今年の韓国の対中貿易収支が31年ぶりに赤字に転じる見通しとなった。韓国が中国と国交を樹立した1992年に10億ドルの貿易赤字を出して以来初めてだ。韓国の輸出の4分の1ほどを占め、韓国経済の一軸を担ってきた対中貿易の構図が変わりつつある。

 韓国貿易協会、韓国産業通商資源部によると、今年1~11月の韓国の対中輸出は1140億ドル、輸入は1320億ドルで、貿易収支は180億ドルの赤字だった。対中貿易収支は1月の39億ドルの赤字に始まり、年初来一貫して赤字だ。

 今年対中貿易で記録した180億ドルの赤字は、最大の原油輸入先であるサウジアラビアに対する224億ドルの赤字(1~10月)に次ぐ規模だ。2003年から18年までの16年間、08年を除き韓国に最も多額の貿易黒字をもたらした中国だが、今は立場が逆転した。過去2番目に大幅な対中貿易黒字を記録した18年には、韓国の貿易黒字全体の80%を占めるほど、中国は韓国にとって重要な貿易相手国だ。

 対中貿易収支が大幅な赤字に転じたのは、これまで韓国が輸出した中間財を加工して世界市場に売っていた中国がかなりの製品を自給することができるようになり、韓国が売る物がなくなったからだ。逆に韓国は急成長する電池市場に必須な素材、鉱物を中国から大量輸入しなければならない立場だ。さらに、対中輸出を支えてきた半導体の輸出も市況低迷で減少し、対中貿易収支が31年ぶりに赤字に転じた格好だ。韓国貿易協会のチョ・サンヒョン国際貿易通商研究院長は「半導体黒字という錯視効果に隠れていた対中貿易構造の変化が完全に表出した。今後新しい貿易の枠組みを構築すべきだ」と話した。

■売る物はなく、買う物は多し

 これまで対中輸出不振と貿易赤字は半導体のような特定品目の業況、サプライチェーン(供給網)を巡る対立といった地政学的問題、中国の景気低迷などの変数が理由に挙げられてきた。対中輸出の30%を占める半導体の市況と中国の全般的な景気が回復すれば、対中輸出も回復するという期待が大きかった。対中輸出不振と貿易赤字を産業構造の転換という枠組みでとらえず、一時的な外部の不確定要素のせいにしたのだ。しかし、半導体という外形を取り除いて初めて明らかになった韓国の対中貿易の現実は違った。韓国などから中間財を輸入して加工し輸出していた産業構造から脱皮し、技術力も高めた中国は、今や世界市場で韓国の輸出競争国になった。

 18年に556億ドルを記録した対中貿易黒字はその後200億ドル台に縮小した。全体で過去最大の貿易赤字を出した昨年の対中貿易収支はかろうじて赤字を免れ、12億ドルの黒字にとどまった。しかし、半導体を除いた対中貿易黒字は18年の197億ドルから20年には25億ドルに急減した。21年には26億ドルの赤字に転落した。今年も半導体黒字を除けば、対中貿易赤字は300億ドルを超える。半導体黒字に隠れて対中貿易収支は黒字のように見えたが、他業種では既に赤字に転じていたのだ。

 中国の産業が急成長し、韓国製品が現地市場で市場を失いつつあるとの指摘もある。19年までは対中輸出で半導体、ディスプレーに続き3位だった石油化学製品は今年の輸出が前年に比べ21%急減する不振だ。石油化学企業関係者は「石油化学の中間原料やベースオイルのような汎用製品は現在では中国も生産している。コロナ以前は中国の自給率は60%程度だったが、今では90~100%というのが業界の分析だ」と話した。韓国が輸出していたものを中国が自力で生産するようになり、一部の高級製品を除けば、中国への輸出が難しくなった。19年の対中輸出が90億ドルを上回ったディスプレーは、今年さらに33億ドルにまで減少した。

 2010年代に中国で高い人気を集め輸出が急増した韓国製化粧品は、高級品はフランス、日本製などに押され、中・低価格品は現地製品に市場を譲り、過去のような人気はうそのようだ。

 一方、輸入は大幅に増えている。 20年代に入り、電気自動車(EV)時代が本格化し、輸入が急増した電池素材と二次電池が代表的だ。19年に54億ドルにとどまった電池素材の中国からの輸入額は、今年は年初来で2倍位上の125億ドルにまで増えた。二次電池も19年には輸入品目の10位以内にも入っていなかったが、寧徳時代新能源科技(CATL)、比亜迪(BYD)など中国製電池の輸入が増え、今年は中国からの輸入品目で3位となった。米アップルの製品だが、中国でほとんどが生産するiPhoneも対中貿易赤字の一因になっている。中国からの携帯電話輸入額は10月だけで10億ドルを超え、11月にも同程度を記録したと推定される。

■競争力低下が問題…市場の多角化必要

 政府による全面的支援と人口規模、巨大な内需市場を背景にした中国の製品技術力は今や半導体をはじめとする一部先端産業を除き、ほとんどが韓国に追いつき、韓国がこれ以上中国市場で優位に立つことは難しくなったと指摘されている。現代経済研究院のチュ・ウォン経済研究室長は、「今現実的に中国で売れる韓国製品は半導体以外には事実上ない。中国市場に未練を持たず、他の市場に目を向けるべき時だ」と話した。

趙宰希(チョ・ジェヒ)記者、イ・ジョング記者

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