▲李在明・第21代韓国大統領が4日午前、ソウル市汝矣島の国会ローテンダーホールで就任宣誓式を終えた後、曺喜大(チョ・ヒデ)大法院長=最高裁長官に相当=とあいさつを交わしているところ。/写真=ナム・ガンホ記者
ソウル高裁刑事7部(裁判長:李在権〈イ・ジェグォン〉部長判事)が9日、李在明(イ・ジェミョン)大統領の公職選挙法違反事件の破棄差し戻し審の裁判を延期すると決定したことを受け、法曹界からは「共に民主党の推進する李大統領防弾立法に裁判所が正当性を付与してやった」と指摘する声が上がった。
【被告人・李在明】五つの裁判の進捗状況
進歩(革新)系の与党「共に民主党」は、今月12日に予定されている国会本会議で..
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▲李在明・第21代韓国大統領が4日午前、ソウル市汝矣島の国会ローテンダーホールで就任宣誓式を終えた後、曺喜大(チョ・ヒデ)大法院長=最高裁長官に相当=とあいさつを交わしているところ。/写真=ナム・ガンホ記者
ソウル高裁刑事7部(裁判長:李在権〈イ・ジェグォン〉部長判事)が9日、李在明(イ・ジェミョン)大統領の公職選挙法違反事件の破棄差し戻し審の裁判を延期すると決定したことを受け、法曹界からは「共に民主党の推進する李大統領防弾立法に裁判所が正当性を付与してやった」と指摘する声が上がった。
【被告人・李在明】五つの裁判の進捗状況
進歩(革新)系の与党「共に民主党」は、今月12日に予定されている国会本会議で、いわゆる「裁判中止法(刑事訴訟法改正案)」を処理する方針だが、法案通過前に「大統領在任中は裁判を延期」という民主党の論理を裁判所が認めてやった、という意味だ。これで李大統領は2030年6月までの在任期間中、司法リスクから事実上脱することになった。
■「民主党の防弾法、裁判所が追認したことになる」
5月1日に大法院(最高裁に相当)が李大統領の選挙法違反事件を有罪の趣旨で破棄差し戻しするや、民主党は急いで刑事訴訟法改正案を発議した。改正案の内容は「被告人が大統領に当選したら、任期中は刑事裁判を延期する」というのが中心になっている。「大統領は在任中、刑事上の訴追を受けない」という韓国憲法84条の「訴追」範囲に起訴だけでなく裁判も含まれるかどうかを巡って論争が続いたことから、法そのものを改めて李大統領の裁判を延期させようとしたのだ。
李大統領は選挙法違反事件の破棄差し戻し審だけでなく、偽証教唆事件の控訴審、大庄洞・慰礼・城南FC・栢峴洞事件の一審、違法対北送金事件の一審、京畿道公用カード流用事件の一審など、当選前に起訴されて裁判にかけられた事件だけでも5件あり、野党側からは「防弾立法」という批判が続いていた。
こうした状況で破棄差し戻し審が先行して裁判延期を決定し、民主党は立法の正当性を認められた格好になった。ある現職部長判事は「李大統領の国際会議の日程などさまざまな事情が考慮されたのだろうが、結果的に、民主党が推進する防弾法に力を与える結果になった」と語った。
■「司法府圧迫に負担を感じたのだろう」
この日、裁判部は裁判延期を決定するに当たり「憲法84条に伴う措置」とだけ表明した。具体的な事由は明かさなかったが、韓国憲法84条が定める大統領に対する不訴追特権の範囲に「進行中の刑事裁判」も含まれると見なした―というのが法曹界の解釈だ。幹部クラスのある裁判官は「韓国憲法84条の解釈に関連して、裁判を止めるべきだという意見もあり、(李大統領の)裁判を巡る社会的な論争も続いている状況」としつつ「(裁判部は)韓国国民が選出した大統領の任期を保障するという憲法の立法趣旨を積極的に考慮したのではないだろうか」と語った。
民主党が推進する各種の防弾立法や司法府攻撃に負担を感じたのだろう、という解釈も出た。刑事訴訟法改正案のほかにも、民主党は「李大統領免訴法(公職選挙法改正案)」「大法官(最高裁裁判官に相当)増員法(裁判所組織法改正案)」などを推進し、司法改革を叫んでいる。高裁部長出身のある弁護士は「多数党である民主党の立法を防ぐことができない状況で裁判を強行するのは困難だろう」とし「裁判部の立場からは、あらかじめ裁判を延期して防弾立法を防ごうと考えたのかもしれない」と語った。
■2030年の退任後に裁判が再開されるもよう
今後5年間は、李大統領の選挙法違反事件の裁判が再開される可能性は低いとみられる。ただし裁判部が交代した場合、新たな裁判長が裁判を再開するかどうか再度判断することもあり得るが、通常は前任の裁判部の決定を尊重するのが裁判所の慣例で、再び裁判が開かれる可能性は希薄だというのが法曹界の見方だ。
検察の抗告や憲法訴願などで裁判延期決定が途中で覆される可能性も低い。ある裁判所関係者は「裁判の期日についての決定は裁判長の訴訟指揮の一部であって、検察の抗告など法的に不服を主張できる手続きが存在しない」「裁判所の裁判は憲法訴願の対象から除外されており、憲法訴願もまた提起することはできないだろう」と語り、さらに「裁判の延期は誰かの権限を侵害する事案ではないので、野党などが権限争議審判を請求することもできないだろう」と指摘した。
結局、この裁判は李大統領が退任する2030年6月以降に再開されることになる。李大統領は任期を終えた後、有罪が確定する可能性が高いが、その前に民主党が「虚偽事実公表」について選挙法を改正した場合、退任後に免訴判決を受けることもあり得る。
■「残りの裁判も全て延期されるだろう」
9日の選挙法違反事件破棄差し戻し審裁判部の判断に伴い、李大統領が受けている残り四つの刑事裁判も全て延期される可能性が高い―という見方が、法曹界では支配的だ。ある高裁部長判事は「“憲法84条”に基づいて大統領の裁判を延期するという裁判所レベルの初の判断が出ただけに、他の裁判部もこれを先例にする可能性が高いとみられる」と語った。加えて、裁判中止法が国会を通過した場合、任期中は全ての裁判が中止される。
2023年3月に起訴された「大庄洞・慰礼新都市開発不正と城南FC違法後援金事件」の場合、起訴からおよそ2年2カ月が経過したが、まだ一審の審理は半分も進んでいない。この事件の裁判も延期決定が下されたら、7年以上も一審が続くことになる。
キム・ヒレ記者、パク・カンヒョン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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