裁判
安敏錫「崔順実の海外隠匿資産は数兆ウォン」発言は名誉毀損、最高裁がソウル南部地裁に差し戻し
与党・共に民主党の安敏錫(アン・ミンソク)前議員が「チェ・ソウォン(改名前は崔順実〈チェ・スンシル〉)受刑者の海外隠匿資産は数兆ウォン(数千億円)に達する」と提起した疑惑の一部について、韓国大法院(最高裁判所)は名誉毀損(きそん)に該当するとの判断を下した。大法院第2部(主審:オム・サンピル大法院判事)は26日、チェ・ソウォン受刑者が安敏錫前議員を相手取り起こした損害賠償訴訟で、原告敗訴の判決を下した原審を破棄し、事件をソウル南部地裁に差し戻したと明らかにした。
朴槿恵(パク・クンヘ)政権時の国政介入疑惑が取り沙汰された2016年末から、安敏錫前議員は複数の番組に出演し、当時ささやかれていた「チェ・ソウォンは海外に数兆ウォン台の資産を隠匿している」という疑惑を取り上げた。すると、チェ・ソウォン受刑者は「虚偽事実を流布し、名誉を傷つけた」として安敏錫前議員を相手取り1億ウォン(約1100万円)の損害賠償訴訟を起こした。
チェ・ソウォン受刑者が問題視した安敏錫前議員の発言は「海外隠匿資産額は数兆ウォンに達する」「資産の出どころは(朴槿恵元大統領の父親)朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領だ」「スイスの秘密口座に入金された某企業の金はチェ・ソウォンと関係がある」「チェ・ソウォンは米国の防衛産業企業の会長に会って利益を得た」など10件だ。
大法院はスイスの秘密口座・米国の防衛産業企業に関する発言について「安敏錫前議員は情報提供を受けたと主張しているが、これを裏付ける資料もなく、情報提供内容が真実なのか事実確認も経ていない」「それにもかかわらず、単なる臆測や疑惑提起程度ではなく、非常に断定的表現を使用した」と指摘した。ただし、海外隠匿資産の額などに関する発言については「当時、国会議員の地位にあった安敏錫前議員の政治的主張に当たり、表現の自由の限界を脱したと断定するのは難しい」と述べた。この判決が出ると、チェ・ソウォン受刑者側のイ・ギョンジェ弁護士は「安敏錫前議員の悪質な疑惑提起によりチェ・ソウォン受刑者は裏の実力者・国政介入者とされた」と語った。
この日の判決はチェ・ソウォン受刑者に対する名誉毀損を巡る安敏錫前議員の刑事裁判にも影響を及ぼすものとみられる。先月10日に行われた同事件の結審公判で、検察は安敏錫前議員に懲役1年を求刑した。
キム・ナヨン記者