「え? これ結婚式場なの? 葬儀場なの?」
60代の主婦パクさんは最近、知人の子どもの結婚式に行くたびに驚いている。新郎新婦の友人たちが全員、黒い服を着てくるからだ。黒いパンツにジャンパーという格好でブーケを受け取る人もいるという。
パクさんは「以前は『葬儀ではお金が助けになり、結婚では服が助けになる』と言われた通り、結婚式の時は華やかに着飾っていくのがマナーだった。ところが、最近はマナーの基準..
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「え? これ結婚式場なの? 葬儀場なの?」
60代の主婦パクさんは最近、知人の子どもの結婚式に行くたびに驚いている。新郎新婦の友人たちが全員、黒い服を着てくるからだ。黒いパンツにジャンパーという格好でブーケを受け取る人もいるという。
パクさんは「以前は『葬儀ではお金が助けになり、結婚では服が助けになる』と言われた通り、結婚式の時は華やかに着飾っていくのがマナーだった。ところが、最近はマナーの基準が変わってしまったようだ」と語った。
韓国で結婚式のドレスコードががらりと変わった。「とにかく黒」だ。明るい色の服を着ていけば、一生悪口を言われることも覚悟しなければならない。丈の短いドレスやレース、スパンコールなど派手なデザインも危険だ。ひたすら「ブラック・カジュアル」が正解だそうだ。
その理由は花嫁を引き立てるためだ。結婚式という一世一代のイベントで一番きれいなのは花嫁でなければならず、お姫様のようにありとあらゆる注目が集まらなければならないという。白いウエディングドレスを着た花嫁以外は真っ黒な「碁石コンセプト」の集合写真にならなければいけない。
11月初め、ソウル市内で挙げられたある結婚式に、ガールズグループBLACKPINK(ブラックピンク)のジェニー、ソン・ヘギョ、ビョン・ウソク、キム・ゴウンらトップスターたちが出席したが、全員一様に質素な黒い服だった。海外のファンらは「誰か死んだの?」「韓国の結婚式は変。みんな会社に出勤してきたみたいに見える」と驚いた。
外国では招待客たちも着飾って出席する。たまに花嫁のような白いドレスを着てくる親族や友人が批判を浴びることがあるが、だからといって黒い服で「ドレスダウン」しようとはしない。
米国人英語講師のジェニファーさんは「韓国人の同僚の結婚式に水色のミニドレスを着ていったところ、『なんであんたが着飾っているの?』という目で見られた」と語った。一方、ある韓国人女性は東京都内で挙げられた日本人の友人の結婚式に黒い服を着て行ったが、華やかな服装をしている招待客たちを見て「しまった」と思ったそうだ。
それでも4-5年前までは、知人の結婚式に一生懸命着飾っていく人が多かった。集合写真撮影の時も、華やかな服装の招待客は前列に並び、ムードの盛り上げ役になった。
ところが、最近は結婚費用が高騰し、交際からプロポーズ、結婚、出産に至る過程は貴重な経験となった。その頂点となるイベントの結婚式もムードが一変した。結婚する当人たちが主役になるよう、最高の効果を出さなければならないという強迫観念がひどくなった。猫もしゃくしもホテルで結婚式を挙げ、暗い室内でドラマチックな照明を新郎新婦に当てる写真が流行している。
カメラマンたちは明るい色の服を着た招待客たちを後ろに並ばせ始めた。これが「明るい色の服=迷惑な招待客」という公式を多くの人々の脳裏に植え付けた。あるブライダル写真業者は「花嫁たちが『明るい色の服のゲストは撮影から外してほしい』『ジャケットの中の白いシャツも気になるので写真加工アプリで暗い色に処理してほしい』とあらかじめ要望してくる」と語った。
最近の「迷惑な招待客」ナンバーワンはご祝儀が少ない人や、結婚式に出ないで食事だけをしていく人ではなく、花嫁より目立つくらいきれいな招待客だという。きれいかどうかは主観の問題だが、服の色だけで「花嫁より目立とうとしている」という不純な意図の有無を判断できるとは、魔女裁判も簡単になったものだ。
招待客の「黒コーディネート」をめぐる「苦情のプロ」(あらゆることに過敏に反応して苦情を言う人)たちの相互検閲と対立は想像以上だ。結婚準備に関するネット掲示板や交流サイト(SNS)では、明るい色やリボンのついた服を着て花嫁のそばに立つ招待客に目を付け、「頭がおかしいんじゃないですか?」「自分の結婚式だと思っているようですね」などと非難の声を浴びせている。
さらに、数年前に紫色や黄色の服を着て結婚式に行った有名人が「レジェンド級の迷惑な招待客」として再び俎上(そじょう)に載せられることもある。「このワンピースは迷惑でしょうか?」「ベージュのジャケットを着て行ったのが気にかかっているのですが、遅くても今から花嫁に謝った方がいいですか?」といった「罪の告白」も多い。
韓国では当然とされてきた結婚式における親族側の女性たちの韓服も、「華やかだ」という理由でほとんどなくなり、両家の母親だけが着る傾向になりつつある。目上の親族女性が白いチョゴリ(韓服の上衣)に赤いチマ(韓服のスカート)という服装で出席したとして、花嫁が「私の結婚式を台無しにしようとした」と激怒し、親族の間で大ゲンカになったケースもある。
30代女性のイさんは「友人たちに『私の結婚式の時は、お願いだから華やかな服で来てほしい』と頼んだのに、結局は黒一色になってしまった。他人に何か言われるのではないかと思って、警戒してしまったようだ」と語った。
正しいにしろ間違っているにしろ、他人と同じにしなければ人格攻撃される社会。これほどまでに薄黒く、くすんでしまっている。
鄭始幸(チョン・シヘン)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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