KAIの飛行現場に行ってみる-離着陸・方向転換など総合テスト
ホバリングは人間より優秀…監視偵察・貨物輸送などに活用可能
米国・フランスではエアタクシーとして開発中…韓国の技術はまだ「よちよち歩き」レベル
9月24日午前10時、全羅南道高興にある韓国航空宇宙研究院航空センター。1機のヘリが空中へと浮き上がった。外見は2人乗りのレジャー用ヘリに似ていたが、このヘリはガラス窓はもちろん操縦席もない無人ヘリ..
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KAIの飛行現場に行ってみる-離着陸・方向転換など総合テスト
ホバリングは人間より優秀…監視偵察・貨物輸送などに活用可能
米国・フランスではエアタクシーとして開発中…韓国の技術はまだ「よちよち歩き」レベル
9月24日午前10時、全羅南道高興にある韓国航空宇宙研究院航空センター。1機のヘリが空中へと浮き上がった。外見は2人乗りのレジャー用ヘリに似ていたが、このヘリはガラス窓はもちろん操縦席もない無人ヘリだ。地上3メートルまで上昇して60メートルの距離を飛んだ後、元の場所に戻って着陸した。韓国国産の民間無人ヘリが初飛行に成功した瞬間だ。
このヘリは、韓国航空宇宙産業(KAI)が米国から購入した2人乗りヘリに自動飛行制御装置や航空電子システムなどを積み、無人垂直離着陸機(VTOL)に改造したものだ。開発に加わったチョン・ソングン無人機事業チーム部長は「開発に着手してからおよそ2年で最初の一歩を踏み出した」として「軍用無人偵察機『ソンゴルメ(ハヤブサ)』などを開発する中で蓄積した技術とノウハウを全て注ぎ込んだ結果」と語った。
■無人ヘリ、人間より巧みな飛行
KAIが作った無人ヘリ「NI600VT」はこの日、30分間飛行した。これまで離陸、着陸、静止飛行(ホバリング。空中停止)、方向転換など内部テストを進めたことはあったが、全ての技能を総合的にテストしたのは今回が初めて。無人機をメディアに公開したのも初めてだ。
無人ヘリは離陸後、正面を向いた姿勢で左右の方向へ飛行し、右側へ90度方向を変えた後に直進飛行、180度方向を変えた後に直進飛行という基本的な飛行性能で全て合格点を取った。初飛行を見守った研究陣およそ20人は安堵(あんど)の息をついた。イ・テホ無人機体系チーム長は「初飛行する間、風の向きや勢いがひんぱんに変わり、はらはらする瞬間もあったが、幸いにも任務を完遂した」として「テストするほど性能が良くなる」と語った。この日、無人ヘリの方向転換の誤差範囲は、たったのプラスマイナス2度でしかなかった。ベテランパイロットでも難しいレベルだ。イ・チーム長は「ホバリングをするとき、風が吹いているにもかかわらず定められた位置を揺らぐことなく守る性能は、既に人の能力を上回った」と語った。
無人ヘリは地上にあるコントロール室で航路や方向、速度などを入力してやれば、そのまま自律飛行できる。コントロール室を中心に最大で半径180キロの範囲を、最長6時間の連続飛行が可能だ。カン・インウォン首席研究員は「今回は国土交通部(省に相当)から地上3メートル、半径60メートルに制限して飛行許可が出たので、、初飛行をこの範囲だけで遂行した」として「飛行領域を広げてもいいほどに安定的な性能を立証した」と語った。
■米国・フランス・日本などでも無人ヘリ開発
日本や米国など先進国に比べると、韓国の無人ヘリ技術はまだ「よちよち歩き」の段階だ。米国は2009年から海軍で偵察用無人ヘリを運用しており、民間航空会社のボーイングも今年1月に無人垂直離着陸機の初飛行に成功した。四つのローターを活用する方式で、無人エアタクシーとして開発する予定だ。日本は輸送用機器製造メーカーのヤマハ発動機が1987年から、世界初の農業用無人ヘリを製造・販売している。2024年にパリ五輪を開催するフランスも、「エアタクシー」を開発している。パリでは、旅行客がシャルル・ド・ゴール空港からパリ市内までバスや鉄道を利用して1時間以上移動しなければならない。この問題を解決するため、パリ空港公団(ADP)、エアバス、パリ交通公団(RATP)が協力して垂直離着陸の可能なエアタクシーを開発しているのだ。モルガン・スタンレーは、世界のエアタクシー市場規模が2040年には1兆5000億ドル(現在のレートで約162兆円)に達すると見込んでいる。
KAIは、韓国では山林庁・国立公園管理公団など監視用ヘリが必要なところで無人ヘリが導入されるものとみている。キム・ギジュン先任研究員は「山岳・海上の監視偵察のほかにも行方不明者の捜索、貨物輸送など各種の分野で使える」と語った。海外のように農業用やエアタクシーなどにもこの技術は活用できる。ユン・ジョンホKAI常務は「今年までに地上コントロール施設を通して飛行性能検証を終え、来年からは艦上でも自動で発着できる水準まで技術を引き上げていく計画」と語った。
許喜寧(ホ・ヒヨル)韓国航空大学教授は「完全自律飛行をしようと思ったら、飛行中の通信ミスや機械の誤作動が発生した場合に人のいない場所へ緊急着陸するなど、安全性が検証されなければならない」として「この技術が内需用にとどまらずグローバル市場にも進出できるように、体系的な事業戦略も立てなければならない」と語った。
高興(全南)=キム・ガンハン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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