▲写真=UTOIMAGE

 中国がコンテナ1万4000個を運搬できる世界最大の原子力貨物船の詳細な仕様を初めて公開した。この貨物船は、中国造船最大手の中国船舶工業集団(CSSC)傘下の江南造船(上海市)が2023年に建造計画を発表し、開発中だ。原子力貨物船は米国などが1960年代以降に運用した例があるが、高い建造・運営コストと放射能漏れへの懸念から本格的に商用化されることはなかった。この分野に中国が積極的に参入しているのだ。

【概念図】2023年に発表された世界最大規模の原子力貨物船

 香港紙サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)は5日、中国の海運・造船専門誌「船舶」に原子力貨物船に対する詳細が掲載されたと伝えた。それによると、原子力貨物船は水の代わりに塩を冷却材として使うトリウム溶融塩原子炉(TMSR)を採用した。中国の内モンゴル自治区などに豊富に存在するトリウムを大型商船のエネルギー源にしたものだ。冷却水が必要ないため低圧・小型設計で原子炉のサイズと騒音を画期的に小さくした。原子炉内部には放射能漏れを防止するため、放射性物質を直ちに封じ込める汚染防止装置を設けた。同誌は「トリウムの採用は安全性と経済性を同時に考慮した結果だ」とした。

 SCMPは「この貨物船の出力は200メガワットで、米海軍の最新原子力潜水艦『シーウルフ』に使われる原子炉と同じ出力水準」と指摘した。貨物船の原子炉が発生させた熱は発電システムを経て電力に変換される。発電効率は従来の蒸気式原子炉(約33%)より高い45~50%になるという。船舶には非常用ディーゼル発電機も搭載される。

 原子力貨物船は経済性の高い技術ではない。化石燃料を使用する従来の大型コンテナ船に燃料を満タンに入れれば、1カ月以上航海することができ、燃料補給も容易なので、原子力に乗り換える動機は大きくない。ロシアの砕氷コンテナ船「セブモルプト」が事実上唯一現役の原子力推進民間船舶だ。原子力貨物船は初期建造費が一般貨物船の数倍に達し、保険と放射能管理まで考えると、「カネにならないプロジェクト」という評されている。

 それでも中国が開発に参入するのは、物流の転換を狙うと同時に、エネルギー自立と軍事技術を確保するためだという分析が聞かれる。中国が米国をはじめとする西側との海上技術覇権競争を念頭に置いて開発に参入したとの見方もある。韓国のHD現代も米テラパワーと提携し、小型モジュール原子炉(SMR)を搭載した1万5000TEU級貨物船を2030年までに商用化する計画だ。このプロジェクトには国内の原発企業も参加するとの見通しが示されている。

北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員

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