▲ソウル市冠岳区のあるオフィステルのタワー式駐車場に貼られた「電気自動車(EV)お断り」の貼り紙/ハン・ヨンウォン記者
「駐車できないとはどういうこと?」「すみません。この際引っ越されてはいかがでしょうか?」
ソウル市中浪区のオフィステル(オフィス兼住宅物件)に住むチョンさん(35)は先日、電気自動車(EV)テスラのモデルYを購入し想定外の事態に直面した。オフィステルのオーナーに駐車場利用について問い合わせたところ、「私のビルにEVは絶対に駐車させません」と言われたのだ。このオフィステルはすぐ横にタワー式駐車場が..
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▲ソウル市冠岳区のあるオフィステルのタワー式駐車場に貼られた「電気自動車(EV)お断り」の貼り紙/ハン・ヨンウォン記者
「駐車できないとはどういうこと?」「すみません。この際引っ越されてはいかがでしょうか?」
ソウル市中浪区のオフィステル(オフィス兼住宅物件)に住むチョンさん(35)は先日、電気自動車(EV)テスラのモデルYを購入し想定外の事態に直面した。オフィステルのオーナーに駐車場利用について問い合わせたところ、「私のビルにEVは絶対に駐車させません」と言われたのだ。このオフィステルはすぐ横にタワー式駐車場が設置されていた。
【グラフィック】韓国のEV登録台数と火災件数の推移
チョンさんは「金を払って生活する場所に駐車できないとはどういうことだ。区庁に訴えるぞ」と抗議したが、オーナーは「EVから火が出て他の車に燃え移ったら責任が取れるのか?」と譲らなかった。そのためチョンさんは自宅から500メートル離れた月決め駐車場を毎月13万ウォン(約1万4000円)払って利用しているという。このオフィステル管理人はEVを所有する住民の抗議に耐えられなくなり今月退職した。
「火災へのリスク」を理由にEVの駐車を禁止する駐車場が増加している。本紙がソウル市瑞草区の江南駅や麻浦区の弘大入り口駅周辺の駐車場45カ所を調べたところ、約90%(40カ所)でEVの駐車を禁止していた。昨年8月に仁川市内の地下駐車場でベンツEVから火災が発生した事故をはじめ、昨年10月に京畿道安城市、今年4月には釜山市など、全国でEV火災が相次いだためだ。EV火災は火の手が一気に上昇し周囲に広がるため、特にタワー式駐車場では大規模火災につながりかねない。そのためこれらの駐車場の多くは入り口に「EVお断り」などの貼り紙が貼られてあった。全国各地で「金を払うと言っているのに、なぜ駐車する権利を奪うのか」と主張するEVドライバーと「火事が起こったら責任を取れるのか」と反論する駐車場管理人が激しく対立している。
「おいおい、EVは駄目だ。駄目!」26日午後3時、ソウル市瑞草区のある商業ビル駐車場に1台のテスラが入ろうとすると、駐車場管理人の70歳男性が大声で叫んだ。窓から顔を出したドライバーは残念そうな顔でUターンして立ち去った。このドライバーは10分ほど周囲の駐車場を探したが、結局駐車できず他へ行ってしまった。
隣の狭い道路には1台のEVが歩道に半分乗り上げた状態で駐車していた。周辺の立体駐車場は全て「EVお断り」のため、駐車場管理人が一時席を外した隙にそっと車を止めていったのだ。歩道前の立体駐車場管理人はため息をつきながら「こんな形で車を置いて、用事を済ませてから戻るドライバーが最近多くなった」と語る。オフィステルやマンションはもちろん、商業ビルや病院などでもEV駐車が断られるため、地下の充電スタンドが利用できないケースも多いという。
江原道江陵市に住むサラリーマンのキムさん(28)は今年2月にEVを契約し、引き渡しを待っていたところ、「EVはマンション地下駐車場利用禁止」との連絡を受けた。このマンションは地下にあったEV充電スタンドも「火災のリスクが高い」との理由であえて地上に移したという。大邱広域市東区の705世帯が住むマンションでは、一部の住民が地下駐車場の入り口でEVが入らないよう監視を続けており、住民の間で対立が起こっているという。
駐車場管理人らは「安全対策のためやむを得ない」と語る。麻浦区のあるホテルの地下駐車場管理人(62)は「昨年8月の仁川でのEV事故後、ホテルの会議でEVの駐車禁止が決まった」「EVドライバーがほぼ毎日抗議してくるので頭が痛い」と語る。江南駅近くの駐車場で6年前から管理人を続けている40代の男性は「ここには1日150台以上が駐車するが、高級車が多いので火災が発生すれば補償額がとんでもないことになる」と述べた。
EV普及を後押しする韓国政府の政策を理由にEVを購入したドライバーらは戸惑いを隠せない。韓国政府は昨年1月、EVなどを購入する満19-34歳の若い世代に20%の補助金を出し、高速道路通行料金減免措置を2027年まで延長した。ソウル市江南区に住むキムさん(59)は「江南駅周辺ではEVが利用できる駐車場はほぼないので鶏肋(けいろく、役には立たないが捨てるには惜しい)になった」「最近はEVに乗らず公共交通機関を使って出勤することも多い」と語る。
国土交通部(省に相当)の関係者は「法的には駐車場の側が『正当な理由』なしに特定車両の駐車を拒否することはできない」「火災のリスクがあるという理由だけでEVを駐車させないのは問題になる可能性がある」とコメントした。大林大学のキム・ピルス教授は「韓国では都心の駐車場が大きく不足しているのでEV普及を後押しするだけでは駄目だ」「政府が安全な充電スタンドを拡充し、駐車スペースを確保できるよう対策を進めねばならない」と指摘した。
ハン・ヨンウォン記者、朴正薫(パク・チョンフン)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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