昨年の韓国大統領選前夜、MBCの看板報道番組「PD手帳」がインターネットメディア「ニュース打破」の「虚偽インタビュー」報道を検証なしに流したことについて、MBC労働組合(第3労組)は11日、批判声明を出した。ニュース打破は当時、全国民主労働組合総連盟(民主労総)系の全国言論労働組合(言論労組)の申鶴林(シン・ハクリム)氏が大庄洞事件の主犯である金万培(キム・マンベ)氏をインタビューし、「大庄洞事件は尹錫悦(ユン・ソンニョル)検事のお手盛り捜査で始まった」という趣旨の映像を作成して報道した。

【写真】選挙前日に「国民の党の一部党員は共に民主・李在明候補支持を宣言」と報道(MBC『PD手帳』2022年3月8日放送)

 第3労組は声明で「大統領選前日のPD手帳はメディアを悪用した不正選挙にほかならなかった」とし、「これ以上公共放送が特定政治勢力の選挙運動の道具に転落してはならない。必ずそれを防がなければならない」と主張した。

 その上でPD手帳がニュース打破のインタビューを引用した問題点を指摘した。第3労組は「録音内容の真偽に対する取材の痕跡はなかった」とし、「PD手帳の製作陣はそんなことは知る必要がないと考えたようだ」と批判した。

 昨年3月8日のMBC「PD手帳」は、大統領選を翌日に控え、「大統領選D-1、決めましたか?」と題する放送を行った。

 番組内では大統領選テレビ討論の重要キーワードとして「大庄洞」を挙げた上で、「ニュース打破」が2日前に報道した申鶴林氏による金万培氏のインタビュー内容を1分余りにわたりそのまま流した。このインタビューはつぎはぎ編集されたものだった。PD手帳は編集された録音ファイルを流し、ニュース打破による解説も字幕を付けて流した。放送字幕は「釜山貯蓄銀不正融資事件を担当した尹錫悦検事がこの事件にどのように関与したのかにも言及します」というものだった。

 録音ファイルの後には、宋永吉(ソン・ヨンギル)民主党代表(当時)と李在明(イ・ジェミョン)大統領候補の発言を相次いで流した。宋代表は「なぜ大庄洞の本丸が尹錫悦と朴英洙(パク・ヨンス)なのかが証明される録音記録が公開された」とし、李在明候補は「大庄洞事件の真実が明らかになっている。うそは真実には勝てない」と述べた。

 こうした編集に対し、第3労組は声明で「今聞くとあきれる言葉だ」とし、「PD手帳が何を望んでいたかは幼い子どもでも気づきそうだ」と話した。

■李在明一本化は30秒説明、尹錫悦一本化は4分批判

 大庄洞事件以外に、第3労組は当日のPD手帳の他の部分についても問題提起した。

 第3労組は「李在明、金東ヨン(キム・ドンヨン)両氏の候補一本化については肯定的な説明だけを行い、尹錫悦、安哲秀(アン・チョルス)両氏の候補一本化には4分以上もかみついた」とし、「安候補が尹候補を非難した過去の発言まで紹介する場面ではぞっとする悪意まで感じた」とした。

 実際に当時の映像を見ると、PD手帳は李在明、金東ヨン候補の一本化については30秒間取り上げた。2人が手を握って登場する場面から始まり、合同遊説を行う場面で終わる。

 一方、尹錫悦、安哲秀両氏の候補一本化については4分間取り上げた。安候補が尹候補を批判する場面から始まる。 そこには「大統領選完走の意向を数回表明した国民の党の安哲秀候補は尹錫悦候補を批判してきた」というナレーションが入る。両氏の一本化が実現した後の反応にも触れた。特に国民の党のウェブサイトで党員の反発が続いたとし、「李在明に乗り換えよう」「番号1番の李在明候補支持します」などという文言が映し出された。

 このほか、検察改革に対する両候補の公約比較でも過去の政権が検察出身者を重用したことによる副作用に対する説明を集中的に扱ったと批判した。第3労組の声明について、MBC側のコメントは得られなかった。

李佳泳(イ・ガヨン)記者

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