【写真】昨年9月、ハンストを行った李在明代表がソウル市中浪区の緑色病院に入院した。李代表はそこまでして自身に対する逮捕同意案を国会で否決しようとしたが、民主党内から30人余りの造反が出て可決されてしまった/ニュース1

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が空回りし、自ら支持離れを招き没落するならば、3件の裁判を受ける李在明(イ・ジェミョン)共に民主党代表の最後の賭けが成功する可能性がある。

 韓国野党・共に民主党の李在明代表は非常に運に恵まれている。あれほど数多くのスキャンダル、さまざまな法的・道徳的論争に巻き込まれても、毎回窮地を抜け出し、議会権力の頂点まで登り詰めたのだから並大抵の運の強さではない。李代表の状況打開能力はまさに「ミッションインポッシブル」級だ。到底逃げ場のない絶体絶命の危機に直面しても、倒れることなく生き残る驚くべき怪力を見せつけた。

 政界入りして以降、李代表は5回の政治的危機が訪れた。最初は「兄嫁に対する暴言」だ。2014年に公開された暴言の録音ファイルは社会から葬り去られても仕方ないほどの破壊力を持つ悪材料だったが、李代表は「不幸な家族史」だと釈明し窮地を乗り越えた。2番目の危機は2018年の京畿道知事選における「虚偽事実公表」問題だ。テレビ討論会で「兄を強制入院させようとしたことはない」という趣旨の虚偽発言を行い、二審で有罪となったが、大法院で逆転無罪となったために生き返った。当時の大法院判決には、大庄洞事件の主犯である金万培(キム・マンベ)氏と関係があった権純一(クォン・スンイル)大法官の役割が大きかったことが後から明らかになった。

 3️番目は大庄洞事件だ。李代表が業者に数千億ウォンの不当利益を与えたとされる疑惑が2021年の大統領選予備選の際に指摘された。「檀君以来最大の不正」とされた疑惑は大津波になって波及したが、李代表は民主党予備選で圧倒的な勝利を収め、大統領選候補に決まった。4番目は李代表夫妻がすし、国産牛肉、贈答品、日本製シャンプーなどの購入代金に京畿道庁の公用クレジットカードを使用していたことが秘書による告発で明らかになった。大衆の怒りに火をつけた敏感な問題だったが、李代表はそれでも生き残り、国会議員バッジを付け、民主党代表に選出された。

 昨年9月、党内の造反票で逮捕同意案が可決され、5度目の危機が訪れた。逮捕状が発行されれば政治生命が終わる絶体絶命の状況だったが、令状審査を担当した判事は「偽証教唆疑惑は立証されたとみられる」としながらも、令状請求を棄却した。李代表は地獄の入口に差し掛かっていたが、李代表はそれを非李在明派排除の機会に利用し、民主党を完全な「李在明党」に変貌させた。そして、与党の相次ぐ失策とオウンゴールも追い風となり、総選挙で圧勝を収めた。

 死の峠を幾度も越え、政治家としての階級を高めてきた李代表には最後の目標だけが残った。大統領になることだ。現在の政治情勢で次期大統領の座に最も近い人物が李代表であることは誰も否定できない。彼は巨大野党の支配株主であると同時に、政界最強の熱狂的支持者層を持つ。尹錫悦政権のレームダック化が加速するほど、政局の主導権は議会権力を握る李代表に集中することになる。総選挙が与党惨敗に終わった瞬間から予見されていることだ。

 しかし、李代表にはこれまでのどんな峠よりも困難な最終関門が残っている。司法リスクだ。 現在李代表は①大庄洞・柏峴洞事件②公職選挙法違反事件③偽証教唆事件で裁判を同時に受けている。そのうちどれか一つでも被選挙権が剥奪される有罪判決が確定した場合、李代表は3年後の大統領選に出馬できない。法的な関門を突破できるかどうかに李代表の大統領選出馬が懸かっている。

 3件の裁判のうち、公職選挙法違反と偽証教唆事件は数カ月以内に一審判決が下され、3年以内に大法院判決が出る可能性が高い。法理が単純で、関連する証拠も明らかだからだ。公職選挙法事件では、李代表が城南都市開発公社のキム・ムンギ元開発第1処長(故人)を知らなかったと発言したのは虚偽だという証言があり、偽証教唆も李代表が偽証を要求したという録音ファイルが確保されている。李代表が切り抜けるのは容易ではない。

 裁判が不利に進行している状況で、李代表の今後の対応策は明らかだ。判決を遅らせる遅延戦術だ。175人の所属議員を防弾部隊として裁判所に圧力をかけ、大統領選までに最終判決が出ないように裁判を引き延ばすことだろう。

 しかし、いくら引き延ばしても、3年間も大法院判決を阻止することは容易ではない。そうなると、李代表は大統領選を繰り上げる方法を模索するだろう。尹錫悦大統領を任期途中で退陣させ、自分の判決が確定する前に選挙を行うのだ。野党が早くも弾劾だ改憲だと言い始めていることは、大統領選前倒しのための地ならしが目的とみるべきだ。李代表は「朴槿恵(パク・クンヘ)モデル」、すなわちろうそく・弾劾政局を起こし、世論の力で尹大統領を下野させるシナリオを念頭に置いていることだろう。

 最高難度のこの戦略が成功するかどうかは、結局尹大統領次第だ。尹政権が現在のように理解困難な国政運営を続け、国民の支持を失えば、李代表の大統領就任計画を助けることになる。相次ぐ空回りで自ら支持離れを招き、支持層にまで背を向けられれば、何が起きるか分からない。7つの事件、10件の容疑で3件の裁判を受けている李代表の最後の「ミッションインポッシブル」は成功するかもしれない。

朴正薫(パク・チョンフン)論説室長

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