李在明政権
五つの刑事裁判を抱える李在明大統領が最高裁判事30人中26人を任命できる法案、新政権発足初日に国会の小委を通過

進歩(革新)系の与党「共に民主党」が、新政権発足初日の4日、大法官(最高裁裁判官に相当)を14人から30人に増やす裁判所組織法改正案を国会法制司法委員会の法案小委で通過させ、大法官の増員が目前に迫った。法曹界では、上告審の裁判をいっそう充実した形で行えるようになるだろうという期待と共に、政府・与党が大法院(最高裁に相当)の構成を思い通りに主導するだろうという懸念が浮上している。
【図】最高裁判事14人→30人 予想されるメリット・デメリット
■「裁判の負担を減らし、審理が充実するように」
大法官の増員は、その必要性が絶えず提起されてきた司法府の「宿題」だった。2023年の時点で大法院長(最高裁長官に相当)と裁判所行政処長を除く大法官12人の1人あたりの事件処理件数は3305件で、算術的にいえば1日9件以上のペースで宣告しなければならない。
なので、具体的な審理もなしに原審通りに確定させる「審理不続行」決定が下されるケースが多い。2023年の民事事件の70%(8727件)、家事事件の84%(588件)が審理不続行で終結した。キム・サンギョム東国大学教授は「上告審に上ってくる民事・刑事事件はますます複雑になり、環境・税金分野など難しい訴訟が増えているのに、大法官の数は18年にわたりそのまま」だとし「個別の事件を集中審理するために、大法官を増やす必要がある」と述べた。
ただ、大法官の数を増やすだけで事件山積み問題が解決したり、上告審の審理が充実して行われたりするわけではない―という反論もある。大法院は、大法官増員案を急いで処理することには反対の立場だ。ある大法院関係者は「大法官の増員は、上告制度の改変を含め司法制度全般についての議論と共に熟考すべきもの」だとし「上告審の役割と機能をどのように調整するのか検討した後で、必要な分の大法官を増やすのが正しい」と指摘した。「民主社会のための弁護士会(民弁)」出身の朴燦運(パク・チャンウン)漢陽大学教授は、自身のフェイスブックに「大法官増員は政権発足後、一番最初にやるべきことか。増員には基本的に賛成だが、電光石火でやることではない」と書き込んだ。
■「政治的理念が一致する大法官を増やして大法院を掌握」
民主党が推進する「大法官増員」の最大の問題は、政府と民主党が、自分たちと政治的傾向が一致する大法官を大幅に増やせる、という点だ。裁判所組織法改正案が国会の本会議を通過したら、李在明(イ・ジェミョン)大統領は任期5年の間に大法院長を含む大法官10人を交代させ、増加分の大法官16人を追加で任命できることになる。
もちろん、韓国憲法が保障する「大法院長による提請(任命請求)」手続きはあるものの、任命権を持つ大統領が望んでいない人物を大法院長が提請するのは難しい。大統領と大法院長の推薦人物が違っている場合、慣例的に事前調整を経由するプロセスも実現しない可能性が高い。ある高裁判事は「大統領が民弁出身者など進歩系の法曹人を候補にしたら、大法院長が拒否するのは容易ではないだろう」とし「大法官の提請を巡って大法院と大統領室の間で対立が大きくなりかねない」と語った。仮に、大統領が大法院長の提請を受け入れても、巨大与党の民主党が国会で反対したら提請権は無力化されかねない。
ある部長判事は「一審・二審の裁判所で五つの刑事裁判を抱えている李大統領が、大法官の増員で自分に有利に大法院を構成しようとしている」とし「“誰も自分を裁く事件の裁判官にはなれない”という法の原則を崩す試み」だと指摘した。
海外でも、政治権力が最高裁裁判官を増やす方法などで最高裁を掌握し、司法府の独立性を毀損(きそん)した事例は幾つもある。ベネズエラは2004年、最高裁の裁判官を20人から32人に増やし、政権寄りの人物でこれを埋め、行政府が司法府を掌握したと評された。メキシコは裁判官全員を国民投票で選ぶ直選制を導入し、与党寄りの人物が大挙して当選有力となっている状況だ。
■「法理・判例を樹立する全員合議体の弱体化も懸念」
大法官の増員は、統一された法理と新たな判例を提示する大法院全員合議体(全合)の機能を弱体化させかねない、という指摘も出ている。現行の全合は、国民的関心の高い事件や社会の根本的価値の確立が必要な事件などを、裁判所行政処長を除く大法官13人で深く掘り下げる。大法院裁判研究官出身のある弁護士は「大法官が30人になったら、声の大きな一部の大法官が合議を主導し、投票式で運用される可能性が高く、深みある審理が難しくなる」とし「大法官が増えた際に小部や全合の運用方法などをどうするのか、というところから深思熟考すべき」と語った。
一方、予算や空間などの実務的な問題も立ちはだかるだろう、という見方もある。
パン・グクリョル記者、パク・ヘヨン記者