国際総合
交通カメラまでハッキング…イスラエル情報機関はハメネイ師の動線を全てリアルタイムで監視していた
「われわれは(イランの首都)テヘランをエルサレムのように隅々まで知っていた」
2月28日、米国とイスラエルが共同軍事作戦を行ってイランの最高指導者ハメネイ師を除去した後、イスラエルのある情報当局者はフィナンシャル・タイムズ紙に対してこのように語った。米中央情報局(CIA)の情報だけでなく、イスラエルの対外情報機関「モサド」が数十年かけて構築してきた巨大な「ヒューミント」(人的情報)と先端サイバー戦能力を通してイラン首脳部の一挙手一投足を分析したことが、鉄壁の警護を受けていた最高指導者ハメネイ師を除去する上で決定的な役割を果たしたのだ。ハメネイ師が死亡した直後、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と米国のドナルド・トランプ大統領は、イラン当局が収容した遺体の写真まで報告を受けたという。
【写真】イスラエルのサイバー情報部隊「8200部隊」
■ハメネイ師の動線をリアルタイムで監視
3月2日付のニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、モサドとCIAはハメネイ師が2月28日午前、執務室にいる時間と、そのとき同席する人物を正確に把握していた。当初、米国の攻撃が迫る中で、ハメネイ師は地下にある秘密の隠れ家に移動しているという見方があったが、実際は正反対だった。
イスラエルと米国がイラン首脳部の動線を直ちに捕捉するに当たり、長期間、苦労して構築してきた現地情報網が大きな役割を果たした。英ガーディアン紙によると、モサドはおよそ20年前からイラン内部の現地情報エージェントを募集してきたという。これを基に、モサドとCIAはハメネイ師の居住地や側近、隠れ家など一挙手一投足を監視した。匿名の元CIAエージェントは、ガーディアン紙に「高官クラスの目標を追跡するときは、食べ物をどこで調達し、ごみをどのように処理するかなど、全ての情報のパズルをつなぎ合わせる」と語った。
フィナンシャル・タイムズ紙は「イスラエルはテヘランの交通カメラを大挙ハッキングし、ハメネイ師の執務室に近い通りの警護要員やドライバーが出勤する動線をリアルタイムで把握した」と伝えた。とりわけ、特定の角度のカメラ1台を通して警護員の駐車位置を分析し、アルゴリズムを活用して警護員たちの住所や勤務時間、護衛対象など詳細を構築したという。イスラエルのある情報当局者は、同紙に「テヘランを、子ども時代を過ごした町のように完璧に把握していれば、小さな異変の兆しも当然目に留まる」と語った。
またイスラエルは、執務室近くの通りにある12の移動通信基地局をかく乱し、ハメネイ師の警護チームが空襲の警告をきちんと受領できないようにするなど、事実上無防備な状態にした。
■圧倒的な対イラン情報能力を誇示
イスラエルは、モサドとエリートエンジニアを中心とするサイバー情報部隊「8200部隊」などを筆頭に、イランの政権要人を狙った暗殺作戦を繰り広げてきた。昨年6月にイスラエルがイラン全域の核・軍事施設を大々的に空襲した、いわゆる「ライジング・ライオン作戦」のときも、革命防衛隊(IRGC)司令官や核科学者6人など、最高位クラスの人物を除去した。24年7月には、マスード・ペゼシュキアン大統領の就任式に招待されてテヘランを訪れた、ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤ氏を暗殺した。当時、カタールに身を隠していたハニヤ氏がテヘランを訪れるという情報を入手し、2カ月前に宿舎に爆弾を設置して遠隔操作で起爆したといわれている。
さらに2018年、モサドがテヘランの秘密倉庫から核機密文書を丸ごと奪取した事件は、イスラエルの圧倒的な対イラン情報能力を示す事例だと評されている。当時、モサドのエージェントおよそ20人はテヘランの商業地区のある倉庫に潜入し、0.5トン分もある核計画資料を奪取した。イスラエル側はこの作戦のために、1年にわたり警備員の勤務形態を監視し、作戦計画を立て、内部関係者の助けを受けてどの金庫に重要情報が収められているかを把握したという。モサドが盗み出した資料の中には、地下核実験が可能な場所、初期的な核兵器5基の開発計画などが含まれていた。ネタニヤフ首相はこの資料の一部を公開して、イランが15年の核交渉妥結後も核兵器を開発してきたと主張し、この事件はその後、トランプ大統領のイラン核合意離脱決定につながった。
合意破棄の後、イランが核兵器開発に再び拍車をかけた2020年、テヘラン近郊で「イランの核の父」と呼ばれる核科学者のモフセン・ファフリザーデー氏が暗殺された。ファフリザーデー氏は乗用車を運転していたとき、近くに止めてあったピックアップトラックから機関銃で撃たれて死亡した。モサドがファフリザーデー氏の動線を把握し、顔面認識で目標を識別するAI(人工知能)機関銃をあらかじめトラックに設置しておいて、遠隔で遂行した作戦だといわれる。
ニューヨーク=尹柱憲(ユン・ジュホン)特派員、キム・ジウォン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版