▲ロサンゼルスでデモ隊による抗議行動が5日目を迎えた10日、洋服店が密集するジョバー・マーケットは客足が途絶えて閑散としていた。/オ・ロラ特派員

 ジョバー・マーケットで30年にわたって衣類の卸売業を営むデービッド・リーさんは「ここはヒスパニック系のスタッフがいなければやっていけない」と話した。縫製工場での裁縫、衣類の入った箱の荷積み・荷下ろし、包装・整理、検収など、骨の折れる仕事に就こうとするのはほとんどがヒスパニック系だからだ。近くにあるコリア・タウンの飲食店もキッチン補助、ホールでの給仕などの業務をヒスパニック系に大きく依存している。ロサンゼルスの韓人料食業会長を務めるマーク・キムさんは「数十年前には初めて移民してきた韓国系の人たちがそのような大変な仕事を引き受けていたが、今は韓国系の住民でそういう仕事をしようという人はほとんどいない」として「韓国系の店主たちが低賃金を理由に不法移民を雇っているのではなく、雇える人材が彼らしかいないからだ」と説明した。ロサンゼルスで韓国系とヒスパニック系は既に経済の運命共同体となっているのだ。

 このため、ヒスパニック系を狙った当局の取り締まりは韓国系住民にも大きな影響を与えている。この日、ジョバー・マーケットとコリア・タウンで出会った韓国系の店主約10人は、一様に「不法移民の立場のスタッフだけでなく、永住権を保持しているスタッフも、家族に問題のある人物がいると言われて取り締まりの被害に遭い、無断欠勤している」と説明した。実際に、この日韓国系の衣類卸売商人たちが集中する「シェーン・ペドロ卸売りマート」には、普段は常駐している駐車スタッフも見当たらなかった。商売人のキムさんは「うちの店で品物を購入して小売りしているのもほとんどがヒスパニック系で、彼らは身を隠していて店に来ないので、私たちの売り上げも急減している」と話した。一部では、ヒスパニック系の不法移民を捕らえるために韓国系の店舗を急襲するケースも発生し、そこで働く韓国系の不法移民も捕まるのではないかとの懸念も出ている。現在、ロサンゼルスには不法移民という立場の韓国系住民が数万人いるという。

 多くの韓国系住民が、今回のデモについて「第2のロサンゼルス暴動」に発展するのではないかと心配している。さらに、大統領の長男であるドナルド・トランプ・ジュニア氏がSNS(交流サイト)に、韓国系と推定される男性がビルの屋上で銃を構えている写真を投稿し「ルーフトップ・コリアン(屋上の韓国人たち)を再び偉大に」と書き込んだことが分かり、不安はいっそう高まっている。商売人のデービッド・リーさんは「ロサンゼルス暴動当時、私は18歳だったが、そのときの状況がどれほど残酷だったか覚えている」「韓国系住民たちが再び理不尽な八つ当たりの対象になってはならない」と話した。

 ただし、33年前の暴動と現在は異なるとして、落ち着いた対応を強調する声も少なくない。韓人料食業会のマーク・キム会長は「私が経験したロサンゼルス暴動と今起きているデモは明らかに種類が異なる」と話した。しかしトランプ大統領が、政治的に見て「敵陣」に等しいロサンゼルスを標的にしているだけに、対立は容易には解消しないだろうとの懸念も示されている。

 ロサンゼルスのあるカリフォルニア地域は、伝統的に民主党の票田であり、多様性・包容性などいわゆる政治的な正しさ(ポリティカル・コレクトネス)を重要な価値と考えている。そのため、ロサンゼルスは不法移民の保護、マイノリティーの包容、高い所得税、強硬な環境保護政策などさまざまな懸案を巡ってトランプ大統領と衝突してきた。ロサンゼルス韓人会はこの日午前、現地の韓国総領事館や主要な韓人協会の会長らが出席する中、ロサンゼルスのカレン・バス市長とビデオ会議を開催し、韓国系住民の密集地域に対する保護や経済損失の復旧案などについて話し合った。ロサンゼルス韓人会のスティーブ・カン理事長は「1992年のロス暴動のようなことにならないよう、市と協力して暴力事態などを積極的に予防したい」と話した。

ロサンゼルス=オ・ロラ特派員

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