▲イラスト=UTOIMAGE

 「車に注意し、歩行者用信号に従って安全に渡ってください」

 中国・成都市に行くと、通りの端に立って音声放送を流しながら手で合図をするヒューマノイド(人間型ロボット)に出合える。成都市が今年8月の「ワールドゲームズ2025」開催を控え、市中心部のパトロールにロボット警察を投入したからだ。成都市の「ロボット警察」は、一日の流動人口が10万人に達する場所に配置され、リアルタイムでコントロールセンターに街の映像を伝送するとともに、異常事態を感知してパトロールする任務を担っている。

【写真】成都市の街頭でパトロールに当たる人型ロボット

 中国国営メディア「新華社通信」が6月23日に報じたところによると、成都市は最近、人口が密集する市の中心地「天府広場」で、計5台のロボット警察を活用したパトロール活動を本格的に開始した。今回投入されたロボットは四足歩行型、タイヤ型、ヒューマノイド型の3種類だ。ロボットたちは2台ずつペアになって2-3時間ごとに交替し、パトロール映像や異常な状況をリアルタイムでコントロールセンターに伝送するとともに、近くの警察に警報を伝える。

 特に、人間によく似たヒューマノイド「通天暁」は、街頭で信号機に合わせて腕を振り、車の流れを誘導し、歩行者に安全な通行を要請する役割を担っている。

 成都市公安局によると、これらのロボットは自律走行、障害物回避、リアルタイムでの音声・映像伝送、遠隔音声放送などの機能を持ち、警察の装備を最大20キロまで搭載することができる。充電所に自ら入る機能もあり、24時間連続で勤務できる。気温が40度以上の非常に暑い日や、激しい雨が降る悪天候の中でも同様だ。

 中国共産党の機関紙「人民日報」の電子版「人民網」によると、街で小競り合いなどが発生すると、ロボットは人の動きや密集度を分析して状況を認識し、これを基に、近くでパトロール中の警察に危険発生場所や具体的な内容が入った警報メッセージをリアルタイムで伝送する。警察はロボットの音声送出機能を活用し、警告放送をすることができる。

 このほか、信号に違反した歩行者や、ヘルメット未着用での電動車運転なども識別し、リアルタイムで音声警告を発することができる。成都市は昨年末から警察のドローンもパトロール現場に導入している。ロボットは定点で、ドローンは空中から街をパトロールすることで、全方位的な対応が可能になったのだ。これにより、通勤で交通が混雑する時間帯に、警察官を1人しか配置しなかったにもかかわらず、信号無視のケースが1件も発生しなかったと人民網は報じている。

 成都市公安局科学技術情報化処のチャン・リハン副処長は新華社通信に対し「(ロボット警察は)人が接近しにくい危険地域にも進入することができるため、治安維持が必要な現場で有効に活用されている」「観光客が熱中症などで倒れた場合でも感知し、即座に救助を要請することができる」と説明した。

 報道によると、現在では成都市以外にも北京、上海、杭州、深センなどでこのようなエンボディドAI(具現化された人工知能)に関する実験が活発に行われており、応用分野にも少しずつ広がっている。エンボディドAIとは、人間の体のような物理的な形を持った人工知能で、コンピューターの中で作動するソフトウエアとしてのAIではなく、現実の世界で動き、感覚をやり取りするAIのことを指す。北京では以前、ヒューマノイド・マラソンやヒューマノイド格闘技の大会が開催された。

 中国のエンボディドAI市場は急速に拡大している。新華社通信によると、昨年中国のエンボディドAI市場の規模は4800億元(約9兆7300億円)を突破した。2031年には市場規模が1兆元を超える見通しだ。

北京=イ・ウンヨン特派員

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