コラム
「日本を追い越した」と自画自賛する韓国、愛国過剰を警戒せよ【東京支局長コラム】
日本で今、最もクールな商品は、13万6400円の黒革のトートバッグだ。145年前に創業した浜野皮革工芸の製品で、長野県御代田町で職人が手作りしている。あまりに人気が出たため注文してから10カ月待たねばならない。日本の女性首脳、高市早苗首相が愛用しているいわゆる「早苗バッグ」だ。日本の女性たちが、支持率70-80%という非常に人気の高い政治家の趣向をまねているというわけだ。
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ところが、このバッグの購入方法に驚いた。年収1000万円台の知人は、記者と話している最中にスマートフォンを取り出し、早苗バッグを購入して「実際にはタダみたいなもの」と言ったのだ。その秘密は「ふるさと納税」にある。自分の居住地ではなく、生まれ故郷や他の自治体を指定して住民税を納め、返礼品を受け取るという制度だ。知人は東京に納めるはずの税金(45万5000円)を御代田町に納め、返礼品として「早苗バッグ」を注文したというわけだ。
ふるさと納税は、年間1000万人以上の日本人が1兆2000億円以上の税金を地方に還流させている地方創生の成功例だ。地方の没落が深刻な韓国でも、この仕組みをベンチマーキングした故郷愛寄付制があるが、その規模は年間2000億ウォン(約210億円)程度にとどまっている。
一時期「日本の成功例は10年後の韓国の成功例になる」という言葉が定説のようになっていた。しかし、ふるさと納税(2008年開始)と故郷愛寄付制(2023年開始)は例外のようだ。何がこの差を生んだのか。約20年前、日本の三洋電機のエンジニアに「サムスン電子の工場は三洋の工場についてトイレの位置まで研究し、従業員の動線を最適化した。私たちはそのとき笑っていたが、サムスンは偉大な企業になった。日本に追いついたのは偶然ではなかった」と言われたことがある。私たちはそのくらい必死で日本の成功モデルを学習したのだ。
ところが今はどうだろうか。ふるさと納税と故郷愛寄付制は、コンセプトが似ているだけで、実際の中身は全く違う。日本の返礼品はコメやリンゴなどの特産品はもちろんのこと、ゴルフ用距離計測器や納骨堂の埋葬権など、ありとあらゆるものがそろっている。税金の控除額についても、本人の収入さえ分かれば「経済的に損をしない寄付額」を簡単に知ることができる。返礼品が韓国のりや宿泊券くらいしかなく、控除方式が複雑な韓国とは違うのだ。
いつの頃からか、韓国社会には「日本を追い越した」という自画自賛の愛国ムードが蔓延するようになった。ノーベル賞の受賞者を33回(原文ママ)輩出し、建築のプリツカー賞では世界最多の受賞者数を誇る。日本の経済規模(国内総生産、GDP)は韓国の2.7倍で、対外純資産は3.5倍も多い。東京の街の路上にはごみがほとんど見当たらないし、地下鉄での通話を控える市民意識にも定評がある。
仮に日本が韓国よりも劣っているとしても、それは重要なことだろうか。学ぶべき点があるならばそれを探り出し、適当にまねるのではなく徹底的に学んで身に着けるべきではないだろうか。かつてのサムスンのように、トイレの動線まで綿密に研究して改善しようとした学びの姿勢は、どこへ行ってしまったのか。
成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長