▲グラフィック=キム・ソンギュ

■30年間の「レアアース工程」の結果

 では、中国はどのようにしてレアアースを独占するようになったのか。まず、中国での埋蔵量が多いことが挙げられる。USGSの資料(2023年現在)によれば、中国のレアアース埋蔵量は4400万トンで、世界で圧倒的1位だ。ベトナム(2200万トン)、ブラジル(2100万トン)の2倍を超える。生産量で計算しても圧倒的だ。昨年の中国のレアアース生産量(推定値)は27万トンで、全世界の生産量(39万トン)の約70%を占める。米国(4万5000トン)の6倍水準だ。製錬・精製などによる加工量では、中国のシェアは全世界の90%を超えたと推定される。

【グラフィック】レアアースと重要鉱物など戦略資源の主な活用分野

 これは一夜にして実現したものではない。中国が世界の工場として「赤いサプライチェーン」を拡張する過程は、先進国が製造業の競争力を失っていく過程と同時進行する。完成型製造業バリューチェーン(企業活動で付加価値が生成される過程)の構築を目指す中国の執念は原材料調達を見ても明らかだ。早くから重要鉱物の将来的価値と重要性を悟っていた中国は、自国で生産する鉱物の戦略的価値を高めるための政策を着実に実行した。中国政府は1991年、国家保護性採掘鉱種を指定し、タングステン、スズ、アンチモンなどの主要鉱物を国家が管理し、その資源の製錬、加工、販売、輸出に許可制を導入。主要鉱物に対するコントロール権を握った。

 中国が戦略資源のサプライチェーンで優位を占める上では、鉱物の採掘、製錬、精製産業が多量の汚染物質の排出を伴う過酷な労働という基盤の上に成り立っていた点も作用した。2010年代初めには、中国江西省竜南市のレアアース採掘業者密集地域でレアアースが流出し、河川が真っ黒に変わり、その水で炊いたご飯は真っ黒になった。ハーバード・インターナショナル・レビューによると、レアアース1トンを生産するためには、3キログラムのちり、9600~1万2000立方メートルの廃ガス、1トンの放射性残留物を含む2000トン余りの有害廃棄物が出る。低賃金と過労、そしてさまざまな有害物質を無防備に扱わなければならない劣悪な労働環境も深刻な水準にある。

 1970年代までは米国、オーストラリアなど西側諸国がレアアースを含む鉱物資源の生産と供給を掌握していた。しかし、精製過程で発生する大規模な環境汚染のため、1980年代から西側諸国のレアアース生産は衰退する。米国でも多くのレアアース鉱山が閉鎖された。その間、中国は安い労働力と緩い環境規制を背景にレアアースの生産から製造に至るまでの独占的供給体系を自然に構築することができた。

■中国の刀、米国の盾

 2010年9月、尖閣諸島(中国名・釣魚島)で日本の巡視船が中国漁船を拿捕した。領有権紛争がある海域で中国漁船が操業したことを領海侵犯とみなし、日本は船長を拘束した。中国政府は強く抗議し、それまで磨いてきた刀を取り出した。まさにレアアースだ。中国は漁師の釈放を要求し、レアアースの日本への輸出を完全に断ち切った。レアアースの供給が途絶えると、日本はわずか3日で中国人漁船員を解放した。「レアアースの武器化」がどれほど効率的なのかを国際社会に劇的に示した事例だ。

 北京はその後、戦略資源のサプライチェーンにおける優位を積極的に武器として活用した。2022年には中国国務院(中央政府)がレアアースおよびその他鉱物産業への外国人投資を禁止。2023年に実施した黒鉛、ガリウム、ゲルマニウムなどの戦略物資の禁輸措置は米中競争で中国が手に入れた切り札だった。

 尻に火がついた米国は、対応策づくりに乗り出した。「鉱山から磁石まで(マイン・トゥー・マグネット)」戦略が代表的だ。戦略兵器の生産への支障を懸念した米国防総省は昨年、国家防衛産業戦略を通じ、2027年までに米国の国防に必要な資源を供給できるサプライチェーンを構築することを目標に投資を進めている。一時、環境問題と財政悪化で閉鎖された米カリフォルニア州マウンテンパス鉱山で産出したレアアースを加工し、永久磁石を自主生産するやり方だ。しかし、直ちに需要を満たすには力不足だ。

 中国を除いて、米国単独または米国と同盟国だけで構成する安定的な鉱物サプライチェーンを整備するのは大変なことであり、しかも多額の費用がかかる。中国を除く国が堅固なサプライチェーンを構築するには10~15年以上はかかるとの見通しが示されている。技術の未来は中国の戦略資源に左右されるというわけだ。

寄稿=イ・ヒョンイク科学技術政策研究院副研究委員

整理=キム・ソンモ記者

ホーム TOP