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内乱特別検察官「平壌無人機潜入は停戦協定違反」 およそ10回潜入、報告書を確保【独自】
内乱特別検察官(特検)が14日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の「平壌無人機潜入」疑惑に関して大々的な家宅捜索に乗り出した。この過程で特別検察官は、韓国軍が昨年10月から11月にかけておよそ10回、北朝鮮に無人機を送り込んだとする報告書を確保した。
【表】「平壌無人機潜入疑惑」3大争点
特検は14日、国防部(省に相当)とドローン作戦司令部(ドローン司)、ドローン司隷下のペンニョン島部隊、国家安保室、合同参謀本部(合参)、国軍防諜(ぼうちょう)司令部など24カ所に検事と捜査官を送り込み、関連資料を確保した。
特検は捜索令状で、尹前大統領を刑法上の一般利敵および職権乱用の被疑者として適示したという。特検が当初検討していた重犯罪の外患誘致は省かれた。犯罪の構成要件である「外国(北朝鮮)との通謀」を立証するのは困難だと判断したからだと解されている。その代わりに、尹前大統領と金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相、キム・ヨンデ・ドローン作戦司令官などを一般利敵容疑の共犯として適示したという。平壌無人機潜入作戦を「韓国の軍事上の利益を害する行為」と見なしたのだ。特検はキム司令官に対し、今月17日に出頭するよう通知した。
特検はこの日、合参を家宅捜索する過程で「昨年10-11月におよそ10回の対北無人機潜入作戦が行われた」という内部報告書を確保したと伝えられている。従来知られていた2-3回より3倍以上も多い。ドローン司隷下の金浦・ペンニョン島大隊のほかにも漣川大隊などが作戦に関与したという。合参は、北朝鮮による2022年12月の無人機竜山侵入、23年5-11月の対南汚物風船散布などの挑発行為に対応するため無人機潜入作戦を立案したと伝えられている。
特検は令状に、犯罪事実について「尹前大統領は昨年10-11月、平壌に無人機を3-4回以上潜入させて大韓民国の軍事上の利益を害した」と適示したという。さらに、特検が「無人機潜入は国連停戦協定違反で、北朝鮮の挑発を誘発しかねない行為」と強調したことを巡って論争になった。これについて韓国軍関係者は「北朝鮮の対南挑発に対応する軍事作戦を利敵行為だと見なすのはやり過ぎ」と語った。洪珉(ホン・ミン)統一研究院北朝鮮研究室長は「北朝鮮も韓国も、たびたび停戦協定に違反している」とし「停戦協定違反は軍事的・外交的問題で、無人機潜入の過程で実定法に違反したかどうかはまた別に問うべき」と述べた。軍法務官出身の弁護士は「秘密軍事作戦を暴露して処罰しようとするのは安全保障上危険な発想」と指摘した。
特検は、大統領室が軍の指揮系統を無視して直接ドローン司に無人機潜入の指示を下したともみている。尹前大統領が非常戒厳の根拠にするため違法な指示を下した、と疑っているのだ。これについて韓国軍の中心的関係者は「キム・ヨンデ・ドローン作戦司令官がイ・スンオ合参作戦本部長に直接作戦計画などを報告し、国防部にも関連内容が共有されたようだ」と語った。
一方、進歩(革新)系の与党「共に民主党」は「外患誘致」疑惑を引き続き提起している。金炳周(キム・ビョンジュ)民主党最高委員は14日、「情報提供によると、ドローン司は少なくとも3回にわたり、7機の無人機を北朝鮮に送り込んだ」「具体的な目標、座標も把握しており、金正恩(キム・ジョンウン)の官邸といわれる15号官邸一帯」と発言した。また、ドローン司が昨年2月から無人機ビラ投下関連の公募事業を始めたとして「外患誘致行為が昨年2月から始まったということ」と主張した。逆にユン・ヒョンホ建陽大学軍事学科教授は「軍事的な目的で行われた作戦を“敵を刺激しかねない”という理由で外患と決め付けるのは、『軍事訓練も北朝鮮を刺激しかねないからやるな』と言うのと変わらない」「無人機の問題を過度に政治の論理で追い詰めるのは不適切」と語った。
朴善源(パク・ソンウォン)民主党議員も最近、「平壌で墜落した無人機は尹前大統領の指示で迂回(うかい)納品されたもの」だという疑惑を提起した。尹前大統領が2022年12月に国防科学研究所(国科研)を訪問した当時、韓国国内の中小企業S社の製品に目を付けて「北朝鮮に送り込め」と指示し、S社は受注実績が足りないとなるや、国科研が韓国航空宇宙産業(KAI)と迂回契約を結んだというのだ。しかしKAIおよび防衛産業界は「S社は独自の小型無人機プラットフォームを持つ中小企業で、競争入札を経て正常に無人機を納品した」と反論した。
兪鍾軒(ユ・ジョンホン)記者、オ・ユジン記者、梁仁星 (ヤン・インソン)記者