事件・事故
令状審査で激しい攻防 178ページ分のプレゼン資料を準備した検事10人相手に尹錫悦前大統領が30分反論「法理的に犯罪が成立しない」
尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領は9日の夜、ソウル中央地裁で開かれた勾留状の実質審査(拘束前被疑者尋問)を6時間45分かけて終え、京畿道義王市のソウル拘置所に移動して令状審査の結果を待った。尹・前大統領は今年1月、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)に逮捕・勾留されたが、3月8日に裁判所の勾留取り消し決定でソウル拘置所から釈放された。しかしそれから123日を経て再びソウル拘置所を訪れることになったのだ。
9日の令状審査は、南世真(ナム・セジン)令状専担部長判事の審理で午後2時22分から始まり、午後9時7分まで続いた。今年1月にソウル西部地裁で行われた最初の令状審査の際は4時間42分かかったが、それより2時間ほど延びたわけだ。この日、尹・前大統領側からは金洪一(キム・ホンイル)、裵輔允(ペ・ボユン)、宋振昊(ソン・ジンホ)、蔡明星(チェ・ミョンソン)、崔志宇(チェ・ジウ)弁護士などが弁論に立ち、趙垠奭(チョ・ウソク)内乱特別検察官の側からは朴億洙(パク・オクス)特別検察官補とキム・ジョングク、チョ・ジェチョル部長検事など検事10人が出た。
尹・前大統領は午後8時ごろからおよそ30分かけて行った最終陳述で、特別検察官が適用した職権乱用・特殊公務執行妨害などの容疑は「法理的に犯罪が成立しない」と反論した。また、特検側の論理に反論する167ページの意見書も提出した。
これに対し特検側は、A4用紙178ページ分のプレゼンテーション資料を準備し、尹・前大統領勾留の必要性を説明した。特検側の説明資料には、12・3非常戒厳の直前に開かれた国務会議(閣議)の場面を録画した映像の様子も含まれていたという。また特検側は、およそ300ページ分の意見書も追加で提出し、尹・前大統領を勾留して「平壌無人機潜入」に関する外患容疑の捜査が必要だと主張した-と伝えられている。
特検側は、職権乱用容疑に関して「戒厳宣布前の国務会議に一部の閣僚だけを呼び出したのは、当時出席できなかった長官9人の審議権を侵害するもの」と主張した。これに対し尹・前大統領側は「最も早く来ることができる閣僚を無作為に呼んだ」と述べた。
また特検側は「尹・前大統領が戒厳宣布の手続き的な瑕疵(かし)を補完しようと、姜義求(カン・ウィグ)前付属室長などに『事後宣布文』を作成するよう指示した」と主張したが、尹・前大統領側は「姜・前室長が任意にやったことで、指示したことはない」と反論した。
秘話フォン(秘密通話ができる携帯電話)のサーバー記録を削除せよと指示した疑いについても、尹・前大統領側は「保安規定に基づいて措置せよと言ったのが全て」だとした。警護処に「自動車の壁」「人間スクラム」「銃器所持」などを指示して公捜処の逮捕を妨害した容疑については「軍事施設である大統領官邸で逮捕状を執行するとは予想もできず、そんな指示をした事実はない」と述べた。
この日の令状審査では、尹・前大統領の「証拠隠滅の恐れ」が争点になった。特検側は「金成勲(キム・ソンフン)警護処次長と姜・前付属室長が警察や検察、特別検察官の取り調べを受けた際、尹・前大統領側の弁護人の立ち会いがあるかどうかで供述内容が違っていた」として、事件関係者らに供述を翻すよう懐柔・圧迫できるので勾留が必要だと強調した。しかし尹・前大統領側は「そんな事実はない」「主な関係者は拘束されており、影響力の行使も難しい」と反論した。
尹・前大統領は9日の午後2時12分、黒い自動車(起亜カーニバル)に乗って裁判所に到着した。紺色のスーツに赤いネクタイという服装だった。車から降りた尹・前大統領は、取材陣の「釈放から4カ月を経て再び勾留の岐路に立つことになった心境はどうか」などの質問には一切答えることなく、保安検索台を通って法廷に向かった。通常、令状審査時に検察は被疑者をあらかじめ呼んで勾引状を執行してから法廷に連れていく。だがこの日、特別検察官は勾引状を法廷の待合室で執行した。特検側は「元職大統領に対する礼遇という観点からのもの」と説明した。
一方、特検側は同日、洪壮源(ホン・ジャンウォン)元国家情報院第1次長を参考人として呼び、彼が戒厳直後に暴露した尹・前大統領の「政治家・法曹関係者逮捕指示」疑惑について取り調べた。
キム・ヒレ記者、オ・ユジン記者