野球
一人でWS3勝「鉄腕」山本由伸、MLBに新たな伝説
2日(韓国時間)、カナダ・トロントのロジャーズ・センター。トロント・ブルージェイズとロサンゼルス・ドジャースによる2025米大リーグ(MLB)ワールドシリーズ第7戦は延長11回裏に入った。ドジャースのマウンドには前日の第6戦に先発して勝ち投手になった山本由伸(27)が立っていた。4-4で迎えた9回裏一死一・二塁、サヨナラ負けのピンチに立たされた山本は、落ち着いた投球で無失点に抑えてチームを救い、続く10回裏を三者凡退に切って落とした後、3回目のイニングに臨んだ。
【写真】韓国で記者会見に臨んだ山本由伸(2024年)
11回表、ウィル・スミスのソロ本塁打により5-4とリードしていた場面で、山本は一死一・三塁のピンチに再び追い込まれた。ブルージェイズの本拠地ということで、ホームのファンたちの熱狂的な応援はスタジアムを揺るがすほどだったが、山本は動揺しなかった。アレハンドロ・カークを相手に時速148キロメートルのスプリッターを投げてゴロを誘い、遊撃手ムーキー・ベッツがこれを併殺につなげてゲームセットとなった。その瞬間、普段めったに感情を表に出さない山本も両腕を上げて雄たけびを上げた。
ドジャースは第7戦に5-4で勝利し、ワールドシリーズ2連覇を達成した。ワールドシリーズ連覇は1998年から2000年にかけて3年連続で同シリーズを制したニューヨーク・ヤンキース以来25年ぶりだ。第2戦の完投勝利(9イニング1失点)、第6戦の6イニング1失点での勝利に続き、崖っぷちの第7戦に救援登板し、2と3分の2イニングを無失点に抑えて3勝目を挙げた山本は、ワールドシリーズ最優秀選手(MVP)の栄光を手にした。同一ワールドシリーズで3勝を挙げたのは2001年のランディ・ジョンソン=当時アリゾナ・ダイヤモンドバックス=以来24年ぶりのことだ。また、山本はアウエーで3勝を挙げた初の投手となった。ワールドシリーズでは、1984年の韓国シリーズの崔東源(チェ・ドンウォン)=ロッテ・ジャイアンツ=のように一人で4勝を挙げた投手はいない。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は表彰式で「山本はゴート(GOAT=Greatest Of All Time=史上最高の選手)だ!」と叫んだ。
岡山県出身の山本は、プロの舞台で花開いた投手だ。身長178センチメートルと投手にしては小柄な体格のため、一時は社会人チームに入るかどうかで悩んだが、オリックス・バファローズのスカウトによる粘り強い説得の末に2017シーズンのドラフト会議で4位指名を受け、同球団に入団した。徐々に才能を開花させた山本は2021シーズンから3年連続で日本版「サイ・ヤング賞」とも言える沢村賞とパ・リーグMVPをさらった。平均154キロメートルの剛速球と高速スプリッター、落差の大きいカーブを武器に2022年にはオリックスを日本シリーズ優勝へと導き、さらに日本代表チームでは2021年の東京オリンピック金メダル、2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では優勝の立役者となった。
ドジャースは2024シーズンを前に、歴代投手最高額の総額3億2500万ドル(当時のレートで約465億円)で山本と12年契約を結んだ。当時は「大リーグ経験が全くない投手に対して高額すぎる」という批判もあったが、山本は今年のポストシーズンで圧倒的な活躍を繰り広げ、「既に全年俸分の価値を証明した」とまで評価されている。特に、ミルウォーキー・ブルワーズとのナ・リーグ優勝決定シリーズ(第2戦)とワールドシリーズ(第2戦)で、共に9イニングを1失点に抑えて完投勝利を挙げ、2001年のカート・シリング以来24年ぶりにポストシーズン2試合連続完投勝利という大記録を打ち立てた。
小柄な山本が剛速球を繰り出すことができる秘訣(ひけつ)は、全身をうまく生かした投球メカニズムにある。山本はプロデビュー後、400グラムのプラスチック製の「やり」を投げながら、やり投げ選手のように体全体を使って力を発散するトレーニングを続けてきた。これに体操やヨガによる柔軟性強化で耐久性も上がった。山本は「ブルペンにいるだけでもチームの役に立つと思い、一応備えていた。気がついたらマウンドにいた。もう無心で、野球少年に戻ったような気持ちで投げた。最高の気分だ」と語った。
ドジャース所属の金慧成(キム・ヘソン)は5-4と逆転した延長11回裏、セカンドの守備に交代で入り、今回のワールドシリーズに初めて出場した。金慧成は金炳賢(キム・ビョンヒョン)以来、ワールドシリーズ優勝リングをはめた2人目の韓国人選手になった。
ペ・ジュンヨン記者