▲グラフィック=宋允慧(ソン・ユンヘ)

 今月開催された韓米協議で米国のトランプ政権は韓国政府に対し「韓米相互防衛条約」を米国のインド太平洋戦略に拡大して適用することを含む「同盟の現代化」を求めたことが23日までに分かった。韓米両政府筋によると、米国務省のランドウ副長官は18日に東京で開催された韓米外務次官会議で「韓米相互防衛条約として締結されている韓米同盟を『未来型の包括的戦略同盟』に強化したい」と求めてきたという。トランプ大統領による25%関税の猶予期限(8月1日)を目前に控えて通商交渉が進む中、安全保障協議でも米国から請求書が突き付けられた形だ。

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 韓米相互防衛条約の前文には「太平洋地域の集団防衛」に向け両国は努力することが定められている。例えば第3条には両国のどちらかが「太平洋地域で武力攻撃」を受けた場合、もう一方がこれを「自国の危険性」と見なして「行動する」と定められている。これはこれまで北朝鮮が韓国を攻撃した場合、米国が自国に対する攻撃と見なして介入するという意味に解釈されてきた。トランプ政権の要求は台湾有事など太平洋地域で米中が衝突した場合、韓国も一定の役割を果たすべき点を明確にすることだ。

■米国は韓日豪比に「NATO式集団防衛」を要求か

 ランドウ国務副長官はさらに「この地域の安全保障環境は変化しており、同盟を互恵的に現代化する必要がある」として韓国の国防予算増額や米軍戦略兵器展開費用を韓国が一部負担することなども求めたという。現在国内総生産(GDP)の2.3%となっている韓国の国防費をGDPの5%にまで増額するよう正式に求めたのだ。今月10-11日に韓国で開催された外交・国防の局長級実務協議でも国務省のケビン・キム副次官補が「同盟の現代化」について説明した。

 韓国大統領府の魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安全保障室長は9日、韓国の国防費について「国際的な流れに沿って増額する方向で協議を行う」と明らかにした。しかし米中衝突の際に韓国が韓米相互防衛条約に基づき米国側での貢献を求められた点は李在明(イ・ジェミョン)政権にとって大きな課題になりそうだ。李在明大統領は選挙遊説で「台湾海峡問題には介入しない」という趣旨の発言を重ねて行ってきた。

 米国のトランプ政権が「同盟の現代化」を進める背景には、中国の脅威が差し迫る新たな環境に合わせて同盟体制を見直し、その財政的・軍事的負担を同盟国にも負わせたい考えがある。米国は今年3月末に公表した「国家安全保障戦略(NSS)」暫定版に「中国による台湾侵攻抑止」を最優先の課題として明記した。早ければ来月公表される新たな国家安全保障戦略や米軍配置の見直しを検討する「グローバル・ポスチャー・レビュー(GPR)」などにもこれに対応した米軍再編について記載される見通しだ。同時にトランプ政権は韓国、日本、オーストラリア、フィリピンなどに①地域の防衛力強化に向けた防衛費増額②米中対立の際に米国側で貢献すること―などを求め始めている。

 米国のヘグセス国防長官は21日(現地時間)、フィリピンのマルコス大統領に対し「米国はフィリピンとの相互防衛条約を引き続き忠実に守る」とした上で「この条約は南シナ海を含む太平洋全域で発生する米軍、航空機、政府所有の船舶などに対する武力攻撃に適用される」と説明した。南シナ海と東シナ海で米中が衝突した場合、フィリピンに対して米国側に付くよう求めたのだ。

 米国のコルビー国防次官は同日X(旧ツイッター)に「韓国と同じくアジアの同盟国は防衛予算の増額や集団的防衛力を強化することが重要だ」「国防総省はアジア太平洋における集団防衛を強化するため、国務省とも緊密に連携している」と投稿した。12日付のフィナンシャル・タイムズによると、コルビー次官は日本やオーストラリアに対しても「米中が戦争すればどんな役割ができるか」と問いただしたという。

 コルビー次官が言及した「集団防衛」がいかなる概念かはまだ明確ではない。北大西洋条約機構(NATO)による集団防衛は「一国に対する武力攻撃を全体への攻撃と見なす」と定めた同条約第5条に基づき、加盟32カ国のうち1国でも攻撃を受ければ他の加盟国が集団で対応するという概念だが、このような形式に韓国政府は懐疑的だ。ある韓国政府筋は「現在インド太平洋地域にNATO式集団防衛の概念は存在せず、その適用も構築も現実的に簡単ではない」とコメントした。

 しかし米国と日本は「インド太平洋地域における集団防衛条約は必要」と主張している。日本の石破茂首相は昨年9月「アジア版NATOを創設し、中国とロシアと北朝鮮に対する抑止力を確保しなければならない」と発言した。米国のラトナー元国防次官補も今年5月「太平洋防衛条約」の締結を主張している。

 日本は東シナ海と南シナ海を一つの戦区とし防衛戦略を統合的に運用する「ワン・シアター」と呼ばれる概念を米国、オーストラリア、フィリピンに提案し同意を得た。これら4カ国の安全保障協議体「スクワッド」が集団安全保障条約の基盤になるとの見方も浮上している。金聖翰(キム・ソンハン)元国家安保室長は「米国は韓半島は在韓米軍、台湾海峡は在日米軍として双方を別の戦区としてきた。しかし台湾海峡と韓半島は互いに危機を引き起こす関係にあるため、事実上の『統合戦区』を目指すのは米国も効果的と考えている」と述べた。

盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者

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