▲グラフィック=宋允慧(ソン・ユンヘ)
中国は西海暫定措置水域(PMZ)に海上固定式の構造物を無断で設置したが、これは中東などで使用後に廃船となった石油ボーリング船だったことが20日までに分かった。中国が廃ボーリング船を短期間で改造し、「養殖場支援施設」と名付けてPMZに設置したものとみられる。専門家は「漁業用以外の施設の設置、支援、開発などの活動が禁じられたPMZに、『漁業関連施設』という口実で事実上の『ミニ人工島』を建設したのだろ..
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▲グラフィック=宋允慧(ソン・ユンヘ)
中国は西海暫定措置水域(PMZ)に海上固定式の構造物を無断で設置したが、これは中東などで使用後に廃船となった石油ボーリング船だったことが20日までに分かった。中国が廃ボーリング船を短期間で改造し、「養殖場支援施設」と名付けてPMZに設置したものとみられる。専門家は「漁業用以外の施設の設置、支援、開発などの活動が禁じられたPMZに、『漁業関連施設』という口実で事実上の『ミニ人工島』を建設したのだろう。これは今後海上の境界に影響を及ぼす恐れがある」と警告した。
【写真】中国が西海の暫定措置水域(PMZ)に設置した海底固定構造物と深藍2号上部の海面上監視施設
本紙が米国の地球観測データアプリ「SkyFi」に依頼し入手した複数の衛星写真を分析したところ、中国の固定式構造物は縦80メートル、横100メートルに達するとみられる。この構造物には「H」と記載されたヘリポートと3本の鉄骨の柱があった。構造物から南東3キロの海上では中国が昨年5月に「新しい養殖場」と主張し設置した八角形の鉄製構造物「深藍2号」も確認された。
韓国海洋科学技術院の海洋調査船「オンヌリ号」が今年2月にPMZの現場を視察した際、深藍1号と深藍2号の他にも新たに固定された構造物を確認し写真に収めた。本紙が与党「国民の力」の厳泰永(オム・テヨン)議員を通じて入手したこの写真を確認したところ、この固定構造物の側面には「Atlantic Amsterdam」という文字が記載されていた。船舶記録を確認した結果、これは1982年にフランスで建造され中東などで石油ボーリング船として使用された後、2016年に廃船となった船舶であることが分かった。中国は14年にベトナムの排他的経済水域(EEZ)にも一方的に石油ボーリング施設を設置し、周辺海域の実行支配権を主張したためベトナムと激しく対立した。中国は南シナ海で石油ボーリング船や人工島などを使って影響力を拡大しているが、それと同じ手口で今後「西海工程」を本格的に進める可能性も浮上している。
■人工島や構造物で西海を少しずつ確保…中国が南シナ海で使ったのと同じ手口
過去3年間に西海暫定措置水域(PMZ)を撮影した複数の衛星写真を分析した結果、中国が設置し新しい養殖場と主張している深藍1号と深藍2号は半潜水式の施設だった。本体が海面上に出たときは衛星写真に撮影されるが、潜水中は見ることができない。潜水地点を移して海面上に出るケースもあった。一方で中国が廃ボーリング船を改造して設置した構造物は2022年10月に北緯35度・東経122度付近に設置され、その後は移動せず同じ位置に固定されている。
今月2日に撮影された最新の衛星写真でも固定された構造物の存在が確認され、その周囲には波を立てながら移動する中国船舶とみられる物体も見えた。中国はこの固定構造物について「養殖場である深藍を管理し、支援する施設」と主張しているという。
衛星写真を拡大したところ、固定構造物の中央にはアンテナ塔とみられる物体が存在し、側面には2隻のボートもあった。構造物は縦80メートル、横100メートル、高さ50メートルで最大100人を収容できる空間も確保されていた。韓国海洋水産部(省に相当)の関係者は20日「この固定構造物は中国が購入し改造する前まで石油ボーリング船だった。古いボーリング船ではあるが、その仕様から収容人数は100人に達する」とした上で「固定構造物はサッカー場ほどの大きさで、小型の人工島と言えるだろう」と説明した。
専門家は「中国は海流に流されない固定構造物を使い海上での支配力を強化してくるだろう」と警告する。この固定構造物に加え、半潜水式の構造物である深藍1号や深藍2号などを使い韓国船舶の航海権、接近権を制限し、この海域を事実上の内海とする意図があるものと考えられる。
中国は習近平・国家主席が2013年に「海洋強国建設」を宣言したが、その後南シナ海をはじめ西海など複数の海域で軍事訓練の回数を増やし、探知機器が搭載された小型の海上構造物を大量に設置している。2021年にはこれらの海域を侵犯した外国船舶に対して武器を使用する権限を法律で定めた「海警法」が発効した。実際に中国は今年2月、韓国の海洋調査船オンヌリ号が中国の構造物を確認する目的で接近した際、警備担当者が凶器を持ってゴムボートに乗り、航路をふさいだため両国の海洋警察船が2時間にわたり対峙(たいじ)する事態も発生した。
中国の構造物が原因で西海の水質が汚染される懸念も浮上している。韓国海洋科学技術院の関係者は「中国の主張通り深藍1号と深藍2号が30万-40万匹のサケを養殖できる養殖場であれば、大量の飼料や抗生物質が投入されるはずだ」「また深藍は直径70メートル、高さ71メートルに達するが、これほどの構造物が海に長時間固定された場合、重金属により海が汚染される恐れもある」と指摘する。そのため今年2月にオンヌリ号は構造物周辺の水質チェックなどを試みたという。
外交安全保障の専門家は「韓中暫定措置水域に複数の人工施設が建設された場合、これらが漁業活動や船舶の通行に影響を及ぼす恐れがあるため、韓中漁業協定違反の恐れが出てくる」と指摘する。国際海洋法裁判所で事務処長を務めた金斗泳(キム・ドゥヨン)氏は「国連海洋法により構造物周辺には半径500メートルの安全地帯を設置できるが、中国が複数の構造物を設置した場合は数十平方キロの安全地帯が設定されるため、韓国船舶が航行できなくなる恐れがある」と警告した。
世宗研究所安保戦略センターの申範澈(シン・ボムチョル)所長は「西海は経済的・軍事的・外交的にも戦略的要衝だ」とした上で「政府は中国による疑わしい活動を事前に阻止し、南シナ海のような紛争地にならないよう積極的に管理を進めていかねばならない」と要求した。
政界でも超党派での対応を求める声が上がっている。国民の力は20日「固定構造物設置疑惑については中国の明確な説明が必要だ」とした上で「中国に対して国際秩序に適合した責任ある行動を求める」「国会次元での解決策を与野党に関係なく進めていくべきだ」などと要求した。最大野党「共に民主党」も声明を出し「中国は無用な紛争を誘発する恐れのある構造物設置を直ちに中止し、韓国政府の調査に協力するよう願う」との考えを表明した。
盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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