▲26日午前、朴裕河教授が大法院の法廷を出て、記者団の質問に答えた/聯合ニュース

 韓国大法院は26日、日本軍慰安婦被害者の名誉を毀損したとして起訴された「帝国の慰安婦」の著者、朴裕河(パク・ユハ)世宗大名誉教授の上告審で、「学問的主張は名誉毀損の刑事処罰対象にはならない」として、無罪の趣旨で二審判決を破棄し、審理をソウル高裁に差し戻した。

 大法院は「朴教授の表現は朝鮮人慰安婦全体に対する総合的解釈や評価であり、学問的な主張や意見の表明だ」とし、「学問的表現の自由に対する制限は必要最小限にとどめなければならない」と判断した。朴教授の無罪は今後ソウル高裁で行われる差し戻し審で最終的に確定する見通しだ。

■大法院「名誉毀損は処罰対象ではない」

 朴教授は2017年1月の一審で無罪、同年10月の二審では有罪(罰金1000万ウォン=約111万円)をそれぞれ言い渡された。二審は「強制連行という国家暴力が朝鮮人慰安婦に関して(公的に)行われたことはない」「慰安婦とは根本的に売春の枠組みの中にいた女性たちだ」など11カ所の表現が虚偽事実であり、名誉毀損に該当すると判断した。

 大法院は二審が有罪とした表現に対する判断を下した。「公的な強制連行」に関する部分と関連し、大法院は「国家や軍レベルである程度の介入が存在あってこそ、それを『公的な強制連行』と呼ぶことができるかについて、さまざまな解釈と主張が可能だ」とし、「朴教授の主張が文言の客観的意味や大衆の言語習慣に照らし、容認できない水準だとは断定できない」と指摘した。

 大法院は「著書の全体的な内容や脈絡に照らしてみれば、朴教授が日本軍による慰安婦強制連行を否定したか、朝鮮人慰安婦が自発的に売春行為をしたとか、日本軍に積極的に協力したという主張を裏付けるためにそうした表現を使ったとは言えない」とした。

 大法院は「むしろ朴教授は強制的に連行される人々を量産した構造を作ったのが日本であり、朝鮮人慰安婦は日本の帝国構成員として、被害者であると同時に、植民地住民として日本に協力せざるを得ない矛盾的状況にあった点を数回にわたって明らかにしている」とも指摘した。

 大法院はさらに、「朴教授は日本軍慰安婦問題について、日本の責任を否定することはできないが、他の社会構造的問題が影響した側面が明らかにあるので、前者だけに注目して韓日対立を増大させることは問題解決に役立たないという主題意識を浮き彫りにするため、問題の表現を使ったとみられる」とした。

 朴教授は大法院の判断について、「大韓民国に国民の思想を保障する自由があるかに関する判決だった。慰安婦強制連行を否定したり、慰安婦被害者を欺いたりしたことはない」とし、「告発されて以降、9年4カ月にわたり私の意図を正確に見抜き、応援してくださった方々に感謝する」と述べた。

■2014年に始まった攻防

 「帝国の慰安婦」が最初に出版されたのは2013年8月のことだった。同書は▲慰安婦の不幸を生んだのは植民地支配、貧困、家父長制、国家主義という複雑な構造だった ▲20万人が強制的に慰安婦になったというのは誤った認識だ--などの主張を盛り込んだ。「慰安婦問題に対する幅広い見解を示した」という好評と「日本の国家的責任を軽視する誤った論点を盛り込んだ」という批判を同時に受けたが、学問的議論の枠組みから脱してはいなかった。

 しかし、慰安婦被害者9人が14年6月、自分たちを「自発的売春婦」「(日本軍と)同志的関係」などと罵倒したとして、朴教授に対する民事上の提訴と刑事告訴を行い、法的攻防が始まった。裁判所は原告らが申し立てた出版禁止の仮処分申請を一部引用し、「『慰安婦』を『誘拐』し『強制連行』したのは少なくとも朝鮮の地では、そして公的には日本軍ではなかった」「『慰安』は基本的には収入が予想される労働であり、そうした意味では『強姦的売春』だった。あるいは「売春的強姦」だった」などという文言34カ所を削除して出版するよう命じた。

■韓国学界、擁護と批判に二分

 2015年11月、検察が朴教授を起訴すると、「学問の自由」を巡る論争が起きた。「河野談話」の主人公である河野洋平元官房長官、村山富市元首相、ノーベル文学賞受賞者の大江健三郎ら日本のリベラル系の人物が「帝国日本の根源的な責任を指摘しただけ」だとし、朴教授を擁護する声明を発表した。

 韓国の学界は擁護論と批判論に分かれた。15年12月2日、金炳翼(キム・ビョンイク)元文化芸術委員長、延世大の文正仁(ムン・ジョンイン)、鄭グァリ(チョン・グァリ)両教授ら190人余りは「検察側の起訴理由は本の実際の内容に照られば妥当ではない」とする声明を発表した。一方、ソウル大の鄭鎮星(チョン・ジンソン)、梁鉉娥(ヤン・ヒョンア)両教授、林志弦(イム・ジヒョン)西江大教授ら60人も同日、「十分な学問的裏付けがない叙述であり、被害者に痛みを与える本だ」と批判した。

兪碩在(ユ・ソクチェ)記者、イ・スルビ記者

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