社会総合
延命医療の中断を事前に誓約、韓国で300万人突破
「家族の皆さん、聞いてください。私がもし意識を失って苦しむようになったとしたら、説明を聞いて十分に悩んで決めた延命医療の中断に、どうか家族全員が同意してください。私の人生の最後があまり長くなく、苦しくならないよう力を合わせてください」
【グラフ】 急増する「事前延命医療意向書」登録者
今年初めに紹介された2024年延命医療決定制度の手記公募展で受賞したキム・インギョンさんは、叔父が残した手紙を紹介し「延命医療中断決定は誰にでも一度は訪れる分かれ道を前に、事前に自ら熟考した最後のパズルの1ピースを準備しておくこと」と訴えた。国立延命医療管理機関が公開した手記集には、15年前に延命医療決定制度がなかった頃、弟を苦労して見届けた姉の事情、自分の大小便の世話を他人に頼るよりはむしろ尊厳性を維持したいというベトナム戦争参戦勇士の決心などが盛り込まれている。
彼らのように人生の最後に無意味な延命医療に代わって尊厳死を選ぶと誓約する人々が次第に増えている。国立延命医療管理機関によると、延命医療を受けないという内容の事前延命医療意向書を登録した人が300万人を超えた。2018年2月、いわゆる「尊厳死法」と呼ばれる延命医療決定法が施行されて以降、7年6カ月で300万3237人(10日午後5時基準)となった。300万人は全成人人口の6.8%に相当する。
事前延命医療意向書は、自分の臨終に備えて延命医療とホスピスに対する意向をあらかじめ作成しておく文書だ。19歳以上であれば、全国556の指定登録機関で十分な説明を聞いた後に署名できる。
延命医療の中止署名は、最近になって急増している。2018年に制度を導入した初年度は約8万人が参加するにとどまったものの、次第に参加者が増え、3年6カ月がたった21年8月には100万人を突破した。それから2年2カ月後の2023年10月には200万人を超えた。200万人から300万人突破までは2年もかからなかった。
7月31日基準の意向書登録者数(298万9812人)を見ると、女性登録者が199万人と、男性の2倍に上った。年齢が高くなればなるほど登録者数の割合が増え、65歳以上では全人口の5人に1人以上(21%)が登録している。65歳以上の女性は4人に1人(24.9%)が延命医療の中止意向を明らかにした。女性の登録割合がより高いことに関しては、主に登録を行う高齢層では女性が各種集まりなど社会活動に参加することが多く、こうした集まりを通じて延命中断関連の情報に頻繁に接するためだという。ソウル大学健康文化事業団のユン・ヨンホ団長(家庭医学科教授)は「作成の意向を問うアンケート調査では男女の差は大きくないが、実際の作成では男性が比較的保守的になる傾向があると思われる」と述べた。
延命医療は拒否する意向であるものの、まだ意向書を登録していない人はさらに多いものと思われる。韓国保健社会研究院が昨年、成人男女1021人を対象に行った調査では、91.9%が末期患者になった場合、延命医療を中断する意向があると明らかにした。
延命医療の中断に対する認識の変化が広がったことで、延命医療の中断時期を現在よりもさらに繰り上げるべきだとする主張も力を得ている。現在では死亡を目前に控えた「臨終過程」にある患者に対してのみ延命医療の中断などを履行できるが、これを数カ月以内に死亡すると予想される「末期」患者にまで拡大しなければならないというのだ。昨年、保健福祉部(日本の省庁に相当)の依頼で延世大学産学協力団が行った研究では、関連医学会27カ所のうち22カ所(81.5%)が延命医療の中止時期の繰り上げに賛成していることが分かった。ユン団長は「当初、延命医療決定法の立法趣旨が『尊厳死』であるだけに、死が予想される時点から本人の死を準備できるよう社会的支援制度が確立されるべきだ」と述べた。
チョ・ソンホ記者