▲日本の石川県で発生した地震の現場に急きょ派遣された成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

 1月2日午後4時の時点で日本の石川県能登半島中心部から輪島市に向かう国道249号線は陥没で道路が完全に寸断されていた。前日午後に能登半島で発生したマグニチュード7.6の地震の影響で道路のあちこちが陥没し、片道1車線の山間部では道路が20-30メートルにわたり崩壊したため道そのものが消えたような状態だった。周辺の志賀町は幽霊村となり人は誰もいなくなった。広さ246平方キロほどの広さに約2万人が住んでいた山間の町はどの家も屋根とガラス窓が全て崩壊したため、大量の破片などが地面に散乱し、凄惨な雰囲気が漂っていた。前日の地震発生直後には津波警報が発令され、住民は崩壊した自宅を残して立ち去った。現地では車に乗った自衛隊員から「能登半島の海岸道路は地震で多くの場所が崩壊した。危険だから帰れ」と警告された。

 元日に能登半島とその周辺を襲った大地震、そしてそれに伴い発生した火災の影響で少なくとも55人(2日夜10時時点)が犠牲になった。北國新聞など現地メディアが伝えた。地震で崩壊したり火災が発生した建物があまりに多く、死者やけが人はさらに増える可能性が高い。被害が発生した地域では5万7360人の住民が自宅を後にし、955カ所の避難施設で今も避難生活を続けている。2日朝の時点で石川県では3万2900棟で停電が起こり、16の市町村で断水が続いている。被害が大きかった輪島市の観光名所「朝市通り」でも200以上の建物が火災で焼失した。日本の三大朝市の一つとされる輪島朝市はこの日一瞬で焼け野原となり、1300年の歴史は見る影もなくなった。奈良時代(710-794)後期から魚や干物、農産物などの食品はもちろん、様々な工芸品や衣料品なども取り扱い、住民に朝が来たことを知らせてきた輪島朝市だが、この日は商売人や客ではなく、黒い煙と焦げ臭い中で火災への対応に追われる消防隊員の姿しか見えなかった。駐車場に止められた車はどれも全焼していた。

 1日に発生した能登半島地震で被害が最も大きかった輪島市は、約420平方キロの広さにおよそ2万2000人以上の住民が暮らす能登半島先端の小さな海沿いの町だ。兵庫県立大学の後藤忠徳教授(地球物理学)は毎日新聞の取材に「輪島市から40キロほど離れた珠洲市で当初地震活動が活発に始まり、その後は逆断層形地震の特性で徐々に北の方に移動し、輪島市など能登半島先端のあちこちで最も大きな被害が発生した」と説明した。輪島市が今回の地震で受けた影響は大規模な地殻変動が発生するほど大きく、日本の国土地理院は2日「1日の大地震で輪島市は西に1.3メートルほど動いた」と発表した。珠洲市も西に80センチ移動したという。

 輪島市とつながる山間道路の国道249号線では1台の車がドライバーのいない空っぽの状態で停められていた。路上には握りこぶし2個分ほどの深い亀裂があった。おそらく地震で恐くなったドライバーが亀裂が入った道路での運転をあきらめ、歩いて山を下りていったようだ。車のドアはロックもされていなかった。最も近い町まで5-6キロはある山の中腹のため、歩いて行った場合はかなりの時間がかかったものとみられる。

 今回の地震によるけが人の数は現時点で集計されていないが、七尾市の公立能登総合病院には1日夜までに30人以上の患者が搬送されたという。NHKが報じた。2日も骨折や打撲などのけがをした数十人のけが人が病院に担ぎ込まれ、死傷者は今後さらに増える見通しだ。石川県では「崩壊した家屋の残骸の下に閉じ込められた」との通報が2日午前中だけで50件以上あったという。

 相次ぐ余震も恐怖をもたらしている。記者が2日午後に輪島市に到着し、車からしばらく降りて周囲を見回していた時も地面が大きく揺れた。震度2-3はありそうな地震が何度も起こった。NHKによると、地震発生から2日夜10時20分までの時点で能登半島では震度2以上の地震が191回観測されたという。震度とは日本の気象庁が独自に定めた地震の揺れの大きさのことで、地震が起こった場所で人や物が揺れる程度を示す相対的概念だ。たとえば震度2は部屋の中の照明が揺れる程度を意味するという。1日に石川県で起こった地震の震度は「立っていられず、何かにつかまらないと移動もできない」とされる震度7を記録した。

 日本は地震が多いため、日本人は災害に遭っても落ち着いて行動するが、それでも今回の地震はその日本人にとっても大きな恐怖だったようだ。石川県南部の小松市のコンビニでは恐怖を感じた住民が商品を買い占めたため、水や食パンなどが売り切れとなり棚には何もなくなった。小松市では家屋の崩壊などは起きなかったが、それでも今後予想される新たな地震を恐れ、住民が食料品などを大量に買い込んだため商品がなくなったのだ。

 石川県輪島市、珠洲市、七尾市などの主要な病院にはどこも多くのけが人が搬送されているが、突然の断水で手術や人工透析などに支障が出ているため、県に急きょ給水車の派遣を要請した。能登総合病院の関係者は2日「相次ぐ余震で棚から品物が落下し、また漏水によって医療機器が浸水してしまった」「手術に使う水がまず何よりも必要だ」と訴えた。断水が起こった地域では市役所などの前に水を求める数十人の住民が長い列を作る様子がたびたび見られた。輪島市の能登空港では滑走路の5カ所に全長10メートル、深さ10センチほどの亀裂がみつかり、500人以上が今も孤立した状態だ。空港関係者は「空港は4日まで閉鎖され航空機は運航しない。そのため復旧に必要な人材が来られず閉鎖は長引きそうだ」と述べた。

 道路が破壊され物資の輸送も難しいことから、食料などの備蓄が底をついて避難している住民の多くは1日夜から何も食べていない状態だという。現地メディアが伝えた。現地に向かう道路のほぼ半分が地震で亀裂が入るか完全に崩壊したため、道路を使った物資の輸送は事実上不可能な状態にあるからだ。

 岸田文雄首相は2日「能登半島の劣悪な道路事情を考慮し、船を使った物資の支援を本格的に始めたい」との考えを明らかにした。岸田首相は「建物の崩壊などによる被害者を少しでも早く救出しなければならない」として自衛隊員、警察官、消防隊員などを総動員する大規模な救助作業を指示した。富山新聞は同日「石川県内には全国18の都道府県から消防車546台、防災ヘリ9機、消防官2035人が派遣され、いずれも緊急救助や消火活動などに投入される」と報じた。陸上自衛隊も1000人以上の隊員が能登半島とその周辺に派遣され、被害状況の確認と同時に救助活動を続けている。

輪島市(石川県)=成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

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