▲ゼイビア・ブランソン在韓米軍司令官

 ゼイビア・ブランソン在韓米軍司令官が17日、「韓国の地理的位置は、北に北朝鮮、西に中国、東北にロシアという、複数の競争の軸に影響を与え得る独特の利点がある」「どの方向から来る敵に対しても負担を課す(impose cost)態勢を維持することが、韓半島の第1防衛ラインを堅固にする」と語った。在韓米軍が北朝鮮だけではなく中国・ロシアまで念頭に置いて作戦をするように「戦略的柔軟性」を拡大することが、最終的には域内の安定と韓半島の防衛に役立つ、という趣旨だ。

【写真】韓・日・比「戦略的三角形」の頂点・韓国を逆さ地図で確認

 ブランソン司令官は17日、「東が上を向くようにひっくり返した地図(East-Up Map)」を公開し、韓国メディアとの書面インタビューにおいて「柔軟性は準備態勢の資産であり、抑止の信頼性を維持してくれる」としつつ、このように語った。ブランソン司令官は、戦略的柔軟性とは「焦点を韓国の外へと向けるものではなく、われわれが韓国で維持している抑止力が外部に延長され、インド・太平洋全域の平和を維持しているという点を認識するもの」、と述べた。

 在韓米軍のホームページで公開された「East-Up Map」は、中心部の韓国が、中・ロのある大陸方面から日本・台湾・フィリピンのある海洋方面へと突き出る形で作られた。ブランソン司令官は、地図と共に公開した記事で、韓国が「自然な戦略的中心軸の役割」を果たしているとし「韓半島の(在韓米軍の)力は、ロシア艦隊が韓国東部海域に入れないように負担をかけ、同様に西部海域では中国北部戦区軍と北海艦隊に負担をかけている」と説明した。「韓半島には、敵の隣接海域作戦に影響を与える重要な戦略的潜在力がある」というわけだ。

■「在韓米軍、中・ロの接近拒否領域に既に駐屯」

 ブランソン司令官が在韓米軍のホームページで公開した記事は、北朝鮮に対する言及が全くなく、中国とロシアにフォーカスしていた。ブランソン司令官は、韓半島の地図をひっくり返して見ると「インド・太平洋戦略の礎石である第1列島線は新たな意味を持つ」とし「韓半島に既に駐屯している(在韓米軍の)戦力は、(戦時の)増援が必要な遠距離アセット(軍事資産)ではなく、危機や有事の際に米国が突破すべき(中・ロの)接近拒否領域(bubble perimeter)内に既に駐屯している軍隊だという点が明らかになる」と指摘した。

 第1列島線は、日本列島南端から沖縄・台湾・フィリピンを結ぶラインで、中国の立場からは自国近海の防衛線、米国の立場からは中国の太平洋進出を防ぐ封鎖線だ。ところが在韓米軍は、台湾有事の際に米軍が侵入すべき第1列島線内に既に配備されている、ということを強調したのだ。

 こうした主張の背景には、米国内の「在韓米軍削減論」があった可能性も指摘されている。ブランソン司令官は、地図をひっくり返して見ることを「北京の視点」と呼び「北京から見れば、烏山空軍基地に駐屯している米軍は複雑な力の投射が必要な遠方の脅威ではなく、中国内部やその周辺へ即座に影響を与える至近戦力」だと評した。トランプ政権の一部は在韓米軍を「財政的負担」としか見ていないが、中国の立場からは即時の脅威、という意味だ。

 対中けん制政策の一環として、ブランソン司令官は「韓国・日本・フィリピンを結ぶ戦略的三角形」を提示し「(米国と)相互防衛条約を締結した3パートナー国を結ぶ三角形の頂点として見ると、これらの国々の集団的潜在力が明らかになる」とも語った。韓国は「域内の中心的なポジショニングとロシア・中国双方に負担をかけられる能力」、日本は「先端技術力と太平洋の海上交通の中心的要衝に対するコントロール」、フィリピンは「太平洋とインド洋を結ぶ航路のコントロールと南方へのアクセスポイント」をそれぞれ提供しているのだ。

 ダリル・コードル海軍作戦部長も今月14日、「韓国の原子力潜水艦を中国抑止に活用するということは自然な予測」だとし、台湾有事における韓国の役割に言及したことがある。だが韓国外交部(省に相当)はこの日、「(原潜の建造は)特定国を対象にするものではない」として対中けん制論に反論した。

ヤン・ジホ記者

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