▲写真=NEWSIS

 韓国政府の合同監査チームは23日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前政権による大統領室の竜山移転が2022年に繁華街・梨泰院で起きたハロウィン雑踏事故の発生に影響を与えたとする監査結果を発表した。一方、監査院は同日午後、大統領室移転が事故に影響を与えたという判断は示さず、「国家の災害管理体系がマニュアルだけに依存し、新たな種類の災害に脆弱であり、災害対応の第一線にある基礎自治体の能力が中央政府や広域自治体など上級機関より劣っているため」との分析を出した。

 国務調整室、警察庁、行政安全部で構成された「梨泰院惨事合同監査タスクフォース(TF)」は「大統領室の竜山移転が近隣での集会を管理するための警備需要の増加をもたらし、それによって梨泰院一帯で事故当日に警備人員が全く配置されない結果を招いた」と指摘した。また、「予想された大規模な人出に対する警察の準備が明らかに不足しており、そこには大統領室の竜山移転が影響を及ぼした」との判断を示した。

 TFの合同監査は李在明(イ・ジェミョン)大統領が7月16日、梨泰院雑踏事故の遺族と会見後、捜査を指示したことをきっかけとして行われた。2022年10月の事故発生から3年後のことだ。TFによる監査で、事故の発生および対応に関連して新たに判明したことはない。そうした状況で事故原因として「大統領室移転」を挙げた。野党からは「ハロウィン事故を尹錫悦政権の責任として追及しようとしている」との声が漏れた。

 TFは大統領室が青瓦台から竜山の旧国防部庁舎に移転した直後の2022年5月から同年10月までの間に竜山警察署管内で開かれた集会・デモは921件で、前年同期(34件)の26倍に増えたと指摘した。TFは竜山署が20、21年には立てた梨泰院での「管理警備計画」を22年には立てず、ソウル警察庁と竜山署の指揮部が大統領室近隣の警備を優先し、警備人員を運用していた点にも言及した。

 事故発生から4日後の22年11月2日から警察の501人規模による特別捜査本部が捜査を開始し、同年末から事故に責任がある公務員が相次いで起訴され裁判が進んでいる。昨年の一審で竜山署長らが有罪、ソウル警察庁長と龍山区庁長らは無罪になるなど刑事責任を巡る裁判所の判断が示され始めた。ただ、一審判決は大統領室移転を事故の主な原因とは認定していない。

 TFとは別に昨年から事故の監査作業を進めた監査院は同時に発表した監査報告書で主催者がいないイベントには管理マニュアルがなく、関係機関が動かなかった「構造的脆弱性」が問題だったと分析した。事故の2週間前に同じ場所で開かれた「地球村祭り」には主催者がおり、竜山区庁が計画を審議し、密集予防措置が取られたという。

 監査院は政府が2014年のセウォル号事故などの大規模な事故を経験し、「災害には迅速な初動対応が欠かせない」とし、基礎自治体の権限と責任を強化したものの、人材面などの裏付けがなかった点も問題視した。監査院は、228の基礎自治体のうち98の自治体(43%)が人手不足で24時間対応の状況室がなく、状況室があっても全職員が交代で当直を務める方式であるため、実際に災害が発生した時、専門的な対応を取れずにいると指摘した。政府が新たな種類の災害に対処するためのマニュアルを追加したところ、2023年にマニュアルの数が8837件に達し、担当者が一度でも読むことができない状況になっている点も問題だとした。

 2024年に与野党合意で梨泰院特別法が制定され特別調査委員会が事故の真相を究明しているが、共に民主党は梨泰院特別法改正を推進している。同党の鄭清来(チョン・チョンレ)代表は15日、遺族に会い「真相究明、責任者の処罰、被害者ケアなど解決できていない課題が多く残っている。二次加害防止策を盛り込んだ梨泰院特別法を検討する」と述べた。

キム・ギョンピル記者

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