▲グラフィック=李撤元(イ・チョルウォン)

 米国がデンマーク自治領のグリーンランドを自国に編入する目的でグリーンランド住民の分離独立運動をあおるなど「世論工作」を行った疑惑が浮上し、米国とデンマークの関係が悪化している。グリーンランド編入を公然と語るトランプ大統領は本気だ。

 デンマークの公共放送DRは8月27日、トランプ大統領と関係する3人の米国人がグリーンランドで極秘に影響力を行使する任務を遂行したと報じた。米国に友好的な住民や反トランプ住民のリストアップ、住民との接触、またそれらを通じて米メディアがデンマークをネガティブに報じる材料などを集めているという。トランプ大統領は第1次政権の時からグリーンランド編入の意向を表明し、第2次政権でもレアアースなどの天然資源確保や北極航路開拓のためグリーンランドを米国領にしたいと公の席で語ってきた。

 これに対してデンマーク政府は直ちに反発した。デンマークのラスムセン外相は上記の問題が報じられたその日に駐デンマーク米国大使代行を呼び「デンマークの主権と内政に対する完全な尊重」を要求した。デンマーク国内での反発について米国は「グリーンランド人が自分の未来を決める権利を尊重する」と表明し「米国市民個人がグリーンランドと利害関係を持つこともある。政府は市民の個人的な行動を統制したり指示したりしない」と反論した。

 デンマークのフレデリクセン首相は「米国は報道を否定していない」と懸念を示した上で「深刻な問題だ」と断言した。グリーンランド自治政府のニールセン首相は「無礼だ」として「われわれは協力のパートナーであり同盟国だ。外交のルールに従い国際法と主権を尊重すべきだ」と訴えた。政界からも保守党は「容認できない。米国の浸透に備えよう」と呼びかけ、社会民主党は「同盟国でもある友人にスパイ行為を働くのか」と反発している。

 ただしデンマーク中央政界とグリーンランド現地の反応には温度差がある。グリーンランドはかつてデンマークの植民地だったが、1979年に自治領に昇格し、今は住民が選出した首相が行政権を行使している。グリーンランド人はデンマーク語ではなくグリーンランド語を使用しており、デンマークに対する反発心も強い。今年3月のグリーンランド総選挙では「トランプ大統領のグリーンランド買収発言で世界の関心が集中している今、デンマークからの独立を急ごう」などの主張も出始めた。総選挙で勝利した中道右派の民主党も「時間をかけて独立を推進したい」としている。

 米国はグリーンランドの独立世論を自国に有利な方向に仕向ける工作を続けているようだ。米ウォールストリート・ジャーナルは今年5月「トランプ大統領は中央情報局や国家安全保障局などの情報機関に対し、グリーンランドの分離独立と米国によるレアアースなどの資源採掘に対する現地世論を把握するよう指示した」と報じた。昨年末からドナルド・トランプ・ジュニアとバンス副大統領が相次いでグリーンランドを訪問し、6月には米本土を防衛する北部司令部の作戦範囲にグリーンランドを含めたが、これらも同じく「併合計画」の一環だという。ただし現地では「デンマークからの独立も必要だが、米国の帝国主義も嫌だ」との世論が大勢を占めているようだ。

 グリーンランドは世界最大の島(韓半島の10倍)だが、そのほとんどは永久凍土で人口はわずか5万6000人ほどだ。ただしロシアをけん制できる地政学的な要衝であり、レアアース埋蔵量は150万トンで米国の180万トンに匹敵する宝島だ。グリーンランドのこのような価値に注目した米国は19世紀から引き続き買収を検討してきた。

ウォン・ソンウ記者

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