韓国放送通信審議委員会がこのほど、有名人の名誉毀損(きそん)に当たる動画共有サイト「ユーチューブ」への動画掲載についてグーグル・コリア側に問い合わせたところ、「何の異常もない」との回答があったことが明らかになった。虚偽の内容の動画掲載に対して、ユーチューブの親会社グーグル側が「異常なし」と答えたことから、「グーグルは事実上、フェイクニュースを放置してきたのではないか」と指摘の声が上がっている。

 ユーチューブ・チャンネル「FuRi Creator」には20日、「チェ・スジョン イ・ヨンエ 再婚 婚外子」「イム・ヨンウン結婚、尹錫悦(ユン・ソンニョル) 祝歌」など、事実とは異なるデタラメな内容のショート動画数十本が掲載されていた=写真=。これに対し、放送通信審議委員会は該当動画へのアクセス遮断のため、ユーチューブ運営会社のグーグル・コリアに内容の検討を要請した。

 本紙取材によると、グーグル側はEメールで、「送ってくださった動画とチャンネル全般を担当チームで検討したが、ユーチューブの誤った情報関連方針に違反したコンテンツは見つからなかった」と返信してきたことが分かった。同委員会の主な関係者らは「虚偽情報だらけのユーチューブ・コンテンツに対して制裁してほしいと公文書を送ったが、手が付けられないという返信があり、あきれた」という反応を見せている。グーグル・コリアの担当者は本紙の電話取材に「放送通信審議委員会が送ってくれたショート動画やリストなどを見た」と答えた。

 現在、こうした動画を掲載しているユーチューブ・チャンネルは名前を変え、虚偽の内容のショート動画をすべて削除している。しかし、グーグル側は削除要請をしていない。放送通信審議委員会の関係者は「ユーチューブ側は『スパムや欺まん行為』『性行為と過度な露出』『子どもの安全』『自死』『暴力』などに対する方針を盛り込んだ、いわゆるコミュニティー・ガイドラインに違反しているケースでなければ、ほとんど制裁をしない」と話す。これら名誉毀損に当たる動画の再生回数は動画1本につき4万-11万回に達しており、被害は大きい。専門家らは「グーグル側が『何の問題もない』と言った動画を、掲載者が自ら削除していること自体、該当の動画に大きな問題があることを示している」と言った。

 これだけではない。ユーチューブには「ペク・チョンウォン 借金だけで100億ウォン(約11億円)残し死亡」「キム・ヨナ、コ・ユリムと離婚」などの虚偽情報で再生回数を増やして収益を狙うサイトが依然として存在している。有名人の離婚説・危篤説などを主に取り上げている「夜○○TV」「ホット○○」などのほか、最近TV朝鮮のオーディション番組『ミス・トロット3』などが話第になっているのを受け、主な参加者の名前と顔に「脱落」「衝撃」など虚偽のタイトルを付けて数十万回の再生回数稼ぎを行ったりもする。過去の大統領たちや現職大統領もフェイク動画の被害者だ。=写真=

 誰が掲載しているのかを追跡するのも困難だ。韓国の放送局のある関係者は「番組出演者に関するフェイクニュースが掲載されたと聞いたが、サーバーが海外であることが分かり、措置を取ることができなかった。グーグル本社が名誉毀損に当たるフェイクニュースに対して措置を取る必要がある」と語った。サーバーが海外にある場合、韓国国内で遮断措置を取ることができるものの、そのためには審議手続きを経てグーグル側に正式に是正要求をしなければならない。

 放送通信審議委員会によると、2019年に438件、2020年に1964件だったユーチューブ是正要求件数は、2022年に5083件、今年は11月までで3274件と急増しているという。来年は韓国国会議員総選挙などを控えており、フェイクニュースがさらに猛威を振るうものとみられる。放送通信審議委員会の柳熙林(リュ・ヒリム)委員長は「総選挙を前に、ユーチューブ運営会社のグーグル側に正式に抗議書簡を送る」と語った。

シン・ドンフン記者

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