▲文在寅前大統領、張夏成(チャン・ハソン)、金尚祚、金秀顕(キム・スヒョン)の各元青瓦台政策室長

 文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2019年7月29日、韓国不動産院の住宅統計部職員A氏は青瓦台、国土交通部など公務員約20人に宛てた電子メールで「不動産院の統計上は、今週のソウルのマンション価格が前週に比べ0.02%上昇した」との内容を含む統計表を送った。ところが、メール本文には「参考までに、実際の市場変動率は0.1%台後半以上」との一文が添えられていた。ソウルの実際のマンション価格上昇率は不動産院統計の7倍を超えていたというのだ。

【表】文政権時代の主な統計操作

■「文政権の統計操作に自責の念」

 不動産院の統計は、不動産院の職員が毎週、全国のマンション価格を調査して作成する。A氏は自分が直接作成した統計が「事実と異なる」ことを暗示する一文を書き添えたのだ。青瓦台などの圧力で不動産院の統計が操作されていることを遠回しに告発したわけだ。こうしたメールは2年間続いた。監査院は17日に公表した「文在寅政権統計操作監査報告書」で、A氏が監査院の調査に対し、「統計操作に自責の念を感じた」と語ったことを明らかにした。

 監査院の報告書によると、A氏の業務は全国の支社にいる調査員が毎週地域を回りながら調査するマンション価格を取りまとめ、地域別に平均価格が前週に比べどれだけ変化したのか統計を作成することだった。そんなA氏と1000人余りいる不動産院職員には、2017年6月から仕事が一つ加わった。発足したばかりの文在寅政権がそれまで不動産院が一週間かけて行っていたマンション価格調査の結果を平日に「中間集計」し、事前に提出するよう求めためだ。政権が打ち出す不動産政策が効果を上げているのか早く知りたいというのが理由だった。A氏はそれ以降、平日に調査員が提出してくる不完全な調査結果に基づく中間集計値を計算し、毎週金曜日に青瓦台、首相室、国土交通部、企画財政部にメールで送らなければならなかった。

 青瓦台はまもなくこの中間集計値を最終統計値を「抑える」ことに使い始めた。A氏が送った中間集計値に比べ最終統計値でマンション価格の上昇率が高ければ、「なぜ高くなったのか」と問い詰めた。事実上マンション価格上昇率の最終統計値を中間集計値に合わせて実際よりも低くなるように操作するよう促すものだった。その後青瓦台と国土交通部はさらに、中間集計値にまで「高い」「おかしい」などと文句をつけ、数値を低くするように圧力をかけた。

 事実上統計改ざん業務をすることになったA氏は、それ以降青瓦台などに送る中間集計値、最終統計値のメール本文に「統計は事実と違う」という意見を添えて送るようになった。監査院が入手したA氏のメールによれば、A氏は2019年5月28日に統計を送る際、「ソウル市松坡区は昨日(送ったメールで)は0%で横ばいだったが、市場に及ぼす影響などを考慮してマイナス0.01%として『再調査』した」と書いている。政権側の要求で松坡区の統計値を0.01ポイント引き下げたことを示す記述だ。

 同年6月7日のメールには「今週は15区が横ばいだったが、売却希望価格や成約状況などを総合的に見ると、半分程度の区は事実上プラスだ」と書いている。マンション価格が上がっていないかのように操作したが、実際には価格が上がっているとの指摘だった。

 A氏は同年11月29日のメールにも「この2年半でソウル市の変動率は不動産院(の統計に)基づけば11.59%だが、実際には経済正義実践市民連合(経実連、不動産院の統計に疑惑を指摘した市民団体)が主張する32%が実際の状況に近い」と書いた。

 A氏は2019年末に他の部署に異動するに際し、それまで自分が送った「意見」をまとめて再度メール受信者に送った。監査院はこの記録を確保したことで、A氏が統計操作を告発してきたことを知った。

 A氏は監査院の調査に対し、こうしたメールを残した理由について、「市場の状況を正確に知らせたかった」と答えたとされる。監査院はA氏をはじめとする不動産院の中堅・下級職員を処罰、懲戒してはならないと結論付けた。

 A氏の告発メールを受け取った機関のうち、告発内容に反応を示したところがあるかどうかは確認できなかった。むしろ、2020年8月、青瓦台の金尚祚(キム・サンジョ)政策室長(当時)は「積極的に不動産院の優秀な統計を広報しろ。何をやっているんだ。経実連が騒ぐ時には強く反論しろ」と述べていたことが分かった。

金耿必(キム・ギョンピル)記者

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