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「尹錫悦を釈放した判事は処罰できる」 与党・共に民主党の動きに専門家ら「違憲」「罪刑法定主義に反する」
韓国与党共に民主党の金容民(キム・ヨンミン)国会議員は2日、ジャーナリスト金於俊(キム・オジュン)氏の番組で尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の内乱事件で一審を担当しているソウル中央地裁の池貴然(チ・グィヨン)部長判事について、「もし池貴淵が一審で尹錫悦をとんでもない論理で釈放するか、無罪を宣告することが確認されれば、(法歪曲罪で)処罰が可能だ」と主張した。民主党は判事・検事と警察が法律を曲解して適用することを処罰する「法歪曲罪」を盛り込む刑法改正案の成立を目指している。法曹界からは「あまりにも危険な発想にもかかわらず、はばかりない」との声が漏れる。
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また、民主党の司法行政タスクフォース(TF)は同日、法院行政処(裁判所行政処)の廃止などを含む裁判所組織法改正案の最終案を公表し、「3日にも提出する」と表明した。民主党は前日、国会法制司法委員会の小委員会で「内乱専担法廷」特別法案と「法歪曲罪」法案を可決した。いずれも法曹界から「違憲の恐れが非常に強い」と指摘を受ける法案だが、民主党は年内に処理するとしている。
民主党司法行政TFが発表した最終案は法院行政処の代わりに司法行政委員会を置き、裁判官人事など裁判所の行政、事務を審議・議決する内容だ。委員は13人で、非裁判官が最大9人参加する。委員長は大法院長ではなく、全国裁判官代表会議の推薦を受けた非裁判官委員の一人が務める。
ただ、TFは草案段階とは異なり最終案に大法院長による拒否権を追加した。裁判官人事に対する司法行政委の議決に対し、大法院長は異議があれば、司法行政委に再審議、再議決を求めることができるようにする内容だ。与党関係者は「大法院長が持つ人事権の侵害などの違憲の恐れを解消するためだ」と説明した。
しかし、法学界は「司法行政委の設置自体が憲法違反」と指摘する。韓国は憲法で司法権を裁判所に置き、大法院が裁判官の人事を決定すると定めている。李仁皓(イ・インホ)中央大教授は「憲法に真っ向から背く司法行政委を法改正で設置するというのは違憲であり、民主党による司法権簒奪(さんだつ)の試みだ」と述べた。
司法行政委は、フランス、スペイン、イタリアなどで司法行政を担当する司法評議会をモデルにしている。ただ、これらの国々は民主党式の司法行政委とは異なり、司法評議会を憲法に明示された「憲法機関」として設置している。
その上、フランスは裁判官、イタリアは裁判官・検事が本人の同意なしに昇進、異動されないという「不動性の原則」も憲法に明示している。政治権力によって裁判官などが不当な人事の対象とならないように配慮したものだ。キム・ジョンミン弁護士は「民主党はそうした司法府独立保障の仕組みも設けていない」とし、「裁判官人事を掌握しようとするものだと」と評した。
法曹界からは「内乱専担法廷」に対しても「違憲的発想」だという指摘が出ている。この法案には憲法裁判所、法務部、判事会議が推薦した人々で構成する推薦委員会がソウル中央地裁、ソウル高裁の内乱事件法廷と令状専門担当判事を推薦し、大法院長が任命することなどが盛り込まれている。
これについて、建国大の黄道洙(ファン・ドス)教授は「憲法上、司法権には裁判所の裁判の一環である『事件割り当て』も含まれる」とし、「決して立法府が関与することではない」と断じた。法院行政処も国会法制司法委員会に「特定事件について、一定の方向に判決が下されることを希望し、特定の傾向があるとみられる特定の裁判官に事件が割り当てられるように影響を及ぼした場合、憲法上、国民が公正に裁判を受ける権利を侵害することになる」との意見を提出した。
高麗大法学専門大学院の張永洙(チャン・ヨンス)教授は「15~17世紀の英国の星室庁(スター・チェンバー)による弊害以後、特別裁判は行わないというのが世界的傾向だ」として「内乱専担法廷は『特定事件』だけを念頭に置いた事実上違憲的な特別法廷だ」とも話した。ドイツと日本は最初から特別裁判所の設置禁止を憲法に定めている。
韓国の場合、憲法上特別裁判所は軍事裁判所だけを置くとしている。法律専門家は「1961年の軍事政権による革命裁判所でさえ当時の憲法に形式上の根拠があった」と話した。国民の力は「ナチスの特別裁判所のような発想」だと批判した。
民主党が設けようとしている法歪曲罪も違憲だとの指摘が支配的だ。法院行政処をはじめ、現政権の法務部、警察も国会法制司法委に「判事、検事、警察に対する告訴、告発が乱発されるだろう」と反対意見を提出したとされる。黄道洙教授は「誰が法の歪曲を判断するのか。罪刑法定主義、明確性の原則に完全に反する」と述べた。
キム・ジョンファン記者、オ・ユジン記者