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ウクライナ「極超音速キンジャール6発含むミサイル18発全て撃墜」、ロシア「パトリオット防空システムを破壊」
ロシア国防省は16日(現地時間)に声明を出し「極超音速ミサイル『キンジャール』を使った超精密攻撃でウクライナの首都キーウのバトリオット防空システムを破壊した」と発表した。ロシアは最近になって東部の激戦地バフムトで後退し、また国内での対立が表面化するなど混乱が伝えられているが、この攻撃で久しぶりに成果を上げたというのだ。これに対して同じ日にウクライナ軍参謀本部は「ロシアはキーウに対して6発のキンジャールを含む18発のミサイルで一度に攻撃してきたが、全て撃墜した」とロシア側の主張と相反する発表を行った。
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外信各社はロシア軍による今回のミサイル攻撃について「パトリオットに損傷を与えたが、その被害は致命的ではなさそうだ」と伝えた。ロシアによるウクライナへの全面侵攻から始まった今回の戦争はすでに16カ月目に入り、ウクライナは先日から大規模な反転攻勢を予告している。そのためロシアの「矛」であるキンジャールとウクライナの「盾」となるパトリオットが戦争の勝敗を左右するとの見方が有力視されている。米レイセオン社が開発したパトリオットは米国、ドイツ、オランダの支援で先月からキーウに配備されている。
「短刀」を意味するキンジャールは音速の5倍以上の速さで飛ぶ極超音速空対地・空対艦ミサイルだ。従来の地上発射型ミサイル「イスカンデル」を改良して製造された。国際社会に本格的にその存在が知られたのは2019年12月に北極に近い地域でロシア軍が試験発射を行ってからだ。先日ロシアは「キンジャールの速度は音速の10倍に達する時速1万2240キロ」と主張した。最大射程距離は3000キロだ。レーダーによる探知を回避する機能に優れており、現存する多くの防空システムから逃れることが可能で、また在来式の弾頭はもちろん、核弾頭も搭載可能とロシアは主張している。
従来のミサイルとは次元が異なる性能に米国など欧米諸国は警戒を強めている。ロシアはキンジャールを黒海やカスピ海に近い自国の南部地域に配備し、試験運用を行ってきた。またウクライナ侵攻直後から実戦に投入し、ウクライナの軍事施設への攻撃などに活用した。ロシアは現在地上戦で苦戦を強いられているが、今後キンジャールによる攻撃の正確度が向上すれば、今の不利な状況を変える「ゲームチェンジャー」になると期待している。
ウクライナ軍が使用しているパトリオットはキンジャールに対抗する最も信頼性の高い防御手段とされている。米国の支援を受けた1台に加え、ドイツとオランダが共同で支援した1台が先月から前線に投入されている。戦闘機が空から発射するキンジャールとは逆に、地上から空中に向け発射する地対空ミサイルシステムだ。パトリオットは米国とソ連の東西冷戦が最悪の状況にあった1960年代中盤に米国防総省が開発をスタートさせ、1969年に最初に発射したミサイル「SAMーD」が母体となっている。米国はこのミサイルを独立200周年の1976年に「愛国者」を意味する「パトリオット防空システム」と命名し、1980年代から徐々に実戦配備を進めてきた。
パトリオットが強力な理由は、ミサイルはもちろん戦闘機も迎撃できるからだ。探知半径が最大150キロに達するレーダーを通じ、長距離から飛来する飛行体を確認し、最高で時速5000キロのミサイルを迎撃する。1984年から実戦配備が始まったパトリオットはとりわけ旧ソ連製・ロシア製兵器との対決で強みを発揮してきた。1990年の湾岸戦争ではイラク軍の主力ミサイルだったソ連製のスカッドのほとんどを迎撃し、米軍が駐留する諸国連合軍の勝利に大きく貢献したとされている。2014年にはシリア空軍主力戦闘機のロシア製スホーイ24を撃墜し、人間が乗る航空機の撃墜にも成功した。
ロシアは最近ウクライナとの地上戦で苦戦を強いられ、またパトリオットの防空システムを破るためキンジャールを使用しているが、現時点ではパトリオットという盾を破ることはできていない。今月だけで4日と13日の2回キンジャールを発射したが、ウクライナ軍はこれを撃墜し人命被害は数人の負傷者だけだった。この攻撃について米国は「潜在的な損傷は出た」としながらも「(パトリオット)システムの作動には問題ない」と説明している。
矛(キンジャール)と盾(パトリオット)の対決は今後「時間との戦い」でどちらが有利になるかに左右されそうだ。ロシアは戦争直前にキンジャールを50発ほど保有していたが、現時点で確認できただけでも約20発消耗した。今後もキンジャールが撃墜されれば、これ以上使用可能な武器がなくなってしまう。一方のパトリオットも永遠の盾にはならない。パトリオットの最先端レーダーは敵を感知する優れた性能を持つが、強力な電磁波のため迎撃を繰り返せばその位置が相手に知られてしまう。CNNテレビは「パトリオットは大型で固定された発射台が必要になるため、今後時間が過ぎればロシア軍がその位置を把握し、集中攻撃を行うことも考えられる」と警告した。
チョ・ソンホ記者