▲洪壮源・前国情院第1次長の戒厳当時状況メモ(ソウル=聯合ニュース)

 国家情報院(韓国の情報機関。国情院)の趙太庸(チョ・テヨン)院長が13日、洪壮源(ホン・ジャンウォン)前国情院第1次長の「政治家逮捕メモ」について「うそだと思う」と語った。この日の弾劾審判弁論で、趙院長は「洪・前次官が、(戒厳当日)午後11時6分に国情院長公館前の暗い空き地でメモを書くことになり、ポケットからメモ紙を出して急いで書いたと(憲法裁判所で)言ったが、(防犯カメラで)確認してみると、11時6分といえば庁舎の当人の事務室にいた」と証言した。洪・前次長は午後10時58分、既に本庁に入っていたことが判明した。「メモ」を書いた時間と場所は、いずれも憲法裁での証言と違っていたのだ。

【洪壮源メモ】疑惑を総まとめ

 洪・前次長は、空き地で書きなぐったメモを補佐官に渡して正書させた、とも言った。ところが補佐官は、正書の事実は認めつつも、戒厳翌日に洪・前次長が「また思い出す通りに書け」と指示した―と明かした。原本がなく、記憶をたどってメモを作成し直したというのだ。正確さが疑われるメモだが、民主党の朴善源(パク・ソンウォン)議員は先月11日、このメモを大統領の政治家逮捕指示の「物証」だとして公開した。戒厳直後に洪・前次長は朴議員と連絡を取った。この日、趙院長は洪・前次長が朴善源など民主党議員に「7回も人事請託をした」と証言した。

 朴議員は先月12日、「洪次長が(呂寅兄〈ヨ・インヒョン〉)防諜(ぼうちょう)司令官と電話したとき、声を大きくしたので、横で補佐官が(逮捕リストを)書き取った」と言った。ところが洪・前次長と当時の防諜司令官が電話をしたとき、補佐官は隣にいなかった。洪・前次長は「防諜司令官が李在明(イ・ジェミョン)・韓東勲(ハン・ドンフン)など逮捕者を呼名してくれた」と主張したが、防諜司令官側は憲法裁で「洪・前次長に『逮捕』という言葉を使った記憶はない」と証言した。

 政治家逮捕指示があったかどうかは大統領弾劾審判の争点だ。「洪壮源メモ」は主要な証拠の一つとして提示され、メモの内容が公開されたことで国会の大統領弾劾訴追可決はスピードアップした。13日に洪・前次長は、院長公館と執務室は近いとして「特定の時間ではなく全体の動線を見るべき」と言った。だが戒厳令直後に逮捕リストという重大な情報を書き取ったとする人物が、場所と時間を完全に間違えるというのは異常だ。メモの内容そのものについても疑いは避けられない。洪・前次長のメモの真偽を明らかにすべきだ。

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