▲写真=UTOIMAGE

 致死率が最大で75%に達するが、これといった治療薬がない人獣共通感染症「ニパウイルス(Nipah Virus)」が韓国で第1級法定感染症に指定された。これは新型コロナウイルス以来、5年ぶりのことだ。

【図】ニパウイルス感染症の特徴

 韓国疾病管理庁は「ニパウイルス感染症を第1級法定感染症および検疫感染症に指定する」と8日に発表した。これにより、今後ニパウイルス感染症の診断を受けた患者や疑い患者は届出・隔離措置・接触者管理・疫学調査など公衆保健管理の対象になる。今回の新規指定は2020年1月の新型コロナ以降、約5年ぶりだ。新型コロナは2022年4月に第2級に、2023年8月に第4級に下方修正された。

 感染症予防法では、法定感染症を深刻度や感染の可能性などによって、第1級から第4級に分けている。このうち第1級は、生物テロによる感染症または致死率が高く、集団発生の恐れが大きい感染症からなる。現在はエボラウイルス・炭疽(たんそ)・ペスト・重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)・中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)などがあり、これにニパウイルスが加わって計18種になった。

 ニパウイルスは、人にも動物にも感染する可能性がある人獣共通感染症で、致死率は最大で75%に達する。平均潜伏期間は5-14日で、高熱と頭痛の症状が3-14日続き、だるさ、めまい、精神錯乱などの症状を示す。深刻な場合は脳炎と発作が発生し、24-48時間以内に昏睡(こんすい)状態に陥ることがある。まだワクチンが開発されていないため、抗ウイルス剤による対症療法のみ可能だ。

 当初はブタから伝染したと知られ「豚熱」と呼ばれていたが、実は最初の自然宿主はコウモリであることが明らかになった。もともと森で果物を食べて暮らしていたコウモリが生息地破壊などにより養豚農場近くの果樹に集まり、この時コウモリが持っていたニパウイルスがブタを介してヒトに広がったのだ。特に、東南アジア地域によくあるナツメヤシの果汁が主な感染経路となっている。

 1998年にマレーシアで初めて患者が発生し、ウイルスが分離された患者の村と川の名前にちなんでこの名が付けられた。当時、1年間でマレーシアだけで約100人の死亡者を出しており、さらにインドなどを中心に現在までに220人以上が死亡したとの集計がある。まだ韓国では感染事例が報告されていないが、依然としてインドやバングラデシュなどでは毎年患者が発生している。これを受け、韓国疾病管理庁は両国を検疫管理地域に指定した。

 現時点では予防が何より重要だ。韓国疾病管理庁が提示した危険国家訪問時の予防ルールは「フルーツバット(フルーツコウモリ)や病気のブタなど、動物との接触を避ける」「生のナツメヤシのジュースなど飲み物や、地面に落ちている果物の摂取を控える」「病気の患者の血液や体液などとの直接接触を避ける」「せっけんと水で30秒以上手洗いすることを習慣化する」「洗っていない手で目・鼻・口を触らない」などとなっている。

ムン・ジヨン記者

ホーム TOP