▲グラフィック=ソン・ユンヘ

 韓国海洋水産部(海洋部)が2006年以降、約20年ぶりに乾燥ノリの備蓄を推進する。ノリの供給が需要に追いつかず、乾燥ノリの価格が高騰しているためだ。今年に入り、ノリの小売価格は平年より40%以上も高騰した。韓国食品ブームでノリの需要は世界的に急増しているが、海水温の上昇で供給が不安定になったためだ。

【写真】ノリ養殖水槽

 ノリは既に「黒い半導体」と呼ばれ、輸出の目玉品目として浮上している。今年は史上初めて輸出額が10億ドルを突破することが有力視されている。国内生産量の約60%が海外に輸出されている。しかし、2019年に60万トンをはるかに超えていた韓国のノリ生産量は、最近は50万トン台に落ち込んだ。韓国の海がますますノリの育ちにくい環境になっているためだ。

 「黒い半導体」の生産を増やしながら、韓国国民のおかずとしての地位も守る方策を悩んでいた韓国政府の妙案が陸上養殖だ。海洋水産部は今年5月、ノリを陸上養殖する技術研究を始めた。水温に関係なく、一年中ノリを生産する時代を切り開く狙いだ。日本も陸上養殖を研究しているが、まだ成功していない。

■水槽で育つノリ

 7月31日、忠清北道清州市五松邑にある食品メーカー、プルムウォンの技術院を訪れた。海水が入った1トンの透明水槽に黒い草のかけらが浮かんでいた。ノリの原草だ。温度はノリが育つのに最適の水温に近い14.8度。水槽内に酸素を供給する装置には水流をつくった。海上養殖場で成長する種子を海と似た環境にした水槽に入れて育てるのだ。

 水槽に投入されるノリの原草は、冷蔵庫のような培養器で育てられる。肉眼では見えない微細な「ノリの種」をガラスのフラスコに入れ、2カ月間培養器で3~4センチの大きさになるまで育てる。その後、冬場の海水並みに温度、光、塩分濃度を調整した水槽に入れる。2週間でノリは10~15センチまで育ち、それを細かく切り平らに広げて乾かせば我々が普段食べるノリになる。研究所で育った陸上養殖海苔は、研究員が手で直接切って乾かす。食べてみると、海のノリに特有の生臭くてしょっぱい香りがした。食感も市販のノリとあまり変わらなかった。

 海苔が育ちやすい最適の温度は10度前後だ。ところが、地球温暖化によって海の水温が晩秋まで下がらないことが増えている。猛暑が激しかった昨年も、10月初めまで西海(黄海)と南海(東シナ海)の水温は25度前後のままだった。そうした高温でノリは病気になる。人間で言えば、免疫力が落ち、ウイルスに簡単に感染するのだ。病気になったノリは穴が開いたり、赤や白に変色したりする。陸上養殖はそれを克服できる代替策となる。

■海がなくても養殖可能

 ノリの陸上養殖技術が完成すれば、海のない内陸でもノリを育てることができる。まだ小さな水槽で実験を行う段階だが、陸上養殖に適したノリ品種が開発されれば、プールほどの広い空間でもノリを育てることができるようになる。海がなくても大型施設でノリを大量生産できるのだ。プルムウォン関係者は「既に内陸の高麗人参農家などから『厳しい高麗人参の農作業をやめ、ノリの養殖をやりたい』という連絡が来ている」と話した。

 安定的な陸上養殖技術が確保されれば、乾燥ノリの原料となるノリを一年中確保できる。乾燥ノリを備蓄しておく必要もなくなる。現在は通常11月ごろから翌年5月ごろまでの冬季に7回ほどノリを収穫する。ところが、最近は水温が高く、12月まで収穫ができなかったり、収穫回数が半分に減ったりすることが増えている。たまたま適切な水温になると、一度にノリが大量に育ち、処理できずに廃棄するケースも生じる。ノリは海で収穫後、速やかに乾かして乾燥ノリにしなければならないが、加工業界の大半が零細業者なので、短期間には加工設備を増やせない事情がある。

 今は収穫したばかりの新ノリは初秋にしか食べられないが、陸上養殖が商用化されれば、年間を通ずて新ノリが食べられるようになる。業界では今は料理材料として十分活用されていない加工前のノリを利用して新しい料理を作ったり、ノリ以外にも他の商品を開発したりすることも可能とみている。

 海洋水産部の最終目標は、技術を商用化し、2029年までにノリを年間通じて陸上養殖できる養殖場を大規模に運営することだ。カギは陸上養殖に適した種子を開発することにある。陸上養殖に適したノリ品種の開発は、食品メーカーの大象が担当した。養殖場でノリが育つ際、四角形の水槽や円形水槽でどんな形が適しているのかも研究が盛んだ。そうした課題を解決するため、浦項工科大、公州大などの大学研究チームと全羅南道、全羅北道、忠清南道などの自治体も研究に加わっている。

五松(忠清北道)=キム・ユンジュ記者

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