青い海に緑の山が浮かんでいることで知られる全羅南道莞島郡の青山島。今年はすでに34万人以上の観光客が訪れている。莞島郡はあわびの産地としても有名だ。きれいな海でわかめと昆布を餌に育った莞島郡のあわびは、韓国全体のあわび生産量の80%を占める。莞島産あわびは魚介類の中でも特に健康に良いことで知られており、年間の漁獲量も3700億ウォン(約400億円)と地域経済を支えている。
莞島郡のキャッチフレー..
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青い海に緑の山が浮かんでいることで知られる全羅南道莞島郡の青山島。今年はすでに34万人以上の観光客が訪れている。莞島郡はあわびの産地としても有名だ。きれいな海でわかめと昆布を餌に育った莞島郡のあわびは、韓国全体のあわび生産量の80%を占める。莞島産あわびは魚介類の中でも特に健康に良いことで知られており、年間の漁獲量も3700億ウォン(約400億円)と地域経済を支えている。
莞島郡のキャッチフレーズは「健康の島、莞島」だ。これは莞島郡が持つ「きれいで澄んだ海と島」という自然の恵み、さらにはその価値を前面に打ち出すことを通じて地域の特性と特産品を宣伝し、消費を促す効果も発揮している。これを最初に考案し、広めてきた前任の郡守(郡の首長)はもちろんだが、現在の郡守がこれをそのまま引き継いだこともあり、このキャッチフレーズはすでに8年にわたり使用され続けている。優れたキャッチフレーズが郡守の交代後もずっと受け継がれ、地域にとって大きなプラスになっているケースといえるだろう。
しかし全羅南道の全ての地域が同じように成功しているわけではない。山間のある自治体は地元の特性を生かそうと「自然の中の美しい里」というキャッチフレーズを採用したが、それが2年後には「22世紀の約束の地、清浄首都」に変わった。これには「100年後を見据える」という意味合いが込められているそうだ。ところがこれを採用した首長が辞任すると、後任の首長は「美しく澄んだわたしの里」へと再びキャッチフレーズを変更した。2代目のキャッチフレーズもわずか2年で消え去ったのだ。一方でこれら三つのキャッチフレーズには特に際だった違いも感じられず、他の地域で使ってもそのまま通用しそうなものばかりだ。そこには「前任者との違いを出したい」という首長の意図しか感じられない。
さらに別のある地域では「治療」を意味する「セラピー」という言葉を郡の名称の前に置き、これをこの首長の任期中、8カ月にわたり使用したが、今では放置されている。後任の首長たちがセラピーとは関係のない特性を打ち出しているからだ。この自治体のある職員は「キャッチフレーズに数億ウォン(数千万円)単位の予算を使ったため、簡単に廃棄もできないから放置しているが、だからといって新しいキャッチフレーズを決めるのも簡単なことではない」と話した。
広域自治体か基礎自治体かに関係なく、どこの自治体も首長が交代するたびにキャッチフレーズが変わるパターンが繰り返されており、一つのキャッチフレーズがずっと使われ続けるケースを見つけることの方が逆に難しいほどだ。近隣の市や郡の政策をパクってはこれを「ベンチマーキング」と呼び、差別化に考えも及ばないような自治体はキャッチフレーズを決めるときもパクることしか考えなかった。そのため自治体のキャッチフレーズはどこもその時に流行している言葉を使い、形だけをそれらしくしただけのいわば展示用ばかりだ。これは全羅南道だけでなく、全国に共通する問題だ。
そのような中、つい先日ソウル市が「アイ・ソウル・ユー(I. SEOUL. U)」という新キャッチフレーズを発表したことを受け、激しい議論が巻き起こっている。上記の莞島郡の事例から分かるように、地域のスローガンを示すキャッチフレーズはその地域の特性や産物など、いわば強みを前面に出すものでなければならない。つまり確かなメッセージを短い言葉に集約した「凝縮性」、なおかつ他の地域との違いを際立たせる「差別性」、さらに長く使われて全国に広めることができる「持続性」が必要で、これらが成功の鍵になるのは言うまでもない。「I. SEOUL. U」をめぐる議論はこのことをあらためて示唆しているのではないか。
湖南取材本部=権景顔(クォン・ギョンアン)部長
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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