今年4月6日、韓国の大企業役員はソウル・三成洞の見本市会場COEXで開かれた「スマートファクトリー・自動化産業展2022」を訪れ、中国の物流ロボット業者から「半額納品」の提案を受けた。韓国製無人運搬ロボットと同じ仕様の製品を50%の価格で製作するという内容だった。この役員は「中国製ロボットは韓国製に比べ品質はやや落ちるが、費用を大きく節減できるため、韓国市場を席巻している」と話した。

 最近、韓国の製造現場と物流ラインに物流ロボット(無人運搬ロボットと自動運転ロボット)が相次いで導入される中、中国製ロボットが市場を急速に侵食している。業界は韓国で導入された物流ロボットの60%以上が中国製だと推定している。業界関係者は「物流ロボット産業は3年以内に世界のロボット市場全体の半分を占めるという予想が示されている。韓国の物流ロボット産業は中国に押され成長機会まで奪われている」と述べた。市場調査会社ロジスティクスIQによると、全世界の物流ロボットの市場規模は昨年時点の30億ドルから2027年には180億ドルに膨らむ見通しだ。

■低価格攻勢で大企業も中国製ロボット選択

 中国製ロボットの国内市場を独占する秘訣は価格だ。 韓国製物流ロボットの価格は仕様によって3000万ウォンから1億ウォンだが、中国製はちょうど半分の価格だ。中国政府は広東省の深セン、東莞などにロボットクラスター(産業集積地)を整備し、入居業者に設備投資の10%還付、売上高の15%の補助金といった破格の優遇措置を適用しているためだ。政府支援のおかげで、中国の物流ロボット業界による昨年の売上高は200億ウォン(約21億円)を超えた企業が36社に達するほど急成長している。一方、韓国の5大物流ロボット企業の売上高は合計で100億ウォン台に留まっている。上場企業は1社もない。

 次世代物流ロボットである自動運転ロボット(AMR)分野にもいずれ中国製が押し寄せる見通しだ。海康機器人(ハイクロボット)、北京極智嘉科技(ギークプラス)のような大企業が産業用AMRを量産している。特に世界AMR市場でシェア16%を占める首位ギークプラスは今年初め、韓国支社を設立し、韓国企業への営業を強化している。ロボット業界関係者は「ロボット製造能力がある国内大企業も費用節減目的で中国製AMRを大量に工場に導入している」と話した。

 中国製の攻勢に押され、韓国の物流ロボットメーカー各社は、オーダーメード型ロボットの納品に集中し、すき間市場を攻略している。韓国のメーカー関係者は「安い中国製と競争するため、維持・補修とソフトウエア能力を強化した」と説明した。しかし、韓国の一部メーカーはOEM(相手先ブランドによる生産)方式で中国で製造したロボットを持ち込み、アフターサービスだけを担当するロボット流通企業に転落している。物流企業関係者は「国産ロボットを使うため、韓国企業の製品を検討したが、相当数が中国産なのに驚いた。生産経験を積んでこそ技術力も高まるが、韓国企業が中国製ロボットを商標だけを変えて販売する流通業者になるのではないかと懸念される」と語った。

■サービスロボット市場も中国製が70%掌握

 サービスロボットは既に中国製が韓国市場を掌握している。ロボット業界によると、現在韓国国内に普及しているサービングロボットの70%以上が、深セン市普渡科技(プドゥテック)、上海擎朗智能科技(キーノン)など中国企業の製品だ。 韓国メーカーではLG電子、現代ロボティクス、ベアロボティクス、ロボティスが独自技術でサービングロボットを生産しているが、中国製サービングロボットは15-20%ほど安いレンタル料金で市場支配力を高めている。配達アプリ「配達の民族」を運営するウアハンヒョンジェドゥル(優雅な兄弟たち)は2019年からサービングロボットレンタル事業を開始したが、貸与したロボットの大部分が中国産とされる。

 中国製ロボットの導入が急増し、品質問題とセキュリティー問題も指摘されている。あるロボット業界関係者は「中国のロボット企業がロボットセンサーにデータ伝送モジュールを一つ植え付けておけばデータを簡単に持ち出せる。大企業や政府が手をこまぬいている間に未来の中核産業を根こそぎ奪われかねない」と語った。

イ・ボルチャン記者

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