▲警察が導入したドローン。韓国の中小企業が開発したもので、価格は5000万ウォン(約460万円)ほど。/警察庁
今年8月に蔚山市内で50代の男性が失踪したとの通報が警察に入った。失踪者がいると推定される場所は蔚山工業団地周辺の山の中。蔚山警察庁情報化装備課のチャ・デソン警査(44)とイ・テウク行政官(37)が現場に向かった。チャ警査がドローンを直接操縦し、すぐ横にいたイ行政官はドローンからリアルタイムで送られてくる映像を見ながら、チャ警査にドローンを飛ばす高度や位置をその場で伝えた。チャ警査は操縦士、イ行..
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▲警察が導入したドローン。韓国の中小企業が開発したもので、価格は5000万ウォン(約460万円)ほど。/警察庁
今年8月に蔚山市内で50代の男性が失踪したとの通報が警察に入った。失踪者がいると推定される場所は蔚山工業団地周辺の山の中。蔚山警察庁情報化装備課のチャ・デソン警査(44)とイ・テウク行政官(37)が現場に向かった。チャ警査がドローンを直接操縦し、すぐ横にいたイ行政官はドローンからリアルタイムで送られてくる映像を見ながら、チャ警査にドローンを飛ばす高度や位置をその場で伝えた。チャ警査は操縦士、イ行政官は副操縦士の役割を担当したのだ。捜索開始からおよそ3時間後に失踪者が見つかった。発見したのはドローンではなく警察の捜索隊だが、ドローンが広い範囲を確認したことで、捜索の時間をかなり減らすことができた。
警察は今年6月17日、行方不明者の捜索などのため正式にドローンを導入した。現在、警察が保有するドローンは38台。うち34台は全国の地方警察庁17カ所に2台ずつ配備されている。ドローン1台の価格はおよそ5000万ウォン(約460万円)で、全て韓国の中小企業の製品だ。1回の充電で最長35分ほど飛行でき、航空安全法によって地上から最高150メートルの高さまで飛ぶことができる。警察はドローンを活用するため専門の人材(行政官)を採用した。全ての地方警察庁に二人の専門家を配置するため、今後11人ほどを追加で採用する予定だ。
ドローンが現場に投入されたことで、一部の警察官は直接ドローンについて学び始めた。蔚山警察庁のチャ・デソン警査は2017年にドローンについて勉強を始め、翌年にはドローンに関する資格も取得した。チャ警査は17年、蔚山市内の西南湖水公園にイノシシがいるとの通報を受け捜索を行った際「消防官と警察官二十数人が2-3時間かけて苦労する様子を見ながら思った。もし空中にドローンを飛ばしてイノシシを探すことができれば、捜索もはるかにスムーズにできたはずだ」と考えたという。チャ警査は現在、現場の警察署から蔚山警察庁に派遣され、ドローンの運用を担当している。
警察庁によると、今年6月から8月までに警察がドローンを使用した件数は合計103件だった。そのうち行方不明児童の捜索が41件、自殺の可能性がある人の捜索が36件、災害現場での捜索が26件だった。その中で行方不明となった児童については3人がドローンによって発見された。
ドローンが使用された代表的なケースが今年7月9日、故・朴元淳(パク・ウォンスン)元ソウル市長失踪の通報が入ったときのことだ。当時、警察はソウル警察庁所属のドローン2台を臥竜山などソウル市城北区一帯に飛ばした。このドローン2台はいずれも6回飛行した。朴市長を発見したのは捜索犬だったが、ドローンは捜索時間の短縮に大いに役に立ったと評されている。また今年の夏に江原道春川市の衣岩湖で水害が発生したときも、ドローンが1カ月にわたり現場に投入された。当時、現場では「人口水草島」を固定する作業を行っていた民間企業のゴムボート、春川市環境監視船、警察のパトロール船の3隻の船が転覆した。そのため警察は8月6日から全国の地方警察庁13カ所に配備されていたドローン24台を衣岩湖の水害現場に投入した。最後まで発見できなかった行方不明者1人の捜索が終了した9月6日まで、警察のドローンは合計527回にわたり衣岩湖周辺を捜索した。
課題もある。その最たるものは高圧線近くの捜索だ。警察庁の関係者は「電圧が高い施設の周辺ではセンサーの誤作動が発生する恐れがあり、そうなるとドローンが方向を失いグルグルと回ってしまう」と語る。さらに操縦ミスによるドローンの墜落も問題だ。上記の警察庁関係者によると、操縦が未熟でドローンが墜落した場合、個人として不名誉なことになってしまうという。
現在、警察はドローンを使用する状況を(1)行方不明児童の捜索(2)自殺が疑われる人の発生(3)重大な災害(4)テロ発生-の四つに限定している。単なる犯罪者の追跡やイノシシなどを探す目的だとドローンは使用できないということだ。警察庁ハイテク装備係のパク・ヒョンウ警長は「ドローンを飛ばして撮影していると、一般市民の顔や車両の番号などが収集され、個人情報が保護できなくなる懸念がある」「私生活保護を定めた韓国の憲法第17条に違反する恐れがあることから、用途を限定している」と説明した。
しかしその一方で「日々進化するさまざまな犯罪を防ぐには、ドローンをもっと多く活用すべきだ」との意見もある。先月には釜山のある高層マンション周辺でドローンを飛ばし、窓から住民の性行為の様子を撮影した40代二人が摘発された。警察出身で保守系野党・国民の力の金用判(キム・ヨンパン)議員は「ドローンを使ったさまざまな犯罪が発生している今の状況を考えると、警察としても市民の私生活を侵害しない範囲でドローンを最大限活用すべきだろう」とコメントした。
◆「世界で最も住みやすい国」2020年版発表、韓国17位、日本は?
郭彰烈(クァク・チャンリョル)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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