北朝鮮総合
新型5000トン級駆逐艦の進水式に出席した金正恩総書記「次は原潜」
北朝鮮が、従来の最大規模の艦艇(鴨緑級コルベット、1500トン級)より3倍も大きい新型の5000トン級駆逐艦を建造し、進水させた。3月に原子力潜水艦の建造の様子を公開したのに続いて「イージス駆逐艦」クラスの新型艦を公開し、海軍戦力が質的に跳躍したことを誇示したのだ。陸上からの発射に比べて相対的に迎撃が難しい水中・水上からも核攻撃を行える能力を備え、韓米の防御体系をかく乱しようとする狙いがある-と専門家らは分析した。
【写真】「核動力戦略誘導弾潜水艦」建造現場を視察する金正恩総書記
北朝鮮の国営メディアは4月26日、「金正恩(キム・ジョンウン)総書記が参観する中、南浦造船所で5000トン級新型多目的駆逐艦『崔賢』の進水式を行った」と報じた。排水量基準で鴨緑級より3倍も大きく、鴨緑級にはなかった艦対地・艦対空能力を有すると評されている。軍事専門家らは、北朝鮮の水上艦の中では初めてVLS(垂直発射システム、推定74セル)を搭載した「崔賢」は、最大10発に達するKN23系列の戦術核弾道ミサイルと、核搭載可能な数十発の戦術巡航ミサイルを運用できるとみている。また、360度全方位の監視が可能なフェーズドアレイ・レーダーを搭載しているとみられ、「北朝鮮版イージス駆逐艦」とも評されている。金正恩総書記は、この駆逐艦について「超音速戦略巡航ミサイル、戦術弾道ミサイルをはじめ陸上打撃作戦能力を最大に強化できる武装体系が搭載された」と語った。
■戦術核10基を含む74のVLSセル…金総書記「次は原潜」
北朝鮮がこれまで保有していなかった駆逐艦を建造したのは、完成段階に差し掛かったと評されている核・ミサイル能力をベースに海上から核攻撃可能なプラットフォームを備えたい、という狙いがあるものと分析されている。現在開発中の原子力潜水艦まで戦力化された場合、地上からの核攻撃に焦点を合わせている韓国の防御体系にとって大きな脅威になりかねない、という見方が出ている。4月25日の進水式で、金正恩総書記は駆逐艦「崔賢」を「海軍強化の信号弾」であると評価し、さらに「2つ目の信号弾は核動力潜水艦(原子力潜水艦)建造事業」と語った。
4月25日の進水式で金正恩総書記は、娘のキム・ジュエ氏と共に乗艦し、艦内を視察した。さらに、艦名の由来となった崔賢(チェ・ヒョン)元人民武力相のレリーフ前では膝を突き、献花を行った。崔賢は崔竜海(チェ・リョンへ)最高人民会議常任委員長の父親でもある。金正恩総書記は進水式の演説で「われわれは来年度にも、こうしたクラスの戦闘艦船を建造するだろう。可及的速やかに、さらに大きな巡洋艦や、おのおの異なる護衛艦も建造する計画を持っている」「遠洋作戦艦隊を建設しようと思う」と述べた。
北朝鮮の海軍力は、まだ韓国軍とは大きな格差があるというのが一般的な評価だ。韓国海軍はイージス駆逐艦4隻など駆逐艦12隻を保有しており、フリゲートも計17隻保有する等、通常戦力において北朝鮮海軍を圧倒している。北朝鮮は潜水艦戦力において韓国を上回っているが、韓国軍の対潜能力も強化されており、実質的な脅威にはなり難いという。だが北朝鮮は海軍力の強化に拍車をかけており、韓国の新型駆逐艦配備計画(KDDX事業)が遅延する中、海軍力格差が次第に縮まることもあり得る、という懸念が出ている。保守系の旧与党「国民の力」のユ・ヨンウォン議員は4月27日、「駆逐艦『崔賢』はフェーズドアレイ・レーダーと対空・対艦・対地能力まで兼ね備えた初の『北朝鮮版イージス艦』であって、核弾頭ミサイルが搭載されたら韓国にとっては災厄になりかねない」とし、「原子力潜水艦の建造に続く『崔賢』の進水は、ウクライナ戦争への参戦の代価としてロシアから最先端の軍事技術の移転を受けている兆候と見ることができる」と語った。ただし、写真で公開されたフェーズドアレイ・レーダーの実際の能力および戦術核ミサイル搭載の可能性等は、さらなる分析が必要という指摘も出ている。
ヤン・ジホ記者