▲イラスト=UTOIMAGE

 日本の赤沢亮正経済再生担当大臣(当時)がトランプ大統領に「日本にとっては自動車が国だ」と述べた。米日関税交渉で「自動車に対する関税だけは日本として絶対に譲歩できない」と訴えたのだ。これは「同盟国に対しても言うべきことは言う」と明言してきた石破首相(当時)の考えでもあった。最終的に日本は自動車関税を27.5%から15%に引き下げることで米国と合意し、その一方で5500億ドル(約85兆円)の対米投資を約束した。

【写真】鳥のフンまみれになったセマングム湖のソーラーパネル

 当時不思議に感じたのは日本では誰も石破首相とトヨタ自動車との癒着を非難しなかったことだ。日本でも5500億ドルという巨額を投資することへの批判は根強かったが、「自動車業界を必死で守った石破首相」への非難は一切出なかった。実際に石破首相とトヨタ自動車の豊田章雄会長は慶応高校と慶応大学(法学部)の同期生だという。二人が近い関係だったことを示す証拠もある。

 2025年5月1日夜、二人は東京都内のあるホテルで約束もなく偶然出くわし、豊田会長は石破首相に対して45分にわたり立った状態で自分の考えを訴えた。確率から考えてこんな偶然は本当にあり得るだろうか。確実なことはトヨタ自動車の考えが石破首相にしっかり伝わったという事実だ。

 これについて40代の日本人の知人は「政治家の役割は国と国民を守ることだ。トヨタ自動車が崩壊すれば関連産業はもちろん経済全体が揺らいでしまう。そのためトヨタの利益を守った石破内閣は政治家の使命を果たしたことになる。誰が非難するのか」と記者に語った。日本人の目には豊田会長の訴えは「助言」であり、「請託」とは映らなかった。日本の輸出の30%を占める自動車産業を守ることは政治家にとって当然の役割だからだ。

 この話題で思考回路がしばしストップした理由は、共に民主党の安浩永(アン・ホヨン)議員がフェイスブックに投稿した内容がこれに重なったからだ。「尹錫悦(ユン・ソンニョル)内乱を終結させる道はサムスン電子半導体(部門)の全羅北道移転」という内容だった。3回読んだが、内乱と半導体の関係が全く理解できなかった。尹錫悦前大統領が(全羅北道の)セマングムの開発を台無しにしたため、サムスン電子がこの責任を取れということだろうか。

 このフェイスブックから韓国の政治家の脳内構造が透けて見えたと考えると背筋が寒くなった。周囲の考えに関係なく、自分にとっての大義名分に合致するなら、企業など政治家が思い通り扱ってもよい単なる道具に過ぎないという論理だ。世論が自分を後押しすれば権力を振りかざし、そうでない場合は最初からなかったことにすれば終わりだ。売り上げ、費用、投資、利益など企業の論理は彼の脳内には存在しない。実際に脱原発という大義に執着した文在寅(ムン・ジェイン)政権は世論の支持を得たと考えたのか、斗山エナビリティー(当時の斗山重工業)を一時は倒産直前に追い込んだ。

 数年前にSKハイニックスの知人が「半導体工場建設に向け規制緩和を求める『請託』を何度やっても国会が耳を傾けてくれない」と諦め混じりに語ったことがある。「半導体規制緩和」は政治家が機嫌が良ければ聞いてやり、機嫌が悪ければ無視できる程度の軽い事案だろうか。日本にとって自動車が国なら、韓国にとって半導体は生存そのものだ。政治的大義名分という古くさい物差しで企業を揺るがす行為はもうやめてもらいたい。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)支局長

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