中国は過去10年にわたりインド・太平洋海域で管轄権を強化するため四つの海洋機関を統合して「海警局」を発足させ、これを準軍事組織とした。昨年は海警局艦艇の武器使用などを定めた海警法も制定した。これは中国政府が海洋力を大きく強化すると同時に、周辺国の反発をかわすため海洋での紛争発生時に海軍ではなく海警艦艇や政府により訓練された海上民兵隊などを投入するもので、いわばグレーゾーン戦略の一つだ。

 これら中国の海洋拡大政策に対抗するためクアッド(米国、日本、オーストラリア、インド)は先月24日、日本で開催された首脳会議で「海洋状況把握のためのインド太平洋パートナーシップ(IPMDA)」計画を発表した。東シナ海と南シナ海における中国の軍事挑発をけん制し、海洋紛争の誘発を事前に防止するため人工衛星、無人機、自動識別周波数技術などを活用してリアルタイムの監視システムを立ち上げ、収集された情報を同盟国で共有することがその核心になる。

 IPMDA加盟国はインド・太平洋上での人道問題あるいは自然災害に対応し、違法な漁業行為を根絶するために周辺国との協力を進めるものだ。具体的には各国に情報センターの設置や「海洋状況把握(MDA)」に向けたシステムを構築し、MDAを通じて海洋情報を互いに共有することで国の安全保障、経済、環境に影響を及ぼす事案を包括的に管理するというものだ。

 周辺国のMDAについて見ると、米国の沿岸警備隊(USCG)は最先端の海洋監視機器を持つ11隻の艦艇を運用している。また海上偵察用の無人機や海洋での監視が容易な低空の光学衛星やSAR(合成開口レーダー)衛星などを導入し、海の安全保障やその他安全を脅かす要因を陸海空軍により立体的に監視するシステムを運用している。

 日本の海上保安庁は2015年からMDA構築を国の海洋戦略として定めた。19年には海上状況表示システム(海しる)を構築し、200種以上の海洋関連情報を収集・分析・活用する一方、昨年は管轄海域をリアルタイムで監視できる中高度海上偵察型無人機をテスト運用した。今年は18機の無人機を新たに導入する予定だ。中国は軍事用無人機「翼竜」が今年初めて監視飛行に成功し、監視・偵察目的に特化した「翼竜Ⅱ」の開発も進めている。

 このように周辺各国は海洋監視能力を強化し、韓半島周辺海域を手のひらを見るように把握しているが、韓国は海洋警察庁が艦艇や航空機など従来の監視装備を使用するにとどまり、45万平方キロに及ぶ管轄海域の16%ほどしか監視できていない。これでは外国漁船による違法操業や周辺国による不当な海洋科学調査など、海洋主権を脅かす行為を監視するにはどうしても限界がある。韓半島周辺海域での海洋安全保障は韓国にとって核心価値の一つだ。周辺の脅威に効率的に対処するには独自の監視・対応力を強化するとともにIPMDAに積極的に参加し、他国との協力を進めていかねばならない。

 海洋警察庁も2019年から人工衛星、無人機、ドローンなどハイテク監視資産(兵器)を活用した広域海洋監視網の構築、海洋関係機関から収集した情報をAI(人工知能)ビッグデータとして分析・予測可能な「韓国型MDA」の構築に向け力を入れている。周辺国に比べてスタートが遅れ劣勢だが、短期間で克服するための最善策は、最適なハイテク装備を使った情報収集力の確保、そして情報の統合力と判断力の向上にあると言えるだろう。

李春宰(イ・チュンジェ)元海洋警察庁警備安全局長

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