関係者は「事故機は外観上、胴体に大きな異常はないように見えるほどで、比較的無難に胴体着陸したように思う」と伝えた。無難な結果に落ち着いた「秘訣(ひけつ)」について、この関係者は「パイロットの技量と特殊な泡のおかげ」と語った。韓国空軍瑞山基地は、緊急の胴体着陸が決まると基地の滑走路に消防車を動員して特殊な泡をまき、胴体下部と滑走路の摩擦を減らしたという。

 しかし、この日事故が起きたF35Aは、外観上は大きな損傷がないとしても、韓国国内ではなく米国で修理しなければならない可能性もある。レーダーに捕捉され難くするステルスコーティングは極秘事項なので、韓国国内では手を付けられないからだ。2019年にF35Aが韓国空軍に初めて配備された直後、韓国空軍首脳部が予定なしにF35Aを視察しようとしたところ、米軍側がセキュリティーを理由に拒否したこともある。F35A戦闘機1機の価格はおよそ1000億ウォン(現在のレートで約97億円。以下同じ)だ。

 2012年、世界最強の戦闘機に挙げられる米空軍のF22「ラプター」が、フロリダ州ティンダル空軍基地で訓練中、パイロットのミスにより胴体が滑走路に接したまま滑走して停止し、胴体下部が大きく損傷したことがあるが、このときは380億ウォン(約37億円)相当の修理費がかかったといわれている。

 韓国空軍は、メーカーの米ロッキード・マーチン社などと共同で正確な事故原因を調査した後、韓国国内で修理できるかどうかなどを決定する予定だ。韓国空軍はこの日、慣例により全てのF35Aの飛行を中止した。F35Aは現在までに40機近くが配備されている。これまで米国や日本、英国などでF35A・Bが墜落する事故はあったが、ランディングギアの異常で胴体着陸した例は初めてとあって、海外でも今回の事故に対して関心が集まるものとみられる。

 F35Aは世界で最も多く販売されているベストセラーのステルス機だ。ステルス性能や電子戦能力などの先端航空電子システムを備え、最高速度はマッハ1.6。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)と北朝鮮軍が最も恐れる兵器に挙げられる。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

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