▲尹錫悦大統領/聯合ニュース

 10日に投開票が行われた第22代韓国総選挙で与党・国民の力が惨敗し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は就任後最大の政治的危機に直面した。国民の力は野党だった4年前の第21代総選挙と同じく少数与党となり、尹大統領が進める国政課題は巨大野党という大きな壁に阻まれそうだ。尹錫悦政権が掲げる労働改革、教育改革、年金改革はもちろん、医師増員などの医療改革も今後さらに難しくなる見通しだ。共に民主党を中心とする野党の圧勝により、尹大統領がこれまで野党の独走をけん制する手段としてきた拒否権さえも、与党議員の一部が離脱すればその行使が難しくなりかねない。権力の核心とも言える人事や予算権も国会の同意が必要な場合は巨大野党の意向に左右される可能性が高まった。加えて与党に対する尹錫悦政権の支配力も一気に低下しそうだ。

 投票終了直後に地上波テレビ局3社が出口調査の結果を発表したが、これに対して与党内部から「尹大統領の一方主義的なリーダーシップのスタイルはもちろん、人事や政策など政権運営の方針全般に対する民心の厳しい審判だ」などの指摘が相次いだ。今回の総選挙は尹大統領当選から2年後に行われたため、尹錫悦政権に対するいわば「中間評価」と位置づけられていた。

 共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は前回の大統領選挙で敗北したが、後に野党第1党のリーダーとして復帰した。しかしその後も尹大統領は李代表と一度も会談せず、巨大野党の反対を回避する苦肉の策として行政部の政策面での権限、あるいは大統領令などにより政権運営を続けてきた。また野党が一方的に成立を進めた法案については就任から2年間で9回拒否権を行使することで阻止した。ある与党関係者は「尹大統領は任期が3年残っているが、その間野党の協力なしには政権運営が難しいという現実を受け入れ、野党と対話し妥協する政治スタイルに立ち返らねばならない」と指摘した。

 共に民主党など野党各党は前回の第21代に続き第22代国会でも過半数を上回る圧倒的な議席を確保したため、尹大統領に対してこれまで以上に圧力を強めるものとみられる。まず大統領室と内閣の全面的な交代など、人事面での刷新を要求するとみられる。さらに尹大統領が第21代国会で拒否権を行使した「金建希(キム・ゴンヒ)ドイツ・モータース株価操作疑惑特別検事法」の成立を再び求める可能性が高い。野党各党は「海兵隊員死亡事件捜査外圧疑惑」「梨泰院惨事」など尹大統領に直接狙いを定めた事案でも特別検事法の成立を求め、さらに尹錫悦政権が反対する韓国教育放送公社法・放送法・放送文化振興会法の「放送3法」改正案、コメの超過生産分の政府買い上げを義務付ける糧穀管理法改正案、民主化有功者法なども再び成立に向け動くとみられる。

 共に民主党や祖国革新党などは今回の選挙運動で「尹大統領弾劾」を堂々と訴えた。祖国革新党の曺国(チョ・グク)代表は「尹錫悦政権の早期終息」「大統領の任期を短縮する憲法改正」まで主張した。上記の与党関係者は「もし野党連合が180-190議席を確保すれば、憲法改正や弾劾を阻止できるライン(101議席)も危うくなり、尹錫悦政権は常に弾劾の圧力を受けながら政権運営を迫られる危険な状況に追い込まれるだろう」と懸念を示した。与党議員の一部が離脱した場合、憲法改正や弾劾を阻止できないのはもちろん、拒否権の行使まで難しくなる。そのため尹大統領による与党への影響力が一層低下することも考えられる。

 今回の選挙では前回の大統領選挙で尹大統領を支持した一部有権者が野党支持に回り、また与党支持層が分裂する徴候が見えたことも尹大統領にとって大きな悪材料になった。国民の力のある議員は「尹大統領と韓東勲(ハン・ドンフン)非常対策委員長は選挙運動の際に金建希夫人のブランド品受領問題や李鐘燮(イ・ジョンソプ)元オーストラリア大使の扱いを巡って衝突し意見が対立した」「選挙で最も重要なトップが動揺したため、尹大統領も惨敗の責任追求から逃れられなくなった」と述べた。

 尹大統領は投票前のつい最近まで「政治的な有利・不利は考えず、改革の課題解決を推進していきたい」との考えを表明していたが、その一方で尹大統領は昨年1月の本紙とのインタビューでは「総選挙で与党が多数を占めれば公約は問題なく実現できるが、多数が得られなければ植物大統領になるだろう」と発言した。上記の与党関係者は「政権運営を巡る大統領の態度やその方針など、全てを原点から洗い直さねばならなくなった」と指摘した。

キム・ドンハ記者

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