韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が2024年12月3日の非常戒厳を正当化するために「平壌無人機潜入作戦」を指示したとして起訴された事件で、ソウル中央地裁は12日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領と金竜顕(キム・ヨンヒョン)元国防部長官の一般利敵罪を認定し、いずれも懲役30年の判決を言い渡した。

【表】「平壌無人機潜入作戦」一般利敵事件の一審判決

 同地裁は「平壌への無人機投入は汚物風船に対抗する軍事作戦ではなく、非常戒厳の名分をつくるためのものだった」と判断した。非常戒厳が一、二審で国憲紊乱(びんらん)を目的とした内乱と認定された後、尹前大統領が非常戒厳を敷く手段として国家安全保障まで利用したとの判断が下された格好だ。同地裁は「尹前大統領は戒厳令宣言の要件である『非常事態』を自らつくり出そうとした。韓国の軍事力を私的な目的に使ったことになる」と指摘した。

■「無人機は北の汚物風船への対応ではない」

 同地裁は24年10月に行われた韓国軍の平壌無人機投入作戦について、北朝鮮の汚物風船飛ばしに対応する正当な軍事作戦だという尹前大統領の主張を受け入れなかった。同地裁はその根拠として、北朝鮮が汚物風船を飛ばさなかった時期にも、金竜顕元国防部長官が引き続き無人機の投入を指示し、合同参謀本部が反対意向を示したにもかかわらず、作戦を強行した点を挙げた。裁判所は「無人機作戦の真の目的は非常戒厳だった」と述べた。北の挑発を誘発し、戒厳発令の法的要件である「戦時・事変または国家非常事態」を引き起こすために無人機を侵入させたとの判断だ。

 同地裁は判断の根拠として、内乱罪を巡る特別検察官が提出した呂寅兄(ヨ・インヒョン)元国軍防諜司令官のメモを挙げた。呂元司令官が2024年10月に携帯電話に書き込み、削除したメモには「不安定な状況をつくり出すか、またはつくられた機会をつかむべきだ」「最終的な状態は低高度ドローンによる紛争の常態化」「敵の行動が先」などと記されていた。

 民間人の身分で金竜顕元長官と戒厳を共謀したとされたノ・サンウォン元情報司令官が24年11月9日、情報司令部の現役幹部らと会い、「汚物風船の挑発に対応すれば、戒厳のような状況が発生する可能性がある」「そうなれば君たちは選挙管理委員会に行き、任務を遂行しなければならない」と発言したことも、裁判所が無人機作戦を戒厳宣言と関連づける判断の根拠となった。

 しかし、ある刑事専門の弁護士は「尹前大統領が戒厳令の発令条件を整えるために無人機作戦を指示または承認したことを裏付ける明白な証拠と見るには無理はあるように思える」と述べた。それにもかかわらず、裁判所は尹前大統領が北朝鮮による挑発を誘発し、非常戒厳の名分と正当性を確保しようとしたという特別検察官の論理をそのまま受け入れたとの見方だ。

■「韓国軍の利益が侵害された」

 刑法上の一般利敵罪は、韓国の軍事上の利益を害したり、敵国に軍事上の利益を与えたりする犯罪だ。これに関連し、同地裁は三つの側面から無人機の侵入が韓国軍の利益を侵害したと認めた。裁判所はまず、無人機作戦によって軍と国民に人命・財産の被害を与える可能性のある南北の軍事的衝突が生じる危険があったと判断した。また、「国家の安全保障とは無関係な目的で軍事力を使用し、緊急時に投入されるべき軍事力の活用を妨害した」とも指摘した。さらに、同地裁は「無人機が墜落したことで、韓国軍の軍事機密と戦力が北朝鮮に漏れ、今後の作戦遂行が困難になり、北朝鮮の態勢強化を招いた」とした。

 これについて、元部長判事の弁護士は「特別検察官は無人機投入作戦によって生じた韓国軍の危険や被害の程度を明確に特定できておらず、この作戦を戒厳令と結びつける直接的な証拠はないのでないか」と述べた。

■戒厳の決断時期、判断分かれる

 尹前大統領を内乱首謀者とする事件の一審を担当したソウル中央地裁は今年2月の判決を通じ、尹前大統領が戒厳令の発令を決意した時期を24年12月1日ごろと判断した。実際の発令の2日前のことだ。同地裁は「尹前大統領が長期間にわたって決心を固めて戒厳令を発令したと見るには、準備があまりにも不十分だ」と理由を挙げた。

 しかし、今回の判決では、戒厳準備が24年9月から始まったと判断した。判決は「尹前大統領が24年3月から11月にかけ、軍の指導部との会食の席上、『非常大権』や『非常措置』などに言及し、同年9月から金竜顕元長官がノ・サンウォン元司令官と戒厳の準備に動いた」と指摘した。同年10月に実施された無人機投入作戦も、その延長線上にあるとみた。

キム・ウンギョン記者、オ・ユジン記者

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