韓国では自らを経済的な上流階級だと考える人は全体の約3%にすぎず、通常上流階級の基準となる所得上位20%とは乖離(かいり)しているという国策シンクタンクの研究結果が明らかになった。経済的に上流階級に属する人々の約85%は自らが中流、下流に属すると認識していることを示している。また、中産階級の多くは自らを経済的な下流階級と認識した。一方、国際的な統計基準による客観的な中産階級の割合は増加傾向にある。韓国社会ではしばしば「中産層危機論」がささやかれるが、実際に中産階級が減っているのではなく、自らを中産階級と考える高所得層の不満が発端になっている可能性が指摘された。

■上流階級の大半が自らを中流と認識

 韓国開発研究院(KDI)のファン・スギョン上級研究員とイ・チャングンKDI国際政策大学院教授による「韓国の中産層は何者か」と題する研究報告書によると、客観的な意味での中産階級はこの10年間で着実に増えていることが分かった。経済協力開発機構(OECD)は「所得中央値の75~200%」を中産階級の基準とする。所得中央値とは、全国の世帯を所得順に1位から最下位まで並べた場合、中央に位置した世帯の所得をいう。可処分所得(総所得から税金、利子、社会保険料などを差し引いた額)ベースで「所得中央値の75~200%」に属する人口の割合は2011年の51.9%から2021年には57.8%へと10年間で5.9ポイント増えた。

 一方、KDIが昨年3000人余りを対象に実施しているアンケートによると、自らを上流階級だと考える人は3%にすぎなかった。通常は「所得上位20%」を上流階級に分類するが、韓国では上流階級の10人中8人以上が自らを中流または下流と考えていることを示している。

 また、月収が700万ウォン(約79万6000円)を超える高所得世帯の中でも、自らを上流階級だと回答した割合は11.3%にとどまった。76.4%は中流、12.2%は下流だと認識していた。研究陣は「所得上位10%または資産上位10%に属する人でもそれぞれ71.1%、78.4%が自分を中産階級と判断していた」とし、「客観的階層と主観的階層の意識が明らかに乖離している」と分析した。

 KDIによるアンケートの結果、韓国国民の主観的階層認識の割合は上の上が0.7%、上の下が2.3%、中の上が20.8%、中の下が49.6%、下の上が17.3%、下の下が9.3%だった。上流だと考える人は非常に少なく、中流層が多いが、下に偏った典型的なひょうたん型の構造を示した。

■「中産層危機論」実際は上流階級の問題?

 研究陣は「中産層危機論」が実際には上流階級に属しながら自らを中流だと考える人々の所得条件が悪化したためである可能性があると指摘した。報告書によると、所得上位20%が全世帯の所得全体に占める割合は過去10年(2011~21年)で4.3ポイント(44.3→40.0%)に低下した。一方で、それ以外の所得層の割合はいずれも上昇した。特に所得上位10%の割合が大幅に低下した。

 研究陣は韓国の特性を反映し、社会経済階層を上層、心理的非上層、核心中産層、脆弱中産層、下層の5つに分類した。そのうち高所得層でありながら自らは上流ではないと認識する「心理的非上層」は高学歴・高所得者の割合が上層よりも高く、管理職・専門職の割合と持ち家保有率も最も高かった。報告書は「経済的地位の低下を経験した所得上位層のうち、自らを中産層だと認識する人々が中産層危機を語る蓋然性が高い」とし、「彼らは非常に強力な社会的発言権や文化的権力を持ったグループだ」と分析。その上で、「どのグループを中産層と把握するかによって、政策の方向が変わる可能性があることを示唆している。心理的非上層の見解が中産層の社会的ニーズとして過大包装される可能性を警戒する必要がある」と指摘した。

金智燮(キム・ジソプ)記者

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