女子重量挙げの英雄で竜仁大学体育学科に勤務する張美蘭(チャン・ミラン)教授が韓国文化体育観光部(省に相当)第2次官に任命されたが、これに対して韓国野党・共に民主党と同党の李在明(イ・ジェミョン)代表の過激な支持者らはネットで悪質なコメントによる攻撃を続けている。ネット上で李代表のファンが集まるグループや共に民主党を支持するグループでは「重量挙げの選手に何がわかる」「スポーツ選手が脳まで使ったら生きて行くのは大変」などとスポーツを侮辱する人身攻撃のような書込みが相次いだ。「2チクだったのか」「尹錫悦(ユン・ソンニョル)反逆者」「親日派転向」などの書込みも目についた。「2チク」とは前回の大統領選挙で候補者番号2番だった尹大統領に投票(チク)した有権者を侮辱する言葉だという。共に民主党も今回の人事を一斉に批判し「なぜどれも資格のない人間ばかりを選ぶのか」とコメントした。張氏に倫理面や資質の面で問題があるならこの種の批判もあり得るだろう。しかし実際は尹錫悦政権で次官に指名されたという理由だけで罵倒しているのだ。韓国社会におけるまさに病的な現象と言わざるを得ない。

 張氏はかつてオリンピックで金銀銅のメダルを獲得し、世界選手権で4回優勝した偉大な実績のある選手だ。ライバルたちがドーピングで次々とメダルが剥奪された時も、張氏はフェアプレーのシンボルである「ナチュラル」と呼ばれた。相手選手に拍手を送り、失敗しても周りのせいにせず弁解もしなかった。その誠実な姿勢で2012年のロンドンオリンピックでは韓国国民の間で好感度1位となった。選手村では後輩たちの悩みを聞き、アドバイスもする頼れる「姉御」的な存在だった。

 張氏は引退後、スポーツ行政について学んだ。修士と博士の学位を取得し、大学教授となった後は米国にも留学した。張美蘭財団を立ち上げ、マイナー競技の選手やスポーツに取り組む子供たちを支援した。脱北した若者や校内暴力の被害を受けた児童生徒、恵まれない子供たちを招いて6年にわたり「チャンミ運動会」を開催した。「私が受けた愛情を社会に還元したい」と語ったその約束を実行に移したのだ。張氏は偏向した政治活動をやったことはなく、資質、能力、倫理面のいずれにおいても問題はない。文在寅(ムン・ジェイン)前政権も水泳のスターだった崔允喜(チェ・ユンヒ)氏を文化体育観光部次官に任命した。当時共に民主党は「現場での経験と行政経験をあまねく兼ね備えている」と説明した。あえて敵にするのではなく、まだ30代の若い人材がスポーツ行政に新たな風を吹き込めるよう激励してほしいものだ。

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