▲イラスト=イ・チョルウォン

 文在寅(ムン・ジェイン)政権当時の2019年7月初め、韓国不動産院住宅統計部の職員A氏は、青瓦台と国土交通部の不動産政策担当者らに過去1週間の全国のマンション価格変動に関する統計報告書をメールで送った。報告書にはソウル地域のマンション価格が前週比で平均0.02%上昇したという内容が含まれていた。

 しかし、A氏はメールの「本文」には別の話を書いて送った。「実際の市場の状況は(上昇率が)0.1%以上とみられる」と書いたのだ。ソウル地域の実際のマンション価格上昇率は不動産院の統計上の上昇率の5倍を超えるという指摘だった。不動産院の統計報告書は公式にはA氏をはじめとする不動産院職員らが全国のマンション価格を調査して作成したものだ。それでもA氏は自分が直接作った統計報告書を送る際、「この統計は事実ではない」と書いていたに等しい。

 これは当時、A氏をはじめとする不動産院職員が青瓦台と国土交通部の圧力で、虚偽の統計を作成していたためだ。不動産院職員は自分たちが作成した虚偽統計が市況とかけ離れていると指摘する文章を青瓦台や国土交通部に送り続けていたことが分かった。

 今年9月、監査院が発表した文在寅政権の国家統計操作疑惑に関する監査中間結果によると、2017年6月に当時の張夏成(チャン・ハソン)青瓦台政策室長は不動産院が週1回実施している「週間マンション価格動向」調査の中間集計値を持参するよう命じた。この調査は本来、不動産院の調査員が全国の標本マンションを現場調査し、7日前に比べて価格がどれだけ変動したかを把握するものだ。しかし、張室長の要求に応じ、不動産院は前週の調査から3日経過した時点でマンション価格の変動を「中間調査」しなければならなくなり、その中間調査結果は青瓦台と国土交通部に「中間値」という名称で報告された。元々実施していた調査の結果は「速報値」「確定値」という名称で報告された。

 青瓦台と国土交通部は事前に提出を受けた「中間値」よりも最終集計された上昇率が高かった場合、不動産院に上昇理由を示せと要求するなどして、不動産院職員に圧力をかけた。不動産院幹部には「統計操作」に協力しなければ、不動産院の組織と予算をなくすと脅した。結局調査員は直接調査したマンション価格ではなく、それを勝手に削った価格を入力し、それに基づく虚偽の上昇率さえも高いと判断すると、不動産院本社の職員が上昇率をさらに削った。

 A氏をはじめとする不動産院住宅統計部の職員は調査員たちが送ってきた調査結果を取りまとめ、マンション価格の上昇率を算出する業務を担当していた。上昇率を勝手に下げる操作も直接行わなければならなかった。操作された統計は青瓦台と国土交通部の不動産政策担当者にその都度メールで送った。

 本紙の取材を総合すると、監査院はA氏らがメール本文に自分たちが操作した統計は事実ではないと告発する内容を書いて送信していたケースが複数あることを確認した。メール受信者の中に統計操作を直接指示したか圧力を加えた人物だけでなく、他の不動産政策担当者も含まれていたためとみられる。A氏は監査院の調査に対し、「政策担当者に実際の市況を正確に知らせたかった」と答えたという。

 監査院が確保したこうした「告発コメント」の中には、「実際の状況は我々が報告している統計とはかなり異なる」という直説的な内容もあったという。19年5月に青瓦台と国土交通部にメールで送られた統計ファイルでは、ソウル市松坡区のマンション価格が下落したことになっていたが、同じメールの本文には「松坡区は蚕室地区の上昇率が高く、区全体で上昇率がプラスになっても全くおかしくない」と記されていた。

 19年6月には18年末から下落傾向を示していたソウルのマンション価格上昇率が不動産院が操作した統計でも上昇に転じたが、国土交通部は当時、不動産院に対し、「このままだと、私のライン(担当部署)は全滅だ。あと1週間だけマイナスということでお願いできないか」と価格が下落したように数値操作を要求した。不動産院職員は青瓦台・国土交通部にソウルのマンション価格が前週比0.01%下落したと改ざんした統計を送りながらも、メールの本文には「市場は既にプラスに転じた。(民間の)KB不動産の統計では2週間前からプラスになっている」と書いた。

 マンション価格が高騰する状況でも不動産院が統計上価格上昇率を低水準を維持したため、多くの市民団体が18年から不動産院の統計数字は改ざんされていると指摘し始めた。その際にも不動産院職員はメールに「市民団体の主張が正しい」と書いて送ったという。

 監査院はこうしたメールを受け取った青瓦台、国土交通部の担当者が不動産院の統計が操作されていることを知らなかったはずはないとみているという。しかし、メール受信者のうち、統計操作をやめさせるために動いた人物はいなかったという。メールで当局に告発コメントを送ったA氏は、本紙の電話取材に対し、「(そういうコメントを)少し書いたかもしれない」と述べながらも、「以前のことなので、どんな内容を書いたかよく覚えていない。監査院の監査や検察の捜査が行われており、答えられない」と話した。

 不動産院職員の告発は、トランプ政権当時の18年、米政府高官がニューヨークタイムズに「トランプは同盟関係には関心がなく、金正恩(キム・ジョンウン)とプーチンに好感を示している」と暴露する寄稿を行った事件を思い出させるとの声もある。テイラー元米国土安全保障省の首席補佐官は20年、自分がその寄稿を書いた高官だと明かした。

キム・ギョンピル記者

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